中学数学のつまずき解消をめざすこの連載。
今回から中3「平方根」に入ります。
1回目は平方根とは何か、そして平方根の大小問題をあつかいます。
ここで中学生がつまずく点はおもに3つ。
- 平方根とは何か、ちゃんと理解しないまま授業がすすんじゃった
- 「平方根を求めよ」と「根号を使わないで表せ」の区別ができない
- 大小問題の応用になるとできなくなる
つまり、
- 「平方根とは何か、ひとことで説明せよ」
- 「\(49\) の平方根を求めよ」「\(\sqrt{49}\) を根号を使わないで表せ」
- 「\(1.5 \lt \sqrt{n} \lt 2.8\) にあてはまる自然数 \(n\) をすべて求めよ」
などの問題でつまずくのです。
そこでこの記事では、上の3点をわかりやすく、かつ深く、解説します。
(たとえば \(\sqrt{2}\) という数が出てきた歴史的経緯も紹介します)
いつもジュウゴが使っている教え方です。
ここで紹介するコツを、中学生のみならず、指導者や保護者の方もぜひ参考にしてください。
平方根とは何か
まず平方根とは何かの理解から。
平方根とはつまり、二乗のもとのことです。
二乗(平方)のもと(根)
たとえば、\(3^2\) は \(9\) です。
よって、\(9\) の二乗のもとは、\(3\) 。
ただ、二乗して \(9\) になる数は他にもある。
そう、\(-3\) 。\((-3)^2 =9\) だからね。
よって、\(9\) の二乗のもとをぜんぶ答えろと言われたら?
→ \(3\) と \(-3\) 。
このように、平方根とは「二乗のもと」のこと。
じゃ、\(36\) の平方根は?
→ \(6\) と \(-6\) 。
じゃ、\(49\) の平方根は?
→ \(7\) と \(-7\) 。
かんたんだね。
ちなみに、「\(3\) と \(-3\)」って書くのがめんどうな場合、「\(\pm 3\)」と書く。
「プラスマイナス3」と読みます。
これで「\(+3\) と \(-3\)」を同時に表したことになります。
だから、
\(36\) の平方根は \(\pm 6\)
\(49\) の平方根は \(\pm 7\)
と答えてもOK。
分数や小数の平方根
じゃ、\(\frac{9}{49}\) の平方根はいくらだろう?
これ、分子・分母それぞれの二乗のもとを考えればいいね。
答えは \(\pm \frac{3}{7}\) 。
同じように、
\(\frac{4}{25}\) の平方根は \(\pm \frac{2}{5}\)
\(\frac{1}{81}\) の平方根は \(\pm \frac{1}{9}\) 。
じゃ、\(0.04\) の平方根はいくらだろう?
二乗して \(0.04\) になる数を考えればいいね。
答えは \(\pm 0.2\) 。
\( 0.2 \times 0.2 = 0.04\) だからね。
同じように、
\(0.16\) の平方根は \(\pm 0.4\)
\(0.01\) の平方根は \(\pm 0.1\) 。
二乗した数をおぼえてしまおう!
じゃ、\(289\) の平方根は?
→ \(\pm 17\) 。
\(\frac{121}{196}\) の平方根は?
→ \(\pm \frac{11}{14}\) 。
\(1.69\) の平方根は?
→ \(\pm 1.3\) 。
こんな問題も、平方根単元ではたまに出てくる。
だから、中3生は、\(10\) ~ \(20\) の二乗した数もおぼえてしまうといい。
以下の数を3分でおぼえて。
- \(100 = 10^2\)
- \(121 = 11^2\)
- \(144 = 12^2\)
- \(169 = 13^2\)
- \(196 = 14^2\)
- \(225 = 15^2\)
- \(256 = 16^2\)
- \(289 = 17^2\)
- \(324 = 18^2\)
- \(361 = 19^2\)
- \(400 = 20^2\)
これらをぜんぶおぼえたら、他の生徒と差をつけられるよ!
練習問題
では、ここまでの知識を確認しよう。
以下の練習問題をどうぞ。
問1)次の数の平方根を求めよ。
① \(64\) ② \(144\) ③ \(0\)
④ \(\frac{25}{36}\) ⑤ \(\frac{1}{324}\) ⑥ \(\frac{256}{225}\)
⑦ \(0.09\) ⑧ \(3.61\) ⑨ \(0.0169\)
答.①\(\pm 8\) ②\(\pm 12\) ③\(0\) ④\(\pm \frac{5}{6}\) ⑤\(\pm \frac{1}{18}\) ⑥\(\pm \frac{16}{15}\) ⑦\(\pm 0.3\) ⑧\(\pm 1.9\) ⑨\(\pm 0.13\)
[平方根の記事 一覧]
- 中3数学「平方根」のコツ① 平方根とは/平方根の大小
- 中3数学「平方根」のコツ② 有理数と無理数/循環小数と分数
- 中3数学「平方根」のコツ③ 素因数分解/ルートを簡単にする計算
- 中3数学「平方根」のコツ④ 有理化/加減乗除/展開
- 中3数学「平方根」のコツ⑤ 平方根の近似値・式の値
- 中3数学「平方根」のコツ⑥ 最小の自然数n・整数部分と小数部分
ルート( √ )の導入
次にルート(根号、\(\sqrt{\quad}\))を説明します。
ルートとは、どうしても二乗のもとが見つからない数について、苦しまぎれに人類がつけた記号のことです。
2の平方根
たとえば、二乗して \(2\) になる数。
つまり2の平方根は、過去の数学者たちが必死に探してもついに見つかりませんでした。
たとえば古代インドでは
$$ \frac{577}{408} \ ( \mbox{≒ 1.4132156862745…} ) $$
を2の平方根とした数学者もいました。
でもこれ、二乗してもキッチリ2にはなりません。
$$ \left( \frac{577}{408} \right)^2 = 2.0000060073048\mbox{…} $$
それどころか、2の平方根は分数や小数では表せないということがわかったのです。
ここで数学者たちは考えます。
いまある数では、2の平方根は表せない…。
でも「2の平方根はありません」じゃ満足できない。
そうだ!新しい数をつくったらいいんだ!
分数や小数ともちがう、新たな数を!
こうして数学者たちは、「2の平方根は \(\pm \sqrt{2}\) とする」と決めたのです。
だからルートとは、二乗のもとがない・つまり平方根が分数や小数でも表せない数にたいして、「この記号をつけたら2の平方根ってことにする!じっさいはなんだかわからないけど、とにかくそう決めたの!」としたものなんです。
4の平方根
よって、3の平方根は \(\pm \sqrt{3}\) です。
5の平方根は \(\pm \sqrt{5}\) 、6の平方根は \(\pm \sqrt{6}\) です。
こう表すしか、方法がないからです。
ではここで、4の平方根は何か考えてみましょう。
うん、\(\pm 2\) ですね。
ただもし、二乗して4になる数が思いつかなかったらどう書きますか?
そう、\(\pm \sqrt{4}\) ですね。
つまり \(\pm 2\) と \(\pm \sqrt{4}\) は同じ数のことを言ってるんです。
分けて書くならこんなかんじ。
$$ 2 = \sqrt{4} \ , \ -2 = – \sqrt{4} $$
同じりくつで、9の平方根は \(\pm 3\) だし \(\pm \sqrt{9}\) でもある。
だから
$$ 3 = \sqrt{9} \ , \ -3 = – \sqrt{9} $$
同じりくつで、121の平方根は \(\pm 11\) だし \(\pm \sqrt{121}\) でもある。
だから
$$ 11 = \sqrt{121} \ , \ -11 = – \sqrt{121} $$
以上の式を左右逆に書けば、
\begin{eqnarray} \sqrt{4} &=& 2 \ , \ – \sqrt{4} = -2 \\ \sqrt{9} &=& 3 \ , \ – \sqrt{9} = -3 \\ \sqrt{121} &=& 11 \ , \ – \sqrt{121} = -11 \end{eqnarray}
となります。
ここから「ルートを使わないで表せ」という問題が出てくるんです。
「ルートを使わないで表せ」
次の数を、√を使わないで表してみてください。
- \(\sqrt{49}\)
- \(- \sqrt{100}\)
- \(\sqrt{\frac{25}{64}}\)
- \(- \sqrt{0.36}\)
答えは以下のとおり。
- \(\sqrt{49} = 7 \)
- \(- \sqrt{100} = -10 \)
- \(\sqrt{\frac{25}{64}} = \frac{5}{8}\)
- \(- \sqrt{0.36} = -0.6 \)
ここまでくれば、
「\(49\) の平方根を求めよ」→ \(\pm 7\)
「\(\sqrt{49}\) を√を使わないで表せ」= \(7\)
この違いがわかりましたね。
ちなみにテストのときは、\(49= \pm 7\) と書かないように注意しましょう。
\( \pm 7\) は \(49\) の平方根であって、等しいものじゃないからです。
気をつけて。
練習問題
では、ルートの知識も練習問題をやって確認しましょう。
質問はコメント欄からどうぞ。
問2)次の数の平方根を求めよ。
① \(7\) ② \(\frac{3}{2}\) ③ \(0.4\)
問3)次の数を、√を使わないで表せ。
① \(-\sqrt{289}\) ② \(- \sqrt{\frac{9}{100}}\) ③ \( \sqrt{3.24}\)
答. 問2①\(\pm \sqrt{7}\) ②\(\pm \sqrt{\frac{3}{2}}\) ③\(\pm \sqrt{0.4}\)
問3①\(-17\) ②\(- \frac{3}{10}\) ③\(1.8\)
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平方根の大小
さいごに、平方根の大小問題を説明します。
平方根の大小問題のコツは、ぜんぶ√にしてルートの中身をくらべるだけ。
√ の中身をくらべる
例題1)次の各組の数の大小を、不等号を使って表せ。
- \(\sqrt{13} \ , \ \sqrt{11}\)
- \(- \sqrt{5} \ , \ – \sqrt{4}\)
この例題1は、出てくる数ぜんぶ、ルートがついてます。
よってルートの中身の大小をくらべるだけ。
答えは
- \(\sqrt{13} \gt \sqrt{11}\)
- \(- \sqrt{5} \lt – \sqrt{4}\)
となります。
ちなみに2.は \(-5 \lt -4\) だから、こう。
マイナスが付いてたら大小関係に注意しましょう。数直線の右にあるほど大きい数だよ。
ムリヤリ √ にする
例題2)次の各組の数の大小を、不等号を使って表せ。
- \(\sqrt{15} \ , \ 4 \)
- \(0.3 \ , \ \sqrt{0.3}\)
この例題2には、ルートのない数があります。
こんな場合は、\(4 = \sqrt{16}\) とする。
つまりムリヤリ√にして中身の大小をくらべるんです。
\(\sqrt{16} = 4\) だから、逆に \(4 = \sqrt{16}\) ともできるもんね。
よって答えは、
- \(4 = \sqrt{16}\) より
\(\sqrt{15} \lt \sqrt{16}\)
よって \(\sqrt{15} \lt 4 \) - \(0.3 = \sqrt{0.09}\) より
\(\sqrt{0.09} \lt \sqrt{0.3}\)
よって \(0.3 \lt \sqrt{0.3}\)
ルートのある数とない数の大小はこうやってくらべましょう。
応用問題の解き方 その1
例題3)\(1.5 \lt \sqrt{n} \lt 2.8\) にあてはまる自然数 \(n\) をすべて求めよ。
ここまでくれば、この応用問題もできますね。
\(1.5 = \sqrt{2.25}\) , \(2.8 = \sqrt{7.84}\) だから、与式は
$$ \sqrt{2.25} \lt \sqrt{n} \lt \sqrt{7.84} $$
あとはルートの中身をくらべるだけ。
2.25より大きくて、7.84より小さい自然数ってなに?
答. \(n= 3 , 4 , 5 , 6 , 7\)
となります。
不安な人は、自分で数直線を書いてひとつひとつ確かめるといいでしょう。
応用問題の解き方 その2
例題3)\(1.5 \lt \sqrt{n} \lt 2.8\) にあてはまる自然数 \(n\) をすべて求めよ。
で、平方根の大小問題にはもうひとつの解き方があります。
それは、ぜんぶ二乗しちゃう方法。
\( 1.5^2 = 2.25\) , \( 2.8^2 = 7.84\) 。
また \( ( \sqrt{n} )^2 = n\) です。
だってルートって二乗のもとのことだからね。
すると与式から
$$ 2.25 \lt n \lt 7.84 $$
これに当てはまる自然数nをぜんぶ書く。
答. \(n= 3 , 4 , 5 , 6 , 7\)
となります。
じつは例題2もこの「ぜんぶ二乗する方法」でもいける。
- \( ( \sqrt{15} )^2 = 15\) , \(4^2 =16\) より
\( \sqrt{15} \lt 4\) - \( 0.3^2 = 0.09\) , \( ( \sqrt{0.3} )^2 = 0.3\) より
\( 0.3 \lt \sqrt{0.3}\)
中学生はこの両方の方法を知っておきましょう。
両方とも使いこなせれば、たとえば以下の練習問題の問6もできるようになります。
以上、平方根の大小問題でした。
練習問題
問4)次の各組の数の大小を、不等号を使って表せ。
① \(- \sqrt{10} \ , \ – \sqrt{11}\) ② \(\sqrt{7} \ , \ 3 \)
③ \(0.8 \ , \ \sqrt{0.8} \) ④ \(-1.5 \ , \ – \sqrt{2.56}\)
問5)\(1.7 \lt \sqrt{n} \lt 2.5\) にあてはまる自然数 \(n\) をすべて求めよ。
問6)\( \sqrt{3} \lt n \lt \sqrt{26}\) にあてはまる自然数 \(n\) をすべて求めよ。
答. 問4①> ②< ③< ④>
問5 \(n= 3,4,5,6\)
問6 \(n=2,3,4,5\)
*問6はちょっと難問です。質問などはコメント欄からどうぞ。
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まとめ
平方根とは「二乗のもと」。
9の平方根→ \(\pm 3\) のように書く。
10~20の二乗した数もおぼえるとテストで差がつく。
ルート(√)とは、二乗のもとが見つからない数にムリヤリつけた記号。
2の平方根→ \(\pm \sqrt{2}\) のように書く。
だから \(\sqrt{2}\) や \(- \sqrt{2}\) は分数や小数とはちがう、新しい数。
このルートを使うと、二乗のもとが見つかる数の平方根は2通りの書き方がある。
たとえば9の平方根は \(\pm \sqrt{9}\) あるいは \(\pm 3\) 。
ここから \(\sqrt{9}=3\) のような問題も出てくる。
平方根の大小問題の基本は、√の中身をくらべること。
ルートのない数がある大小問題の場合、
- ムリヤリ√にする
- ぜんぶ二乗してくらべる
という2つの方法がある。
以上、平方根とは何か、ルートとは何か、そして平方根の大小問題の解き方でした。
次回は中3数学 平方根単元の2回目。
「無理数・有理数とは何か」「循環小数⇔分数の変換のしかた」を解説します。
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