中学数学「1次方程式」文章題の解き方⑧【割合の問題】

数学

中1数学 1次方程式の文章題。

8回目は「割合の問題」解き方のコツです。

「定価や利益や割引の計算がわからない」

「食塩水の百分率(パーセンテージ)って苦手」

「去年より○%増えての問題ができない」

こうしたすべてを、この1記事でぜんぶ解決します。割合問題が苦手な中学生の指導にお役立てください。

 

「商品の売買」「食塩水」「増減」…。

これら方程式の割合の問題でつまずく原因は3つです。

  • 「1割」「23%」「4割引き」「56%増」などの言葉を計算式に直せない。
  • 「原価」「定価」「売り値」「利益」「濃度」といった言葉の意味がよくわかってない。
  • それぞれの割合問題の、方程式を立てるときのコツを知らない。

現在指導中の生徒やお子さんが、もし割合が苦手だとしたら、この3つのうちどれかに当てはまります。

ということは、言葉の意味と使い方を知り、それぞれの問題のコツさえつかめば、できるようになります。

実際ジュウゴの指導してきた中学生たちもそうでした。「利益だろうが食塩水だろうが、もうこわくない」になっていきました。

 

そこでこの記事ではまず、割合の定義と計算(使い方)を復習します。

次に「商品」「食塩水」「増減」という問題分野ごとに、出てくる言葉の意味をわかりやすく解説します。

そして同時に、それぞれの問題分野における解き方のコツを紹介していきます。

各段階で、公立高校入試過去問からとった例題を載せるので、問題演習とともに理解していきましょう。

ではどうぞ。

割合の復習

小学5年生で割合を習って以来、割合がどうも苦手…。

「比べる量」と「もとにする量」って、どっちがどっちかわからない…。

先生には「く・も・わ」の公式を使えって言われたけど、何それ…。

こんな中学生はまず、割合とは何かの理解がぬけています。

逆にいえば、割合の理解がきちんとできれば、公式など覚えなくても問題を解くことができます。

割合の定義と使い方を、以下わかりやすく解説します。


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割合とは何か?(何割)

割合とは「ある量が基準に対してどれくらいあるかという数値」。

つまり、ざっくりいえば、何倍かってことです。

 

たとえば「1割」とは、基準を10分割したうちの1つ。

つまり、\( \frac{1}{10}\) 倍(0.1倍)ってこと。

なので、1000円の1割は

$$ 1000 \times \frac{1}{10} = 100 \mbox{(円) だし、} $$

1000円の7割は

$$ 1000 \times \frac{7}{10} = 700 \mbox{(円) です。} $$

 

また、\( \frac{11}{10}\) 倍(1.1倍)のことを「1割増」などと言います。

商売の分野では「1割の利益を見込んで」などとよく使います。

なので、1000円の1割増しは

$$ 1000 \times \frac{11}{10} = 1100 \mbox{(円) だし、} $$

1000円の5割の利益を見込んで値段をつけたら

$$ 1000 \times \frac{15}{10} = 1500 \mbox{(円) で、} $$

ようするに1.5倍ってことですね。

 

そして、\( \frac{9}{10}\) 倍(0.9倍)のことを「1割減」などと言います。

商売の分野では「1割引き」「1割OFF」などとよく使います。

なので、1000円の1割減は

$$ 1000 \times \frac{9}{10} = 900 \mbox{(円) だし、} $$

1000円の4割引きは

$$ 1000 \times \frac{6}{10} = 600 \mbox{(円) です。} $$

つまり「1割減」=「9割」、「4割引き」=「6割」ってこと。

 

「4割引きって言わずに、6割で売りますって言えばいいのに」と思いますよね。

でも「8割で売ります!」よりも、「2割引き!」のほうがお得感があって、ついつい買ってしまいそうでしょ?

だから商売では特にこうした表現がよく使われるんです。

 

割合とは何か?(百分率)

百分率(パーセンテージ)も同様です。

 

たとえば「1%」とは、基準を100分割したうちの1つ。

つまり、\( \frac{1}{100} \) 倍(0.01倍)ってこと。

なので、1000円の1%は

$$ 1000 \times \frac{1}{100} = 10 \mbox{(円) だし、} $$

1000円の35%は

$$ 1000 \times \frac{35}{100} = 350 \mbox{(円) です。} $$

 

また、\( \frac{101}{100} \) 倍(1.01倍)のことを「1%増」などと言います。

商売の分野では「1%の利益を見込んで」などとよく使います。

なので、1000円の1%増しは

$$ 1000 \times \frac{101}{100} = 1010 \mbox{(円) だし、} $$

1000円の23%の利益を見込んで値段をつけたら

$$ 1000 \times \frac{123}{100} = 1230 \mbox{(円) だし、} $$

1000円の100%の利益を見込んで値段をつけたら

$$ 1000 \times \frac{200}{100} = 2000 \mbox{(円) で、} $$

ようするに2倍ってことですね。

 

そして、\( \frac{99}{100} \) 倍(0.99倍)のことを「1%減」などと言います。

商売の分野では「1%引き」「1%OFF」などとよく使います。

なので、1000円の1%減は

$$ 1000 \times \frac{99}{100} = 990 \mbox{(円) だし、} $$

1000円の25%引きは

$$ 1000 \times \frac{75}{100} = 750 \mbox{(円) です。} $$

つまり「1%減」=「99%」、「25%引き」=「75%」ってこと。

 

「○%引き」「○%OFF」という表現も、商売でよく使うのは、なんとなくお得感があるためです。

「なんと60%のお値段で!」よりも「なんと40%引きのお値段で!」のほうが安く感じるもんね。

どっちも同じことなんだけど。

 

文字式による割合の表し方

以上が割合の定義と、基本的な使い方です。

最後に、文字の入った割合の使い方をおさらいして復習を終わりとします。

以下のまとめをよく読んで、理解してください。

見ただけでは頭に入らないという中学生には、書き写させるといいでしょう。

 

ここまで来れば、冒頭の静岡県高校入試問題も解けるはずです。

例題1)ある中学校では、毎年、多くの生徒が、夏に行われるボランティア活動に参加している。昨年度の参加者は、男子がa人、女子がb人であった。今年度の参加者は、昨年度の男女それぞれの参加者と比べて、男子は9%増え、女子は7%減った。今年度の、男子と女子の参加者の合計を、a,bを用いて表しなさい。(2017 静岡)

表すべき数量は、

(今年度の男子の参加者)+(今年度の女子の参加者)

ですね。そしてそれぞれを求めるには、

( \(a\) 人の9%増)+( \(b\) 人の7%減)

とすればいい。よって答えは、

$$ \frac{109}{100}a + \frac{93}{100}b $$

この例題が解けたら、割合の復習はひとまず終了としていいでしょう。

 

ここまで割合の定義と計算(使い方)でした。

生徒にさせる際には、「割合ってつまり何倍かってこと」と伝えてあげる、そして図やグラフを用いてビジュアルに訴える。この2点に留意するとわかりやすい説明となります。

それではいよいよ、商品・食塩水・増減問題に入りましょー。

*連立方程式の割合問題はこちら

 

商品の売買の問題

1次方程式の割合における「商品の問題」では、まず言葉の意味を知らなければいけません。

「定価」「原価」「売り値」「利益」などの意味がすっかり腑に落ちてないと、文章を読んでも方程式が立てられないからです。

そこでまず言葉の意味を、中学生にもわかりやすいよう例を用いて説明してから、解き方のコツに入ります。

 

「原価」「定価」「売り値」…とは?

突然ですが、あなたはアパレルショップの店長だとします。

あなたは服を売って、お金を稼いでいます。

さて、まずはじめにするべきことは何か?

売る服を仕入れないといけませんね。

そこでいろいろと服を探したところ、東京の洋服工場がいいシャツを作っていると知りました。あなたはその工場と商談をおこない、送料込みで、一着2000円で買うことができました。

この「2000円」を仕入れ値、または原価と言います。

 

いいシャツが手に入ったので、今度はこのシャツを売りに出します。

さあ、シャツに値段をつけましょう。

何円で売りますか?2000円?

それじゃ儲けがないよね。あなたが利益を得るために、2000円よりも高く売らなきゃ。

そこで2000円に3割の利益を見込んで値段をつけました。

$$ 2000 \times \frac{13}{10} =2600 \mbox{(円)} $$

この2600円を「定価」と言います。

つまり定価とは、売る側が最初につけた値段のことです。

 

シャツに2600円という値札をつけて、店頭にならべます。

しかし1か月たっても、2か月たっても売れません。

おかしいな、2600円じゃ高いのかな、値下げしようかな。

そう考えたあなたは、定価の15%引きに値下げしました。

$$ 2600 \times \frac{85}{100} = 2210 \mbox{(円)} $$

するとすぐに、ひとりの客がシャツを買っていきました。

「2210円になります、まいどありー!」

この「2210円」が売り値、または売価となります。

つまり売り値とは、実際に商品が売れたときの値段のことです。

お客側からいえば「買い値」または「代金」のことになります。

 

さて、シャツが売れたことであなたには利益が入ります。

一着2000円で仕入れて、2210円で売れました。利益はいくら?

$$ 2210 – 2000 = 210 \mbox{(円)} $$

この「210円」が実際の利益になります。

つまり(売り値)ー(原価)=(利益)なんです。

 

ただ、ときにはこの利益がマイナスになることもあります。

たとえば定価の15%引きにしても売れなくて、25%引きまで値下げしたとしましょう。

$$2600 \times \frac{75}{100} = 1950 \mbox{(円)} $$

この「1950円」でやっと売れたら、そのときの利益は

$$ 1950 – 2000 = -50 \mbox{(円)} $$

つまり「50円」の損失になるんです。

ずーっと売れないよりは、損失になっても売れたほうがまだお金が入るからいい、という判断も実際の商売ではよくあるからね。

 

以上が「原価」「定価」「売り値」「利益」「損失」の内容です。

イメージできたら、いよいよ問題を解いていきましょう。

 

解き方のコツ

例題2)ある店でシャツを定価の15%引きの価格で買ったところ、定価よりも240円安くなった。このとき、シャツの定価は何円か、求めなさい。ただし、消費税は考えないものとする。(2017 愛知 B)

この例題は、定価や売り値(買い値)という言葉の意味さえ把握していればぜんぜん難しくありません。シャツの定価を \(x\) 円としたら、売り値(買い値)は2通りに表せます。

「定価の15%引きの価格」

$$ x \times \frac{85}{100} $$

「定価よりも240円安くなった」

$$ x -240 $$

よって

\begin{eqnarray} \frac{85}{100}x &=& x -240 \\ \frac{17}{20}x &=& x -240 \\ 17x &=& 20x -4800 \\ 17x -20x &=& -4800 \\ -3x &=& -4800 \\ x &=& 1600 \end{eqnarray}

答.1600円

このように、「定価」「売り値(買い値)」などの言葉の意味がちゃんとわかること。

これが商品の問題における解き方のコツのひとつといえます。

 

では、次の問題はどうでしょう。

類題1)ある商品に、原価の3割の利益を見込んで定価をつけた。この商品を定価の2割引きで販売したところ、880円の利益があった。この商品の原価は何円か、求めよ。

まずは「原価を \(x\) 円とする」等とします。

次に方程式をつくりますが、原価や利益も出てくる問題では、さっき出てきた利益の関係を使うと等式が立ちます。

(売り値)-(原価)=(利益)

この3つの数量をそれぞれ表して、最後に関係式に当てはめればいいんです。

原価は \(x\) 円、また利益は \(880\) 円でしたね。

売り値はすこし複雑ですが、順に考えていけば表せますよ。

$$ \frac{13}{10}x \times \frac{8}{10} $$

(原価 \(x\) 円の3割の利益を見込んで定価、その定価の2割引きが売り値だから)。

よって方程式とその後の解答例は↓

\begin{eqnarray} ( \frac{13}{10}x \times \frac{8}{10} ) -x &=& 880 \\ \frac{26}{25}x -x &=& 880 \\ \frac{1}{25}x &=& 880 \\ x &=& 22000 \end{eqnarray}

答.22000円

以上のように、原価や利益もからむ問題では、

(売り値)-(原価)=(利益)

この関係式をつかって方程式を立てること。

これが商品の問題におけるもうひとつのコツです。

 

練習問題

では、練習問題を2つ用意しました。

チャレンジさせてみてあげてください。

解答は下に記載、質問はコメント欄からどうぞ。

問1)あるシャツを、以下のように販売する店がある。【通常2枚買う場合:定価の合計金額から500円引き】/【特別期間に3枚買う場合:定価の合計金額から40%引き】。このシャツを特別期間に3枚買う場合は、通常2枚買う場合よりも300円安くなるという。シャツ1枚の定価はいくらか。(2017 鹿児島)

問2)ある商品に、仕入れ値の25%の利益を見込んで定価をつけたが、安売りのとき、定価より360円安く売ったので、仕入れ値の5%の損失になった。この商品の仕入れ値は何円か、求めよ。

問1)4000円
問2)1200円

…ちょっと記事が長くなったのでページを分割します。

2ページ目は食塩水の問題と増減の問題について。

次ページ「食塩水と増減の問題」

下の「>続きを読む」からでもいけます。

コメント

  1. そらと より:

    食塩の問題4の計算式を教えてください。360✖️3/100+X=(360+X)✖️10/100でたてたのですが、答えが合いません。

    • じゅうご より:

      返信が遅くなり申し訳ありません。
      そらとさんの式で、合っています。
      方程式の計算のどこかでミスをされているかもです。

  2. なっち より:

    こんにちは!いつも読ませてもらってます!わかりやすくて参考になります。

    練習問題問1)の式がたてられないです・・・なぜか全部、マイナスになってしまいます。式を教えていただけますか?

    • じゅうご より:

      なっちさま
      解答例)シャツ1枚の定価をx円とする。
      3x × 100分の60 = (2x-500)-300

      この式は
      (特別期間に3枚買う場合)=(通常2枚買う場合)-300
      で立式しました。

  3. 2Xー500=3×60/100×X+300
    の間違いでした
    3枚買うほうが300円安いんだから、2枚=○+300としなければ、ですね。有難うございました‼️

  4. 割合 問1 シャツの割合の問題の途中式教えてください。
    定価をX円とすると、
    2xー500=3×60/100 ×Xー300
    X=1000 となるのですが。

  5. より:

    質問失礼します。
    練習問題②の途中式を教えてもらえますか?

    何度やっても解けなかったのでよろしくお願いいたします。

    • じゅうご より:

      >す様
      問2)ある商品に、仕入れ値の25%の利益を見込んで定価をつけたが、安売りのとき、定価より360円安く売ったので、仕入れ値の5%の損失になった。この商品の仕入れ値は何円か、求めよ。
      解答例)この商品の仕入れ値をx円とする。
      (100分の125x -360)-x = -100分の5x
      このあとどう解いてもいいですが、たとえば両辺100倍すると、
      125x-36000-100x = -5x
      125x-100x+5x = 36000
      30x = 36000
      x=1200
      となります。

  6. 海斗 より:

    すみません
    中学一年生なんですけど 
    原価を求める方法が分らないので教えていただければ嬉しいです

    • じゅうご より:

      >原価を求める方法が分らないので教えていただければ嬉しいです

      海斗さん
      わからないところを具体的に言ってもらえれば、解説します。

  7. うちだ より:

    中学2年生です。今は中1の一次方程式を完璧にしようと復習しているので、分からないところがあったときはよくこのブログに助けられています。

    質問があります。
    ある学校では、昨年度の男子の生徒数は、女子より200人多く、今年度は、昨年度より男子が3%、女子が4%減り、合計で48人減ったという。この学校の今年度の生徒数を求めよ。

    という問題を解いたのですが、このサイトに載っていることを参考にして、3%減→100分の97、
    4%減→100分の96として解いたところ、私は式を立てて解いたところ、うまくいきませんでした。模範解答では、100分の3、100分の4と表していました。

    (模範解答)
    100分の3(x+200)+100分の4=48
    という式でした。

    100分の96、100分の97の表し方だと解くことは出来ないのでしょうか?ただ私の勘違いだったらすみません。
    詳しく教えて欲しいです。

    • じゅうご より:

      うちださんへ
      100分の96、100分の97の表し方でも解くことはできます。
      以下、わたしの解答例です。

      昨年度の女子の生徒数をx人とすると、
      100分の97(x+200) + 100分の96 x = x+200 + x -48
      解いて、x=600
      よって昨年度の男子の生徒数は600+200=800(人)。
      ゆえに今年度の生徒数は
      800+600-48=1352
      答.1352人

      参考になればさいわいです。
      復習がんばってください!

      • うちだ より:

        ありがとうございます!参考になりました。
        ずっとここでつまづいていたので本当に助かりました。
        分からないところがあった時はこのブログにいつも助けられています。復習頑張りたいと思います。また分からないところがあったら質問させて下さい!

  8. しゅう より:

    割合の問題の問1シャツ1枚の定価はいくらかの問題の答は1,000円ではないですか?間違えてたらごめんなさい

    • じゅうご より:

      答えは4000円になります。
      【ヒント】
      ①シャツ1枚の定価をx円として、「通常2枚買う場合の合計金額」と「特別期間に3枚買う場合の合計金額」をそれぞれ表してみる。
      ②(特別期間に3枚買う場合)=(通常2枚買う場合)-300 で方程式をつくって解く。

      ちなみに、間違えることは自分で考えている証拠なので、すばらしいことだと私は思います。

  9. サンダー より:

    いつもながら、たいへん参考になりました。
    特に、「<割合>とは、ようするに何倍かってこと。」は新鮮でした。

  10. はる より:

    問3)濃度15%の食塩水150gと、濃度8%の食塩水を混ぜあわせて、10%の食塩水をつくりたい。8%の食塩水を何g 混ぜればいいか。
    答.450g

    ちょっと!これも答え375gでしょ!
    いい加減にして下さいよ

    • じゅうご より:

      たびたびのご指摘ありがとうございます。
      確認して修正しました、すみません。
      これを機に全練習問題を再度点検しました。
      いい機会をいただきありがとうございました。

      • はる より:

        すいません、どうしても答えが合わなくてイラっとしてしまいました。
        他の問題はこちらの計算間違いでした。

        じゅうごさんの説明の仕方はすごくわかりやすくて最近よく使わせてもらっているんです。
        本見てわからない所もじゅうごさんのサイトを見て理解できたんです。
        なので引き続き利用させて頂きます。

        • じゅうご より:

          そう言っていただけるとうれしいです。
          「アジアの歴史」記事をあとひとつ書き終えたら、また数学指導法の記事を再開する予定ですので、ひきつづき温かく厳しく見守ってやってくださると助かります。

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