つづいて公式2・公式1を使った因数分解です。
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公式2を使った因数分解
指導順の3番目、公式2を使った因数分解。
ここでの準備は「前・うしろかけて2倍」を練習することです。
以下、指導例をどうぞ。
準備:前うしろかけて2倍
では次に、こんな問題をやってみよう。
例題3)次の式を因数分解しなさい。
- \(x^2 +6x+9\)
- \(x^2 -14x+49\)
- \(x^2 +22x+121\)
この問題にも共通因数はない。
また \(x^2 -16\) みたいな問題ともちがう。項が3つあるもんね。
ではどうやればいいか?
ここで、展開の公式(乗法公式)の2つめを思い出してくれ。
$$ (x+3)^2 = x^2 +6x+9 $$
この逆をやればいいんだ!
つまり
\(x^2\) ← \(x\) の二乗
\(9\) ← \(+3\) or \(-3\) の二乗
\(+6x\) ← \(x \times +3\) の2倍
となってたら
$$ a^2 +2ab+b^2 = (a+b)^2 $$
に当てはめて
$$ x^2 +6x+9 = (x+3)^2 $$
とやればいい。
これが因数分解の方法その3。
ただこの方法を使うには、二乗した数に慣れてて、かつ「前・うしろかけて2倍」の計算も暗算でできないとむずかしい。
そこでやはり練習しよう。
以下の数字や文字を「かけて2倍」したもの、暗算で答えて。
\begin{eqnarray} & & x \mbox{と} +2 \quad x \mbox{と} -8 \quad x \mbox{と} +5 \\ & & x \mbox{と} -7 \quad x \mbox{と} +6 \quad x \mbox{と} -1 \\ & & x \mbox{と} +11 \quad x \mbox{と} -13 \quad x \mbox{と} +14 \\ & & x \mbox{と} -4y \quad x \mbox{と} +9y \quad x \mbox{と} -10y \\ & & 2x \mbox{と} +3 \quad 3x \mbox{と} -1 \quad 4x \mbox{と} +5 \\ & & 5x \mbox{と} -4y \quad 3x \mbox{と} +4y \quad 2x \mbox{と} -6y \end{eqnarray}
因数分解のやり方
よし、準備は完了。
例題3を一緒にやってみよう。
前は何の二乗?→ \(x\)
うしろは何の二乗?→ \(+3\) or \(-3\)
前うしろかけて2倍すると \(+6x\) になるのは、\(+3\) のほうだ。
よって、
\begin{eqnarray} & & x^2 +6x+9 \\ &=& (x+3)^2 \end{eqnarray}
よくできた!
ここで気づいたと思うけど、
\( x^2 +6x+9 = (x+3)^2 \)
\( x^2 -6x+9 = (x-3)^2 \)
だから、
カッコ内の符号は問題式のまんなかの項と同じになる。
これを使って、以下、もっとカンタンにやってみよう。
前は何の二乗?→ \(x\)
うしろは何の二乗→ \(7\)
前うしろかけて2倍→ \(14x\)
あとは符号に気をつけて、
\begin{eqnarray} & & x^2 -14x+49 \\ &=& (x-7)^2 \end{eqnarray}
前は何の二乗?→ \(x\)
うしろは何の二乗→ \(11\)
前うしろかけて2倍→ \(22x\)
あとは符号に気をつけて、
\begin{eqnarray} & & x^2 +22x+121 \\ &=& (x+11)^2 \end{eqnarray}
ここまできたら、例題4もできるね。
一気にやってみよう。
例題4)次の式を因数分解しなさい。
- \(x^2 -16xy+64y^2\)
- \(4x^2 +12x+9\)
- \(25x^2 -40xy+16y^2\)
\begin{eqnarray} \mbox{例4-1)}& & x^2 -16xy+64y^2 \\ &=& (x-8y)^2 \\ \mbox{例4-2)}& & 4x^2 +12x+9 \\ &=& (2x+3)^2 \\ \mbox{例4-3)}& & 25x^2 -40xy+16y^2 \\ &=& (5x-4y)^2 \end{eqnarray}
よくできた!
あとは問題をたくさんやって「わかる」を「できる」にしていこう。
注意点と練習問題
ここの因数分解は、計算力の低い子を中心に苦手とする中学生が多くなります。
しかし、上記のような「前うしろかけて2倍」という準備をすれば難しくありません。
とくに「\(2x\) と \(+3\)」のような練習もしていれば、例題4もスムーズにのりこえていけます。
ぜひ、実際の問題にいく前に、上記の準備練習をさせてください。
ちなみに生徒のなかには、
「前もうしろも何かの二乗だったら、まんなかが『前うしろかけて2倍』っていう確認はいらないんじゃない?」という人もいるでしょう。
そんな中学生には以下の問題を出して、この式が因数分解できるか聞いてみてください。
$$ x^2 -3x+9 $$
そしてこの問題を \( (x-3)^2 \) と答えた生徒には、「まんなかが前うしろかけて2倍になってないからバツ。この問題は因数分解できない」と教えてあげてください。
この確認は高校数学にもつながりますね。
数Ⅰでこんな因数分解を習いますもんね↓
\begin{eqnarray} & & x^3 +27 \\ &=& (x+3)(x^2 -3x +9) \end{eqnarray}
では例によって「中学校数学学習サイト」様より、練習問題をどうぞ。
公式1を使った因数分解
さいごは公式1を使った因数分解です。
ここでの準備は「足していくら、かけていくら」を練習すること。
以下、指導例をどうぞ。
準備:足して?かけて?
次はこんな問題をやってみよう。
例題5)次の式を因数分解しなさい。
- \(x^2 +8x+15\)
- \(x^2 -5x+4\)
- \(x^2 +4x-12\)
この例題5にも共通因数はない。
また、\( a^2 -b^2 = (a+b)(a-b) \) も使えない。
そして、\( a^2 +2ab+b^2 = (a+b)^2 \) もよく見たら当てはまらない。
じゃどうすればいいか?
ここで、展開の公式(乗法公式)の1つめを思い出そう。
$$ (x+5)(x+3)= x^2 +8x+15 $$
これの逆をやればいいんだ!
つまり
\(+8\) ← \(+5\) + \(+3\)
\(+15\) ← \(+5\) × \(+3\)
になってるから
$$ x^2 +(a+b)x +ab = (x+a)(x+b) $$
に当てはめて
$$ x^2 +8x+15 = (x+5)(x+3) $$
とやればいい。
これが因数分解の方法のラスト。
ただこの方法を使うには、「足して \(+8\) 、かけて \(+15\) 」になる2数をパッと思いつかなきゃいけない。
そこでここでも練習しておこう。
以下の2数、足していくら・かけていくらを暗算で答えて。
\begin{eqnarray} & & +2 \mbox{と} +4 \quad +6 \mbox{と} +2 \quad +2 \mbox{と} +9 \\ & & +3 \mbox{と} +1 \quad +4 \mbox{と} +3 \quad +3 \mbox{と} +8 \\ & & -4 \mbox{と} -5 \quad -7 \mbox{と} -4 \quad -5 \mbox{と} -2 \\ & & -6 \mbox{と} -5 \quad -7 \mbox{と} -1 \quad -8 \mbox{と} -9 \\ & & +4 \mbox{と} -2 \quad +6 \mbox{と} -3 \quad +8 \mbox{と} -4 \\ & & -8 \mbox{と} +6 \quad -9 \mbox{と} +1 \quad -10 \mbox{と} +9 \end{eqnarray}
因数分解のやり方
準備は完了。
例題5を一緒にやってみよう。
足して \(+8\) 、かけて \(+15\) になる2数は?
→ \(+5\) と \(+3\)
\begin{eqnarray} & & x^2 +8x+15 \\ &=& (x+5)(x+3) \end{eqnarray}
足して \(-5\) 、かけて \(+4\) になる2数は?
→ \(-4\) と \(-1\)
\begin{eqnarray} & & x^2 -5x+4 \\ &=& (x-4)(x-1) \end{eqnarray}
足して \(+4\) 、かけて \(-12\) になる2数は?
→ \(+6\) と \(-2\)
\begin{eqnarray} & & x^2 +4x-12 \\ &=& (x+6)(x-2) \end{eqnarray}
よくできた!
じゃ応用編として例題6もやってみようか。
いちおう、準備練習もしとく?
以下の2つの「足して・かけて」をそれぞれ答えてから、いこう。
\begin{eqnarray} & & +7y \mbox{と} +2y \quad -3y \mbox{と} -2y \quad -10y \mbox{と} -5y \\ & & +5y \mbox{と} -3y \quad -2y \mbox{と} +y \quad -9y \mbox{と} +4y \end{eqnarray}
例題6)次の式を因数分解しなさい。
- \(x^2 +9xy+14y^2\)
- \(x^2 -11xy+24y^2\)
- \(x^2 -xy-2y^2\)
\begin{eqnarray} \mbox{例6-1)}& & x^2 +9xy+14y^2 \\ &=& (x+7y)(x+2y) \\ \mbox{例6-2)}& & x^2 -11xy+24y^2 \\ &=& (x-8y)(x-3y) \\ \mbox{例6-3)}& & x^2 -xy-2y^2 \\ &=& (x-2y)(x+y) \end{eqnarray}
よくできた!
あとは問題をたくさんやって「わかる」を「できる」にしていこう。
注意点と練習問題
この例題5・例題6はいままででいちばん時間がかかるでしょう。
準備練習をしっかり積めばできるようになりますが、それでもなかなかコツがつかめないという生徒には、以下のアドバイスをしてあげてください。
- \(x^2 +8x+15\) などの場合…
・かけて \(+15\) になる2数をまず考える
・そのうち足して \(+8\) になるものが当たり
→ \(+5\) と \(+3\) - \(x^2 -5x+4\) などの場合…
・かけて \(+4\) 足して \(-5\) だから、2数はマイナスとマイナス
→ \(-4\) と \(-1\) - \(x^2 +4x-12\) などの場合…
・かけて \(-12\) だから、2数はプラスとマイナス
・そのうえ足して \(+4\) だから、数だけの引き算(=絶対値の差)で4になる2数
・しかも絶対値はプラスのやつのほうが大きい
→ \(+6\) と \(-2\)
こうしたアドバイスは、一緒に練習問題を解きながらしてあげるといいでしょう。
慣れてきたら、自力でさせてみてください。
(公式3とあるリンク先は、3つの公式のまとめ問題になっています)
まとめ
おつかれさまでした。
まとめます。
◆共通因数でくくる問題
- 準備:因数分解とは何かをわかりやすく伝える
- コツ:「元に戻るようにカッコの中身を考える」
$$ 6x^2 -15x = 3x(2x-5) $$
◆公式3を使った因数分解
- 準備:二乗した数に慣れる
- コツ:「(二乗)-(二乗)」の形
$$ x^2 -16 = (x+4)(x-4) $$
◆公式2を使った因数分解
- 準備:前うしろかけて2倍
- コツ:「(前の二乗)+(前うしろかけて2倍)+(うしろの二乗)」の形
$$ x^2 +6x+9 = (x+3)^2 $$
◆公式1を使った因数分解
- 準備:足していくら・かけていくら
- コツ:「\(x^2\) +(足して)\(x\) +(かけて)」の形
$$ x^2 +8x+15 = (x+5)(x+3) $$
次回は因数分解の応用を解説します。
応用とはつまり、共通因数でくくってさらに公式を使う問題と、置き換えを使う問題です。
また、そもそもテストで問題が出たときにどの因数分解を使ったらいいのか、見分けるコツも最初に紹介する予定です。
≪「多項式」の記事一覧≫
コメント
中学指導の続きが早く見たいと思っております。
きっと忙しいと思われますので、ご無理なさらず。
でも楽しみに待っています!