中学数学の教え方・解き方。
中1「比例と反比例」の最後は、文章問題になります。
ここでの目標。
それは、たとえ文章問題、応用問題の苦手な生徒であっても、以下のような問題が解けるようになることです。
○次の \(x\) と \(y\) の関係を式で表せ。
- \(100\) gあたり \(250\) 円の牛肉を \(x\) g買ったら代金は \(y\) 円だった。(問1-3)
- 面積が \(24\) ㎠の長方形の、たてが \(x\) cmでよこが \(y\) cm。(問4-2)
- 時速 \(x\) kmで \(6\) 時間走ると \(y\) kmすすむ。(問6-1)
○毎分 \(5\) Lずつ水を入れると \(12\) 分でいっぱいになる水槽がある。この水槽を \(15\) 分でいっぱいにするには毎分何Lずつ水を入れればよいか。(問3)
○A,B2つの歯車がかみあっている。Aの歯数は \(18\) で、1秒間に \(40\) 回転する。(問8)
- Bの歯数を \(x\) 、1秒間に \(y\) 回転するとして、 \(x\) と \(y\) の関係を式で表せ。
- Bの1秒間の回転数を \(60\) 回にするには、Bの歯数をいくつにすればよいか。
[比例反比例の記事一覧]
- 中1「比例と反比例」① 関数とは何か
- 中1「比例と反比例」② 導入と用語
- 中1「比例と反比例」③ 比例の式を求める
- 中1「比例と反比例」④ 反比例の式を求める
- 中1「比例と反比例」⑤ 座標とグラフ
- 中1「比例と反比例」⑥ 文章問題(基本・応用)
- 中1「比例と反比例」⑦ 文章問題(図形・速さ・歯車)
こうした文章問題は「みるだけでイヤ!」という中学生もいます。
また教える側のわれわれも、問題の種類が多岐にわたり、そのうえ解き方がひとつじゃないので、どう体系だって教えたらいいか迷うところです。
そこで、あらゆる問題に使えるフローチャートを用意しました。
このフローチャートを使えば、比例・反比例の文章問題すべてをやっつけることができます↓
じっさい、どのように使っていくのか?
「基本問題」「応用問題」「図形・動点問題」「速さ・圧力問題」「歯車・てんびん問題」の5パターンごとに、それぞれ解説していきます。
この指導をつうじて、中学生が比例・反比例の文章問題にたいする苦手意識を克服するとともに、文章問題に出合ったときのコツや思考過程を身につけてほしいと思います。
ではいきましょー。
比例・反比例の文章問題 基本
まず文章問題の基本です。
問1のような問題で困るのは、式を立てるとき「比例か反比例か迷う」ってトコロ。
でも大丈夫。フローチャートどおりにやれば解けます。
なぜなら問1の4問はすべて
- 問題文に \(x\) , \(y\) がある
- 公式のない、それ以外の問題
です。
よって、フローチャートにあるとおり、
- \(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍…になると \(y\) も\(2\)倍,\(3\)倍…⇒比例
- \(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍…になると \(y\) は\(\frac{1}{2}\) , \(\frac{1}{3}\) …⇒反比例
これで判断すればいいんです。
コピー用紙の問題
問1)次の \(x\) と \(y\) の関係を式で表せ。
1.\(500\) 枚で厚さ\(45\) mmのコピー用紙がある。このコピー用紙が厚さ \(x\) mmのときの枚数は \(y\) 枚。
はじめに、問題文に \(x\) と \(y\) があるので、それぞれ何を表しているか確認します。
コツは、単位をみること。
\(x\) の単位が「mm」なので、厚さを。
\(y\) の単位が「枚」なので、枚数を、それぞれ表しています。
また \(45\) mmという数は \(x\) の数値であること。
\(500\) 枚という数は \(y\) の数値であることも、やはり単位でわかります。
単位を確認せずに \(x=500\) で \(y=45\) だと、文章の並びだけで判断しないように。こういうミス、中学生はけっこうやります。
つぎに、この問題は「厚さと枚数の関係」なので、公式を使わない、それ以外の問題です。
そこで、上述したように、
- \(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍…になると \(y\) も\(2\)倍,\(3\)倍…⇒比例
- \(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍…になると \(y\) は\(\frac{1}{2}\) , \(\frac{1}{3}\) …⇒反比例
これで比例か反比例かを判断します。
コツは、\(x\) と \(y\) に具体的な数を入れて考えてみること。
たとえば \(x\) が \(45\) mmのとき、\(y\) は \(500\) 枚。
じゃ、\(x\) が2倍の \(90\) mmになったら?
つまりコピー用紙の厚さが倍になったら、枚数は2倍?それとも \(\frac{1}{2}\) ?
そう、\(y\) は2倍の \(1000\) 枚になります。
よって、この問題における \(x\) と \(y\) の関係は比例だとわかるんです。
ここまでくれば、問1の1.は以下のように書きかえられます。
比例の式は \(y=ax\) 。
比例定数は \(a= \frac{y}{x}\) で求められました。
よって、
$$ a= \frac{500}{45} = \frac{100}{9} $$
$$ \mbox{答.} y=\frac{100}{9}x $$
[関連記事]
「比例と反比例」③ 比例の式を求める
このように、まず単位で \(x\) と \(y\) を確認。
つぎに比例か反比例か迷うときには、
- \(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍…になると \(y\) も\(2\)倍,\(3\)倍…⇒比例
- \(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍…になると \(y\) は\(\frac{1}{2}\) , \(\frac{1}{3}\) …⇒反比例
具体的な数を入れて、これを考えてみる。
以上が基本問題のコツです。
折りづるを分担する問題
問1)次の \(x\) と \(y\) の関係を式で表せ。
2.折りづるを1人 \(15\) 羽ずつ \(12\) 人で折った。これと同じ数の折りづるを折るのに、\(x\) 人で折ると1人 \(y\) 羽ずつになる。
同じ流れで、問1の2.もやってみます。
まず問題文に \(x\) と \(y\) があるので、それぞれ何を表しているか、単位で確認します。
\(x\) は「人」なので、人数。
\(y\) は「羽」なので、1人あたり折りづるを折る数。
また \(12\) 人のほうが \(x\) の数値。
\(15\) 羽のほうが \(y\) の数値です。
つぎに、この問題も公式はないので、
- \(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍…になると \(y\) も\(2\)倍,\(3\)倍…⇒比例
- \(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍…になると \(y\) は\(\frac{1}{2}\) , \(\frac{1}{3}\) …⇒反比例
これで、具体的な数字を入れて、比例か反比例か判断します。
\(x\) が2倍の \(24\) 人になったら?
つまり人数が倍になったら、1人あたりの折る数は2倍?それとも \(\frac{1}{2}\) ?
そう、 \(\frac{1}{2}\) になりますね。
だから、この問題は反比例だとわかるんです。
(\(\frac{15}{2}\) 羽ってなんやねん、ってのは置いといてかまいません。ここでは比例か反比例かさえわかればいいんで。)
反比例の式は \(y=\frac{a}{x}\) 。
比例定数は \(a= xy\) で求められました。
よって、
$$ a= 12 \times 15 = 180 $$
$$ \mbox{答.} y=\frac{180}{x} $$
となります。
[関連記事]
「比例と反比例」④ 反比例の式を求める
牛肉の問題
問1)次の \(x\) と \(y\) の関係を式で表せ。
3.\(100\) gあたり \(250\) 円の牛肉を \(x\) g買ったら、代金は \(y\) 円だった。
4.\(100\) gあたり \(x\) 円の牛肉は、\(2000\) 円で \(y\) g買うことができる。
問1の3.と4.も流れは同じです。
詳細は省きます、
3.は比例。よって、
$$ a= \frac{250}{100} = \frac{5}{2} $$
$$ \mbox{答.} y=\frac{5}{2}x $$
また4.は反比例。よって、
$$ a= 100 \times 2000 = 200000 $$
$$ \mbox{答.} y=\frac{200000}{x} $$
なお「4.の問題がわからない」という人は具体的な数字を入れて考えてみましょう。
\(100\) gあたり \(200\) 円の牛肉は、\(2000\) 円で何g買える?
→\(1000\) g。( \(200 \div 100=2\mbox{円/g} \quad 2000 \div 2=1000\mbox{g}\) )
\(100\) gあたり \(400\) 円の牛肉は、\(2000\) 円で何g買える?
→\(500\) g。( \(400 \div 100=4\mbox{円/g} \quad 2000 \div 4=500\mbox{g}\) )
つまり、\(x\) が倍になれば \(y\) は半分になるので、反比例。
このようにして判断しましょう。
以上、比例・反比例の文章問題の基本。
つまり、
①「問題文に \(x\) と \(y\) があるから」
↓
\(x\) , \(y\) がそれぞれ何か、単位で確認。
②「公式以外の問題だから」
↓
・\(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍になると \(y\) も\(2\)倍,\(3\)倍 ⇒比例
・\(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍になると \(y\) は\(\frac{1}{2}\) , \(\frac{1}{3}\) ⇒反比例
で判断する。
という流れの問題でした。
比例・反比例の文章問題 応用
基本のつぎは、文章問題の応用です。
つまり、この問2問3のように、
- 問題文に \(x\) と \(y\) がない
- やはり公式を使う問題ではない
- 「\(x\) と \(y\) の関係式」じゃなくて何かの数値を求める
という特徴をもった問題です。
これをフローチャートに当てはめると、以下の黄色の部分になります。
この3段階で、問題を解いていきます。
銅板の重さと面積の問題
【第1段階】
この問題、文中に \(x\) と \(y\) がありません。
また「重さ(g)」と「面積(㎠)」という2種類の単位があります。
よって、好きなほうをえらんで \(x\) , \(y\) とします。
ここでは仮に、重さを \(x\)g、面積を \(y\)㎠ としておきます。
(もちろん逆でもかまいません。)
「おいおいジュウゴ、おまえアホか。1辺 \(6\) cmってあるだろう。「長さ」もふくめて単位は合計3種類だろが。」
わたしがアホなのはまちがいありませんが、この問題は、2種類でいいんです。つまり「cm」って長さの単位は無視していいんです。なぜなら関数というものは2種類の数量しか扱えないからです。3種類以上になったら、お手上げなんです(少なくとも中学・高校の数学までは。媒介変数とかは置いといて)。
んで、よく問題文を読むと、「1辺 \(6\) cmの正方形」とあります。ピンときたでしょう。
そう、正方形の面積が \(6 \times 6=36\) ㎠だと。
だからこの問2に出てくる単位は「重さ(g)」と「面積(㎠)」の2種類、としていいのです。
【第2段階】
いま対応しているのは \(12\)gで \(36\)㎠ という関係です。
つまり \(x=12\) のとき \(y=36\) 。
ここで、\(x\) が2倍になったら?
つまり重さが倍の \(24\)gになったら、面積は2倍?それとも \(\frac{1}{2}\) ?
そう、倍になりますね。
よってこの問題は比例の関係だとわかります。
比例の式は \(y=ax\) 。
比例定数は \(a= \frac{y}{x}\) で求められるので、
$$ a= \frac{36}{12} = 3 $$
$$ \mbox{関係式.} y=3x $$
とわかります。
【第3段階】
これで終わりじゃありません。
問2で求めるものは、重さ \(17\)gの星形の面積です。
これは、言いかえると、こんな問題になります。
比例の式を求めるの後半でやりましたね。
出てきた式に \(x=17\) を代入すればいいと。
だから \(y=3x\) に \(x=17\) を代入して、
\begin{eqnarray} y &=& 3 \times 17 \\ y &=& 51 \end{eqnarray}
答.\(51\) ㎠
以上のように3段階で解いていく。
これが銅版の重さと面積などの、応用問題の流れ・コツです。
水を入れる問題
同じ流れで、問3の水を入れる問題も解いていきます。
【第1段階】
まず問題文に \(x\) と \(y\) がないので、単位を2種類みつけます。
「毎分水を入れる量(L)」と「時間(分)」ですね。
この2つを好きに \(x\) , \(y\) とします。
ここでは毎分水を入れる量を \(x\) L、時間を \(y\) 分としておきます。
(もちろん逆でもかまいません)
【第2段階】
対応しているのは、毎分 \(5\) Lずつで \(12\) 分という関係。
つまり \(x=5\) のとき \(y=12\) 。
ここで、\(x\) が2倍になったら?
つまり毎分 \(10\)Lずつ水を入れたら、いっぱいになる時間は2倍?それとも \(\frac{1}{2}\) ?
そう、 \(\frac{1}{2}\) 、半分になりますね。
よってこの問題は反比例の関係だとわかります。
反比例の式は \(y=\frac{a}{x}\) 。
比例定数は \(a= xy\) で求められるので、
$$ a= 5 \times 12 = 60 $$
【第3段階】
さいご、関係式にわかってるほうを代入します。
ここで注意点が2つ。
わかっている \(15\) 分というのは、\(x\) と \(y\) どっちの値か?
そう、 \(y\) です。
だから関係式に代入するのは \(y=15\) のほう。
なんとなく \(x\) に \(15\) を代入しちゃう中学生が多いので、注意してください。
そしてもうひとつの注意点は、代入先の関係式は
$$ y=\frac{60}{x} \ \mbox{よりも} \quad xy=60 \ \mbox{のほうがラク}$$
という点。
(くわしくは反比例の式を求める後半で解説しています)
以上2つに注意して解くと、
\(xy=60\) に \(y=15\) を代入して、
\begin{eqnarray} 15x &=& 60 \\ x &=& 4 \end{eqnarray}
答.毎分 \(4\) L
このように、比例・反比例の文章問題の応用では、
①「問題文に \(x\) と \(y\) がないから」
↓
単位を2種類みつけて好きに \(x\) , \(y\) とする。
②「公式以外の問題なら、やはり」
↓
・\(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍になると \(y\) も\(2\)倍,\(3\)倍 ⇒比例
・\(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍になると \(y\) は\(\frac{1}{2}\) , \(\frac{1}{3}\) ⇒反比例
で判断する。
③「求める数値は \(x\) と \(y\) のどっちかに注意して」
↓
・比例なら \(y=ax\) の式に
・反比例なら \(xy=a\) の式に
わかってるほうを代入して、もう片方を求める。
という3段階で解きましょう。
>Amazonプライム・ビデオ「孤独のグルメ Season2」
ここまでのまとめ
いったんまとめます。
中1数学「比例と反比例」の文章題。
基本および応用問題は、以下のフローチャートどおりに解くこと。
とくに、コツは以下の2つ。
○どっちが \(x\) でどっちが \(y\) か迷うときには、単位で判断すること。
○また、比例か反比例か迷うときには、
- \(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍…になると \(y\) も\(2\)倍,\(3\)倍…⇒比例
- \(x\) が\(2\)倍,\(3\)倍…になると \(y\) は\(\frac{1}{2}\) , \(\frac{1}{3}\) …⇒反比例
→中学数学「比例と反比例」⑦ 文章問題のコツ(図形・速さ・歯車)
なお、以上の指導はあくまで「比例・反比例の文章問題が苦手」という生徒を想定したものです。
文章を読んで、すぐ立式できるような生徒へは必要ありません。
「全然わからない」
「わたしバカなんかな」
「もう何がわからんかもわからん」…。
こういって自信とヤル気を失っている中学生にこそ、ここでのノウハウを使ってあげてください。
つづけて、「比例と反比例」文章問題のうち、
- 図形、動点の問題
- 速さ、圧力の問題
- 歯車、てんびんの問題
をやっつけます。
→中学数学「比例と反比例」⑦ 文章問題のコツ(図形・速さ・歯車)
[比例反比例の記事一覧]
コメント
コメント失礼します。
このサイトで使われている画像や文章を学習塾の授業で活用させていただきたいのですが、利用するのは可能でしょうか。
かまいません。どうぞご利用ください。
ただご使用の際には当ブログの「サイト名」と「URL」を画像・文章等に記載くださいますようお願いします。
問1のように、比例定数が分数になると、とたんにできなくなる生徒が増えるきがします。
500枚で厚さ50mmなら、y=10xとできるのに、
500枚で厚さ45mmになると、y=0.09xとしてしまったり。
上で書かれているように、単位に注目するのが、それを防ぐ方法の一つかもしれませんね。