中1数学「文字と式」の5回目。
今回は文字式単元の最後に、規則性の問題について解説します。
「規則性の見つけ方がわからない」
「なにかうまいコツはないのか」
そんな中学生向けに、規則性の問題がイッパツで解ける方法を紹介します。
ここでつまずいている生徒の指導に、お役立てください。
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こんな規則性の問題は、さまざまな教え方があって、講師の側もどのように指導したらいいのか悩みます。
しかし安心してください。
規則性の指導法は、大別すると3つだけです。
それぞれの方法がどのようなものか?
そして、どんな生徒にどの方法が適しているのか?
つまずく原因とあわせて、くわしく見ていきましょう。
裏ワザのようにイッパツでできてしまう方法も、2つめと3つめに紹介します。
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規則性の問題の解き方
規則性の問題は、中学数学ではじめて出あう難問ともいえます。
できるようになるために、たくさん練習するのはもちろんですが、その前に「どのように解いたらいいのか」の道筋(ルート)を知ることが肝心です。
ルートはぜんぶで3つ。
①図を分ける→式を書き出し、\(n\) との関係を見出す
②表をかく→公式を使って式をつくる
③表をかく→つじつまを合わせて式をつくる
以下、くわしく解説していきます。
つまずく原因
- 規則性が見つからない
- \(n\) を使って表すことができない
文字式の規則性問題でつまずく原因は、このどちらかです。
このうち「規則性が見つからない」場合の解決策は2つあります。
- 図を分けて考える
- 表をかく
また、規則性は見つかったけどそのあと「\(n\) を使って式を表すことができない」場合、解決策は3つあります。
- ひとつひとつ式を書き出して、\(n\) との関係を見出す
- 公式にあてはめる
- つじつまを合わせる
以上の解決策を組み合わせると、規則性問題を解く方法はおおきくわけて以下の3つになります。
【方法①】…学校の教え方
図を分けて考えて、規則性を見つける
⇓
ひとつひとつ式を書き出して、\(n\) との関係を見出す
表をかいて、規則性を見つける
⇓
公式にあてはめて、\(n\) を使った式をつくる
表をかいて、規則性を見つける
⇓
つじつまを合わせて、\(n\) を使った式をつくる
これらの方法のうち、応用範囲のいちばん広いのは①です。
まぁだから学校ではこの方法で教えるわけです。
逆に②と③は、応用できない問題もたまにあるけど、コツさえつかめば超簡単に解ける方法です。
よってまずは方法①を、それでダメなら②または③を試してください。
おそらく、学力上位者ほど方法①がしっくりくるはずです。
逆に「数学は苦手」という生徒には②や③がいいでしょう。
では、それぞれの方法の中身を具体的に見ていきましょう。
方法①…学校の教え方
1.図を分けて考えて、規則性をみつける
マッチ棒が何本ずつ増えているかを、図を分けて考える。
以下のように分けると、「3本ずつ増えている」とわかる。
2.ひとつひとつ式を書き出す
規則性をもとに、ひとつずつ、マッチ棒の本数を求める式を立ててみる。
はじめの4本に、3本が追加されていくから、以下のような式になる。
3.変化する数と \(n\) との関係を見出す
式中の変化する数に注目する。
正方形が3個のとき、変化する数は2。
正方形が4個のとき、変化する数は3。
じゃあ正方形が \(n\) 個のとき、変化する数は…\(n-1\) !
4.\(n\) 個目の式を表す
よって \(4+3 \times (n-1) \) と式が立つ。
あとは計算して、おしまい。
答えは \(3n+1\) (本)。
方法②…裏ワザその1
1.表をかいて、規則性をみつける
上段に正方形(個)、下段にマッチ棒(本)として、表をかいていく。
マッチ棒の本数は実際に数えたらいい。
4つくらい書けば、「3本ずつ増えている」という規則性がみつかるはず。
2.\(n\) 個目のマッチ棒の本数は…
はじめの本数「\(4\)」と、増えている数「\(+3 \ +3 \ +3 \ldots +3\)」に注目。
\(n\) 個目のマッチ棒の本数は、
$$4+(3+3+3+ \ldots +3)$$
で求めることができる。
3.増えている数は \( (n-1) \) 回ある
\(+3\) は何回あるか?
正方形3(個)のとき \(+3\) は2回。
正方形4(個)のとき \(+3\) は3回。
じゃあ正方形 \(n\) (個)のとき… \(+3\) は \( (n-1) \) 回!
4.\(n\) 個目の式を表す
よって \(4+3 \times (n-1) \) と式が立つ。
あとは計算して、おしまい。
答えは \(3n+1\) (本)。
5.公式の紹介
以上のことから、以下の公式が成り立つ。
次からは、この公式を使って解いてもいい。
方法③…裏ワザその2
1.表をかいて、規則性をみつける
上段に正方形(個)、下段にマッチ棒(本)として、表をかいていく。
マッチ棒の本数は実際に数えたらいい。
4つくらい書けば、「3本ずつ増えている」という規則性がみつかるはず。
(ここまでは方法②と同じ)
2.\(3n +\) ■という形は決まり
増えている数が「\(3\)」の時点で、\(3n +\) ■ という形は決まり。
あとは■に入る数字を探すだけ。
3.つじつまを合わせる
どこでもいいが、表のいちばん最初に注目しよう。
正方形が \(1\) のとき、マッチ棒は \(4\) 。
そこでこんな式がつくれる。
あとは、このつじつまを合わせるために、■に入る数字を考える。
4.式を表す
■に入る数字は「\(1\)」。
よって答えは \(3n+1\) (本)。
注意点
以上3つの方法を紹介しました。
どの方法を使っても、規則性の問題はほぼ解くことができます。
ためしにどれかで、問②をやってみるといいでしょう。
解答および解法は、以下のとおりです。
なお、方法②における公式
これは高校2年生以上ならお気づきのとおり、等差数列の一般項を求める公式です。
初項 \(a\) 、公差 \(d\) の等差数列 \( \lbrace a_n \rbrace \) の一般項は
$$ a_n = a + (n-1)d $$
実は中1「文字と式」の規則性問題は、数学B「数列」の準備段階でもあるんです。
ただ、数列が等差数列だけではないように、規則性問題の中でもこの公式を使えないものがたまに出てきます。
そこで最後に、そんな例外的な問題の解き方・教え方も紹介します。
例外的な問題
先に結論を言うと、このような問題では方法②および方法③は使えません。
よって方法①に頼ることなります。
つまり図を分けて規則性をみつけ、変化する数と \(n\) との関係をがんばって見出すのです。
ただ問題によっては、「2乗が関係している」と気づきさえすれば、すぐに \(n\) を使った式で表せることもあります。
「2乗がある」とすぐわかる問題
この問題を、方法②または方法③で解こうとしてみましょう。
すると、表は下のようになります。
このように、「増えている数」が一定になりません。
この時点で、方法②も方法③も使えないというのがわかります。
では、どうすればいいか?
ここで立ち止まって、碁石の数をじっくり眺めてください。
何かに気づきませんか。
そう、すべて2乗した数になっているのです。
あとは変化する数と \(n\) との関係を考えます。
\(n\) が \(1\) のとき、\(2^2\) 。
\(n\) が \(2\) のとき、\(3^2\) 。
\(n\) が \(3\) のとき、\(4^2\) 。
じゃあ \(n\) のときは…、\( (n+1)^2 \) !
このように、2乗した数が出てきたら、\(n\) を使った式で表すのは難しくありません。
表をかいて、増えている数が一定じゃないときは、\(1,4,9,16,25,36,49 \ldots \) などの数が出てきてないか注意するといいでしょう。
そうじゃない問題
最後にこの問④を解いてみましょう。
これも方法②または方法③でいこうとして表をかくと、以下のようになります。
この問題もやはり、「増えている数」が一定になりません。
そして、\(1,4,9,16,\ldots \) といった2乗の数さえ出てこないのです。
こうなったら、方法①で解くしかありません。
つまり図を分けて規則性を見つけ、変化する数と \(n\) との関係を見出して式をつくるのです。
解答例は、以下のようになります。
こんな問題も、ごくたまに出てくることがあります。
なお、先に挙げた問③も、この方法①で解くと以下のとおりです。
方法①がいちばん応用範囲が広いというのは、こういうわけです。
だから最初にも言いましたが、規則性問題を解く際には、まず方法①(図を分けて規則性をみつける→変化する数と \(n\) との関係を見出す)を使おうとすること。
裏ワザ的な方法②(表をかいて規則性をみつける→公式を使って式を表す)や方法③(表をかいて規則性をみつける→つじつまを合わせて式を表す)は、まだ規則性問題に慣れないけど定期テストが迫っててヤバイ!ってときなどに使うこと。
あまり方法②や③ばかりに頼っていると、使える問題が8割程度に限られてしまいます。
とくに難関校への受験を考えている中学生は、方法①でできるかぎり押し通すべきでしょう。
生徒の状況に応じて、どの方法を薦めるかお考えください。
まとめ
規則性問題を解く方法は3つ。
【方法①…学校の教え方】
- 図を分けて考えて、規則性を見つける。
- ひとつひとつ式を書き出し、変化する数と \(n\) との関係を見出す。
- \(n\) を使った式で表す。
【方法②…裏ワザその1】
- 表を書いて、規則性を見つける。
- 公式「( \(n\) 番目の数)=(はじめの数)+(増えている数)×( \(n-1\) )」に当てはめる。
- \(n\) を使った式で表す。
【方法③…裏ワザその2】
- 表を書いて、規則性を見つける。
- つじつまを合わせて、「●\(n\) +■」の■に当てはまる数を探す。
- \(n\) を使った式で表す。
ただし、方法②、③が使えない問題もたまにある。
表を書いて、2乗した数が出てきたら、\(n\) を使って表すだけ。
2乗した数も出てこない場合は、方法①で解くしかない。
以上、中学1年数学「文字と式」における規則性の問題でした。
次回からは中1数学「一次方程式」の指導法について解説していく予定です。
(数学指導法の記事一覧はまとめページへ)
コメント
中1の息子がおります。私自身は学生時代数学が苦手だったので、もういちど一から勉強しなおすつもりで、息子と一緒に学習しています。じゅうごさんのブログはとてもわかりやすくて本当にありがたいです!ところで、こちらの規則性の問題の最後の竹ひごの問題ですが、息子は n(2n+2) と答えたのですが、これでは間違いでしょうか?ご教授いただけたら幸いです!
うれしいコメントありがとうございます。すこしでもお役に立てていたらさいわいです。
竹ひごの問題は、n(2n+2) でも正解です。
中3で因数分解を習ったあとならば 2n(n+1) と2をくくりだす必要がありますが、中1段階ならば間違っていません。
そのこと、書いていませんでした、失礼しました。息子さんをほめてあげてください。
お返事いただきありがとうございます!数学でつまずいてばかりの息子なので、これからもこちらのブログには親子でお世話になります!
方法①では、図を分けられるようになるか、が一番ハードルが高いと思います。
例えば、問②では、上に記載されているように、図の分け方は色々ありますが、
問①と同様に、「増えている部分に着目」する分け方もあるかと思います。
(例えば、2番目では、L字の2本×4か所=8本が増えたと考える)
このように、「増えている部分に着目」して図を分ける方法と、
上に記載されているように、縦棒・横棒に分ける方法と、
どちらを教えるのがよい、とかありますか?
それとも、分け方にこだわる必要はありませんか?
分け方はとくに教えていません。
方法1でいける能力の高い子には「規則性を自分で見つける楽しみ」みたいなものを味わってほしいので。
あと、規則性問題は難問になればなるほど「よくあるパターン」から外れていくように思います。
パターン学習の限界を思い知らされるような…なのでこの記事も「規則性問題の基本」と捉えていただければ…
ご回答ありがとうございました。
逆に言えば、方法1は、規則性を自分で見つけられるくらい能力が高い子向け、それが難しい子には、方法2,3で、ということですね。