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宗教

イエスはどんな人間だったのか① イエスの歴史上の意味

投稿日:2017年9月17日 更新日:

世界三大宗教といえば仏教、イスラム教、そしてキリスト教です。

このうち仏教の開祖はシッダールタ、イスラム教の開祖はムハンマド。

しかしキリスト教の開祖はイエス=キリストじゃありません

キリスト教はイエスの弟子たちが生み出した宗教なのです。

 

また3人のうち、イエスだけが壮絶で悲惨な死を遂げています

十字架にはりつけされ、6時間も苦しみ、

「わが神、わが神、どうしてわたしを見捨てたのですか」
(マタイ福音書27.46)

と叫んだのち、呼吸不全によって亡くなりました。

では、イエスは何を考え何を伝えようとしたのか?

そもそも人間イエスとはどんな人物だったのか?

また、なぜイエスは十字架刑となったのか?

そしてこのイエスの死から、どのようにしてキリスト教が生まれたのか?

 

これらの謎を解明していくのが、今回のテーマです。

ジュウゴはキリスト教徒ではないので、ずっと疑問だったんです、こうしたことが。

いまでもわからないことはあるんですが、いろいろ調べて、前よりはすこし、イエスという人間について、そしてキリスト教について、近づくことができたと思っています。

全10回。産業革命の記事と同様、長い連載になりますが、よろしくお付き合いください。

 

 

1回目はまず、

歴史上でイエスが果たした役割を先にまとめちゃいます

あと、イエスにかんする歴史資料についても触れておきます


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イエスが果たした歴史上の役割

ジュウゴのような非クリスチャンにとって、

イエスという人は「歴史上の人物」として興味の対象です。

そこでまず、イエスが果たした歴史上の役割はなんだろうと考えてみると、

おおきくわけて3つあると言えます。

 

1.ユダヤ教を批判的に発展させたこと

イエスという人物はユダヤ人です。

ユダヤ人は今も昔もユダヤ教を信じてるんですが、

イエスはその当時のユダヤ教を批判して、

かれなりに発展させた思想を唱えたんです。

これが、イエスが歴史上の人物として大切であることの理由のひとつなんですね。

 

よくある勘違いとしては、冒頭にも書きましたが、「イエス自身がキリスト教を開いた」というものです。

これは、ウソですからね。

イエス自身の唱えた思想は、ユダヤ教の枠内にとどまっていました。

 

たとえば「隣人を愛せ」というイエスの言葉がありますが、

かれが想定していた「隣人」とはユダヤ人のみのことです。

ユダヤ人以外の人々、つまり異邦人はイエスの眼中になかったんです。

 

2.イエスの弟子たちが「キリスト教」を成立させたこと

イエスの教えがさらに変容して、

もはやユダヤ教の枠内におさまらなくなって、

「キリスト教」という別個の宗教になるのは、イエスの弟子たちの時代からです

とりわけパウロの影響によります。

パウロ

パウロという人については後の記事でくわしく述べますが、

かれが異邦人(=ユダヤ人以外)相手にたくさん伝道したこと、

またユダヤ教の律法(トーラ―)をほとんど無視したことで、

イエスの教えは「キリスト教」へと変容したといえます。

 

そしてまさにこの2点によって、

キリスト教は民族宗教ではなく世界宗教となったんです。

 

3.キリスト教が世界中に広まったこと

よく知られるように、キリスト教は

4世紀にはローマ帝国の国教となり、

その後中世ヨーロッパにひきつがれ、

やがてヨーロッパの海外進出とともに世界中に広まりました。

イエス生誕から2000年以上経った今、約20億人がキリスト教徒です。

宗教分布図
(経済データバンクより)

キリスト教にかぎらず、宗教は人間の歴史におおきく影響します。

そしていくらイエスの教えが時代とともに変容したとはいえ、

やはりイエス自身の考え方もこの2000年の歴史に多少の影響を与えているはずです。

 

たとえば「自由」「平等」という考え方

これ、近代西洋の啓蒙思想から来ていて、現代まで続いてるわけですが、

ジュウゴにはイエス個人の性格や生い立ちや言動がちょっと反映されているように思えます。

くわしくはまた後の記事で話します。

 

とにかく、キリスト教がこれだけ広まった、そのおかげで、

イエスはムハンマドや釈迦とならび、

世界中でもっとも影響力のある人物のひとりとなったと言えるでしょう。

これがイエスの、歴史上果たした役割の3つめです。


いくつかの疑問

ただここまで読むと、いくつか疑問が出てくるはずです。

①イエスが批判・発展させたユダヤ教って、そもそも何?

②イエスの教えは従来のユダヤ教とどこがちがってたの?

③そのイエスの教えを、弟子たちはさらにどんなふうに変えたの?

 

①の疑問は3回目の記事で、

②の疑問は6回目7回目の記事で、

③の疑問は10回目の記事で、

くわしくとりあげて解決する予定です。

 

また、冒頭で書いた疑問の残り、

イエスとはどんな人物だったのか?については4回目の記事以降で、

なぜイエスは十字架刑になったのか?については8回目9回目の記事で、

それぞれ詳述していきます。


イエスにかんする歴史資料

ただここで、ひとつおおきな問題があります。

イエスにかんする歴史資料って、ほとんどないんです。

これじゃイエスがどんな人物だったかわからない?

 

唯一の資料は聖書だけ?

イエスがどういう人物だったかを伝えてくれる資料としては、新約聖書があります。

キリスト教徒にとっては旧約聖書とともに、もっとも大切な文書、文字通りバイブルですね。

 

新約聖書とは以下の文章をあつめたものをいいます。

  • マタイによる福音書(福音とは「良い知らせ」の意味。内容はイエスの生涯と言動)
  • マルコによる福音書
  • ルカによる福音書
  • ヨハネによる福音書
  • 使徒言行録(イエスの弟子たちの言行録)
  • パウロ書簡(パウロのいろんな手紙)
  • 公同書簡(不特定多数にむけた、手紙という体裁の主張)
  • ヨハネの黙示録

以上が正典で、ほかに外典とよばれる文書もいくつかあります。

 

聖書以外に、イエスについて書いてある書物はほとんどありません。

ヨセフスという1世紀のユダヤ人の書いた『ユダヤ古代誌』に、イエスについての記述が出てきますが、後世の加筆・修正が疑われています。

結局『ユダヤ古代誌』の記述からわかることは、イエスはたしかに実在した人間である可能性が高い、ということだけです。

聖書からイエス像を復元するしかない!

だから、イエスがどんな人物だったのか、

信仰とかぬきにして知りたいと思った場合、

新約聖書を、そのなかでもとくに福音書を、

徹底的にしらべて検証するしかないんですね。

 

さいわい、聖書研究という学問分野があるみたいで、いろんな学者さんが徹底的にしらべてくれています。

それぞれの文書はいつ書かれたのか、どのように書かれたのか、隅から隅まで検証してくれています。

 

それで、いまわかっていること(多数の学者が賛成していること)をまとめると、次のようになります。

 

聖書研究の成果

まず福音書正典のなかで最初に書かれたのが「マルコによる福音書」

紀元70年ごろかもっと後になります。

イエスの死後40年経ち、各地にちらばっていたかれの伝承をひろいあつめて、「福音書(良い知らせ)」という形にまとめたはじめての書物です。

著者は当然、誰かわかりません。

「使徒言行録」に出てくるマルコ本人かもしれないし、

マルコの名を借りた誰かかもしれません。

マルコ

このころ、もうひとつイエスの話を集めた書物が成立したようです。

現存してませんが、学者たちはこの架空の書物を「Q資料」と呼びます。

なぜ「Q資料」があったとわかるのか。

それは「マタイによる福音書」「ルカによる福音書」が、ともに、

「マルコによる福音書」およびもうひとつの資料、計2資料を下敷きにして書かれているから。

そうみなさないと、つじつまの合わないことがたくさんあるんだって。

マタイ

ルカ

ってことで、マタイおよびルカの福音書は2資料をもとに、紀元90~100年あたりに書かれました。

イエスの死後、すでに60年以上が経過しています。

ちなみにこれら「マルコ」「マタイ」「ルカ」の3福音書は、共通する部分が多いので、「共観福音書」と呼ばれています。

 

その後、紀元100~120年ごろに、4つめの福音書、

「ヨハネによる福音書」が書かれます。

書いたのは使徒ヨハネじゃなくて、別人のヨハネか、あるいはヨハネの名を借りた集団(教団?)だったと言われています。

ヨハネ福音書は上記3つの福音書とかなり記述がちがっています。

ヨハネによる福音書

どの記述が本当なのか?

このほか、外典とされる福音書もそれぞれ、2~3世紀ごろに書かれました。

トマスによる福音書、ユダによる福音書、ペトロによる福音書、フィリポによる福音書、マグダラのマリア福音書などです。

「主はマリアをすべての弟子たちよりも愛していた。主は彼女の口にしばしば接吻した。他の弟子たちは主がマリアを愛しているのを見た。彼らは主に言った、『あなたはなぜ、わたしたちすべてよりも彼女を愛されるのですか?』救い主は答えた、『なぜ、私は君たちを彼女のように愛せないのだろうか』」

これは「フィリポによる福音書」中の文章です。

イエスがマグダラのマリアと結婚していることが書かれています。

『ダ・ヴィンチ・コード』でも引用されていましたね。

 

ただ、こうした記述を含めて、

いったいどれが本当なのだろうかという疑問がのこります。

そしてその答えは「わからない」というのが正直なところなんです。

そもそも歴史的に何が本当かと問うこと自体、無意味です

だって、かぎられた資料で過去の真実を明らかにすることなんてできないから。

現代の芸能人の不倫報道だって、何が本当かわからないのに。

 

だから次回以降、イエスの生涯をたどっていくわけですが、そこで書いていくかれの人生は、「福音書の最大公約数的なところ」をまとめて、ジュウゴの想像力も加えて、再構築したものになります。

それでも、土台となるストーリーはほしかったので、以下の本を参考にしています。

 

長々と書いちゃいました。

ようするにこの章で言いたかったことは、

「イエスの生涯を完璧に再現するなんてムリ。聖書研究の成果は使うけど、ジュウゴの想像も入るよ」

ってことです。

こーゆー前置きをくどくど述べるところが、歴史学をかじった人間の悪いクセですね。

反省。

 

まとめ

イエスの歴史上の意味は3つ。

  • ユダヤ教を批判的に発展させたこと
  • イエスの弟子たちがキリスト教を開いたこと
  • やがてキリスト教が世界中に広まり、世界の歴史に影響を及ぼしたこと

 

イエスにかんする歴史資料は

  • 新約聖書、とくに福音書くらいしか残されていない
  • 福音書は成立時期、筆者など、聖書研究によってちょっとわかってる
  • その成果をもとに、あとは想像力でイエスの生涯を再構築するよ

 

2回目はイエスの生きた時代背景を明らかにするために、

ユダヤ人の歴史についてまとめます。

イエスはどんな人間だったのか② ユダヤ人とは何か







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