座標につづき、「比例のグラフ」と「反比例のグラフ」の指導順・指導項目です。
比例のグラフについて、5段階。
反比例のグラフについて、3段階。
そしてグラフの実践編として、3段階。
それぞれポイントと指導上のコツを記すので、教師や講師、また保護者の方は数学指導の参考にしてください。
比例のグラフ
まず比例のグラフの教え方です。
ここでは「グラフをかく」ことを4段階にわけて十分に練習し、それから「グラフの読み取り」にすすむことが肝要になります。
1.表をつくってグラフを描く
【ポイント】
比例のグラフは直線になる。
【指導上のコツ】
○まず表をつくるとき、\(x\) の値を式に「代入」して \(y\) を出す、ということを復習する。
→参考:比例の式を求める
○つぎに、\(x\) と \(y\) の値の組を座標とみなして点を打つ、と示す。
○黒→青→オレンジの順で点を打っていく。大切なのは「点が集まって直線になる」イメージ。
○「もちろん \( \left( \frac{1}{10} , \frac{1}{5} \right) \) のように、細かすぎて打ちきれない点もこの直線上にある」等も示すこと。
○あと2~3例、表をつくってグラフを描かせるとよい。たとえば以下のグラフ。
$$ y=-2x \quad y=\frac{1}{2}x $$
2.表なしでグラフを描く
【ポイント】
\( (x,y)\) の整数の組を頭のなかで計算して、その座標の点を打つ。
【指導上のコツ】
○暗算力の劣る生徒には、ひとつひとつ手元指導すること。たとえば↓
- 「\(x=0\) のときの \(y\) は?」
- 「\(0\)」
- 「じゃ \((0,0)\) に点を打って」
○問2が、(比例定数が)分数の場合のやり方だと伝える。
○あと4~5例、点を打つことでグラフを描かせるとよい。たとえば以下のグラフ。
$$ y=\frac{2}{3}x \quad y=\frac{3}{4}x $$
$$ y=-\frac{1}{4}x \quad y=-\frac{5}{2}x $$
3.かんたんにグラフを描く方法
【ポイント】
$$ y=\frac{\mbox{▲}}{\mbox{●}}x \quad \mbox{のグラフは}$$
- 原点スタートで、
- 右に●、上に▲ の直線
【指導上のコツ】
○以下の指導順を守ること。(生徒に「わかりにくい」と言われる教師はこの順番がメチャクチャだったりする。)
- 点を打つことでさまざまなグラフを描く
- 比例のグラフの特徴を帰納する
- かんたんな描き方があると示す
○比例定数が整数の場合もあえて分数に直すこと。また、マイナスは分子につけること。
○「左に●」とまちがえる生徒がよくいる。「まず右。次に上か下」と強調すること。
○2点だけとって直線をひくと、端のほうでズレる場合も多い。「右に4行って、上に3。右に4行って、上に3…」等と、マス目の最後まで点を取らせること。また左側へも「4もどったら、下に3。4もどったら、下に3…」等と、やはり最後まで点をかきこむように指導する。
4.変域のあるグラフ
【ポイント】
以下の手順どおりにやるだけ。
- まずグラフを描く
- \(x\) の変域の両端をかきこむ(=よこ)
- \(y\) の値もそれぞれかきこむ(=たて)
- グラフの両端に黒丸する
- 変域の外側を点線になおす
【指導上のコツ】
○グラフの変域問題は中2、中3でも難しがる生徒が多いが、ここで示した手順どおりにやればクリアしていける。
○ \(x\) に対応する \(y\) の値を出すとき、「比例の式に代入して計算」でも出せると示すこと。この一指導をくわえることで、マス目なしのグラフ問題でも解けるようになる。
$$ y=\frac{2}{3} \times (-3) = -2 $$
$$ y=\frac{2}{3} \times 6 = 4 $$
5.グラフ→式の読み取り問題
【ポイント】
直線が点 (●,▲) を通るなら、比例定数 \(a\) は
$$ a= \frac{\mbox{▲}}{\mbox{●}}$$
【指導上のコツ】
○比例の比例定数の求め方は \(a=\frac{y}{x}\)
→比例の式を求める
○マス目のちょうどいい点(x座標とy座標がともに整数の点)を見つけることさえできれば、むずかしくない。
○なお、「3.かんたんにグラフを描く方法」の逆をつかって、式を求めることもできる↓
この2通りの方法、どちらも生徒に教えること。
前者の方法は、マス目なしの応用問題につながる。
後者の方法は、中2「一次関数」につながるから↓
反比例のグラフ
つぎに反比例のグラフの教え方です。
ここでも比例と同様、「グラフをかく」ことに習熟してから「グラフの読み取り」にすすむことが肝心です。
1.表をつくってグラフを描く
【ポイント】
反比例のグラフは双曲線になる。
【指導上のコツ】
○指導の流れは比例のときとほぼ同じ。ちがうのは以下3点。
- \(x=0\) のとき \(y\) の値はなし。なぜなら \(0\) で割れないから。
- なめらかな曲線で結ぶこと。折れ線みたいになる生徒が多いので注意。
- 座標軸にグラフをくっつけてしまう生徒も多いので注意。「かぎりなく近づくけど、くっつかない」と伝える。(漸近線という言葉は高校で習う)
2.表なしでグラフを描く
【ポイント】
\( (x,y)\) の整数の組を頭のなかで計算して、その座標の点を打つ。
【指導上のコツ】
○暗算力の劣る生徒にはやはり、ひとつひとつ指導すること。たとえば↓
- 「\(x=1\) のときの \(y\) は?」
- 「\(6\)」
- 「じゃ \((1,6)\) に点を打って」
○あと3~4例、反比例のグラフを描かせた後、反比例の式の特徴も伝えること。つまり「原点に関して対称である」と。
3.グラフ→式の読み取り問題
【ポイント】
双曲線が点 (●,▲) を通るなら、比例定数 \(a\) は
$$ a= \mbox{●} \times \mbox{▲} $$
【指導上のコツ】
○反比例の比例定数の求め方は \(a=xy\)
→反比例の式を求める
○マス目のちょうどいい点(x座標とy座標がともに整数の点)を見つけることさえできれば、むずかしくない。
比例・反比例のグラフ実践編
さいごに、比例・反比例のグラフの実践問題です。
定期テストや模試などでよく出る問題、3種類の、それぞれのポイントを伝えます。
なお、ここから座標平面のマス目がなくなります。
たとえマス目がなくても、最低1点さえあればグラフの式が読み取れることを、最初に生徒には伝えてください。
1.座標から式を求める問題
【ポイント】
直線 ⇔ 比例 \(y=ax\) ⇔ \(a=\frac{y}{x}\)
双曲線 ⇔ 反比例 \(y=\frac{a}{x}\) ⇔ \(a=xy\)
【解答】
①直線がA(2,6)を通るから、
$$ a=\frac{6}{2}=3 \quad \mbox{答.}y=3x $$
②双曲線がA(2,6)を通るから、
$$ a= 2 \times 6 =12 \quad \mbox{答.}y=\frac{12}{x} $$
③直線が(6,3)を通るから、
$$ a=\frac{3}{6}=\frac{1}{2} \quad \mbox{答.}y=\frac{1}{2}x $$
④直線が(6,-4)を通るから、
$$ a=\frac{-4}{6}=- \frac{2}{3} \quad \mbox{答.}y=- \frac{2}{3}x $$
⑤双曲線が(6,3)を通るから、
$$ a= 6 \times 3 =18 \quad \mbox{答.}y=\frac{18}{x} $$
⑥双曲線が(6,-4)を通るから、
$$ a= 6 \times (-4) =-24 \quad \mbox{答.}y=- \frac{24}{x} $$
2.式から座標も求める問題
【ポイント】
\( (x,y)\) のうち、片方がわかっててもう片方を求めるときは「代入」。
【解答 1】
①直線がA(2,4)を通るから、
$$ a=\frac{4}{2}=2 \quad \mbox{答.}y=2x $$
②双曲線がA(2,4)を通るから、
$$ a= 2 \times 4 =8 \quad \mbox{答.}y=\frac{8}{x} $$
B.\(y=2x\) に \(x=-1\) を代入して、
\begin{eqnarray} y &=& 2 \times (-1) \\ y &=& -2 \qquad \mbox{答.}B(-1,-2) \end{eqnarray}
C.\(y=2x\) に \(y=-6\) を代入して、
\begin{eqnarray} -6 &=& 2x \\ 2x &=& -6 \\ x &=& -3 \qquad \mbox{答.}C(-3,-6) \end{eqnarray}
D.\(y=\frac{8}{x}\) に \(x=5\) を代入して、
$$ y = \frac{8}{5} \qquad \mbox{答.}D(5,\frac{8}{5}) $$
【解答 2】
問1)\(a=\frac{-6}{3}=-2\) よって、\(y=-2x\)
\(y=-2x\) に \(x=-5\) 、\(y=b\) を代入して、
\begin{eqnarray} b &=& -2 \times (-5) \\ b &=& 10 \qquad \mbox{答.}a=-2 , b=10 \end{eqnarray}
問2)\(a=4 \times 3 =12\) よって、\(y=\frac{12}{x}\)
\(y=\frac{12}{x}\) に \(x=b\) 、\(y=-2\) を代入して、
\begin{eqnarray} -2 &=& \frac{12}{b} \\ -2b &=& 12 \\ b &=& -6 \qquad \mbox{答.}a=12 , b=-6 \end{eqnarray}
3.グラフと三角形の面積
【ポイント】
いままでの知識をフル活用。
【解答】
(1) \(y=\frac{3}{4}x\) に \(y=6\) を代入して、
\begin{eqnarray} 6 &=& \frac{3}{4}x \\ \frac{3}{4}x &=& 6 \\ x &=& 8 \qquad \mbox{答.}A(8,6) \end{eqnarray}
(2) 双曲線がA(8,6) を通るから、
$$ a= 8 \times 6 = 48 $$
(3) \(y=\frac{48}{x}\) に \(x=4\) を代入して、
\begin{eqnarray} y &=& \frac{48}{4} \\ y &=& 12 \qquad \mbox{答.}C(4,12) \end{eqnarray}
(4) 点Bは、点Aと原点に関して対称なので、\( B(-8,-6) \)
答.72㎠
この問題は「比例と反比例」③および「比例と反比例」④で挙げた応用問題です。
まとめ
おつかれさまでした。
中1数学「比例と反比例」における座標・グラフの教え方、まとめます。
○座標・グラフでつまずく原因は2つ。
- 座標平面を図形的に扱うことに慣れていない
- 「グラフは点の集まり」という意識が育ってない
○そこで、座標平面をつかった練習を、以下9段階で行う。
(リンクをクリックすると各項目が開きます)
○また、比例のグラフを以下5段階にわけて教える。
(リンクをクリックすると各項目が開きます)
○反比例のグラフも同様に、3段階にわけて教える。
(リンクをクリックすると各項目が開きます)
○こうした順番をふめば、以下3種類の応用問題もできるようになる。
(リンクをクリックすると各項目が開きます)
次回は「比例と反比例」の最後、文章問題です。
比例か反比例かを見分けるコツ。
そして文章問題すべてに当てはまる解き方を伝えます。
[比例反比例の記事一覧]
コメント
三角形の面積を求める問題②(x軸、y軸に平行な辺がないバージョン)、
定期テスト30点の生徒でもできるようになる、
とはすごいですね。
自分の経験からすると、
定期テスト70,80点の生徒でもなかなか厳しいです。
「指導上のコツ」、参考になりました。