前回の記事のつづきです。
今回は小学生のうちにしておくべき家庭学習の内容を3つだけ紹介します。
巷では小学生の家庭学習としてじつにいろんな内容が紹介されています。
これらに共通していえるのが、「中学・高校になっても高い学力を保てるように、小学生のうちからしておくべき内容はどれなのか」という視点が、あんまりないことです。
小学生の家庭学習の目的は、いちばんは学習習慣の定着です。
これはまちがいありません。
この意味でいえば、学習の内容はなんでもいいともいえます。
でもせっかくさせるのなら、中学・高校の勉強にもつながるような、本質的な部分をさせたほうがいい。
小学生のありあまる時間を、枝葉の些末な勉強ばかりに当てるのはもったいないです。
また、小学校のうちはよくできたけど、中学でふつうの子、高校になったらできない子。
こんなふうに子どもをしたくはありません。
そこで今回は、主要5科目それぞれの本質的な部分、つまりいちばん大事な力とはなんなのか?
そして中学・高校と進学しても上位層のままでいられるために、どんな家庭学習が効果的なのか?
この2点を解説していきます。
とくに小学校高学年の保護者の方にはぜひ参考にしていただきたい記事です。
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主要5科目それぞれのいちばん大事な力
まずは小学校・中学校・高校と通して、主要5科目でいちばん大事な力とはなんなのか、かいつまんで見ていきます。
国語でいちばん大事な力
小・中・高と通して、国語においていちばん大事な力は読解力です。
読解力とは、筆者の主張や、登場人物の心情をただしく理解する力です。
たとえば2017年度の東京都公立高校入試の国語問題で、読解力をためす問題は100点中80点ありました。
あとの20点は漢字のよみがなと書き取り問題です。
また2017年度のセンター試験では、読解力の問題が200点中143点ありました。
のこりは現代文の漢字10点、現代文の語彙9点、古文の文法5点、古文・漢文の語彙33点です。
高校入試、大学入試において、いかに読解力が大事な力であるかわかります。
読解問題は小学校のうちからよく出題されます。
よって小学生のうちから読解力を養うことが、いちばん大事な勉強といえます。
算数・数学でいちばん大事な力
算数・数学においていちばん大事な力は計算力です。
計算力とは、速く正確に(できれば暗算で)計算できる力です。
小学校で習う内容のうち、計算に関わる単元は3割ていどにすぎません。のこりの単元は図形と、変わり方(関数)と、表やグラフなど(統計)です。
しかし、中学になると計算に関わるものが7割以上に、高校では9割以上になります。
じっさい、2017年度の東京都公立高校入試の数学では、計算に関わる問題が100点中82点ありました。(ほかは確率5点、作図6点、図形の証明7点)
そしてセンター試験の数学において計算しない問題なんてありません。
よって、小学生のうちから高い計算力を養うことが、いちばん大事な勉強といえます。
(数学指導法の記事一覧は数学まとめページへ)
英語でいちばん大事な力
小・中・高を通して、英語でいちばん大事な力は語彙力です。
語彙力とはつまり、英単語をどれだけ知っているか、そしてどれだけ使いこなせるかという力のことです。
ご存じのとおり、2020年度から大学入試制度が変更になります。
くわしくは↑のリンク先記事で書いていますが、ライティング問題とスピーキング問題が追加されるので、生徒はより多くの語彙を持っていないと対応できなくなるでしょう。
また制度変更に先立って、すでに高校・大学入試では外部テストの導入がさかんです。
外部テスト一覧は↑とは別にこちらの記事でまとめていますが、どれを受けるにしても、語彙力は必要になるでしょう。
そして、2020年度からの新指導要領実施にともない、生徒のおぼえるべき英単語数は3000語から4000~5000語に増加します。
つまりこれからの子どもたちは、われわれよりも1.5倍ほど多い英単語を覚えなくちゃいけないんです。
英語の語彙力は4技能(聞く・話す・読む・書く)すべての基礎です。
よって小学生のうちから、英単語をたくさん勉強しておくことが、中学・高校の内容や受験につながっていくでしょう。
理科でいちばん大事な力
理科において大事な力は読解力と計算力です。
つまり教科書に何が書かれているのか正確に読み取る力と、問題から適切な数式をつくって計算する力が求められます。
小学校のうちは、理科における計算問題などほとんど出ないので、読解力があれば十分でしょう。
しかし中学から電気やイオン、湿度や遺伝、斜面をころがる台車の実験などで、計算が必要になります。
そして高校では物理・化学・生物・地学いずれにおいても、高い計算力がないと問題が解けなくなります。
よって、中学・高校と進学しても「理科ができる」生徒というのは、理科が好きであるというのはもちろんですが、読解力にくわえて計算力も備えていることが条件になります。
なので、小学生のうちに読解力と計算力を養う。
これが中学・高校にもつながる理科のいちばん大事な部分です。
(科学の記事一覧は科学まとめページへ)
社会でいちばん大事な力
社会において大事な力は読解力と記憶力です。
社会でもやはり教科書の内容を読み取る能力が必要ですし、くわえて社会では理科以上に「習った内容を思い出して正確に書ける力」が必要です。
小学校の社会では、4年で地域の暮らしを、5年で地理の導入を、6年で歴史の導入を習います。
都道府県名や歴史の年表など、とくに中学受験をする場合はおぼえることがけっこうありますが、それでも量は多くありません。
ところが中学になると、中1の最初から世界の大陸名や山脈・川の名前などをおぼえないと、定期テストで良い点を取れなくなります。
もちろん歴史のよりこまかい知識や、日本国憲法の条文なども暗記しなければいけません。
そして高校では世界史・日本史・地理・現代社会・倫理・政治経済という6分野ごとに、圧倒的な暗記量が必要になります。
よって、小学生のうちから「暗記して正確にアウトプットする」というトレーニングをすることが、社会を得意にするうえで大事な家庭学習だといえるでしょう。
(歴史の記事一覧は歴史まとめページへ)
どんな家庭学習をしたらいいのか
ここまで主要5科目における一番大事な力とは何かを見てきました。
まとめると、
- 国語:読解力
- 数学:計算力
- 英語:語彙力
- 理科:読解力と計算力
- 社会:読解力と記憶力
となります。
これらの力をつけるために、家庭ではどんな学習をすればいいのでしょうか?
いよいよ本題です。3つ紹介しますので、どれもぜひ参考にしてください。
読書と辞書引きで読解力を養う
1つめは「読書と辞書引き」です。
「1つじゃなくて2つやんけ!」なんて言わずに。これセットなんです。
つまり毎日読書をして、わからない言葉が出てきたら辞書を引くんです。
読解力を養うのに、読書は最適な方法です。
そこで学校の図書室や地域の図書館、書店などを利用して、小学生のわが子に最適な本をどんどん与えてあげましょう。
それを毎日すこしずつ、家庭学習として読んでいくんです。
*もちろん楽しみとして読んでも全然かまいません。なお家庭学習とする際には1日の読書量を「ページ数or章で区切る」か「時間で区切る」かのどちらかにするといいでしょう。くわしくは前回の記事を参照。
*「うちの子はそもそも本を読まない」という場合、絵本の読み聞かせからつなげていくと効果的です。子どもがみずから本を読むようになる方法も、またどこかで記事にするつもりです。
与える本のレベルとしては、現在の学年ではすこし難しいかなと思うくらいがいいでしょう。
難しい本にチャレンジすることで、子どもの世界が一気に広がり、読解力も飛躍的に高まります。
じっさい、小5でトルストイを読んでいた子、小3から夏目漱石にはまった子、小4で池波正太郎にふれて歴史好きとなった子などいました。
そして、レベルの高い本にはかならずわからない言葉が出てきます。
それを辞書で引いて調べるんです。
調べた言葉はノートに書き写すか、辞書に付箋を貼っておくといいでしょう。
この辞書引きによって日本語の語彙が増え、結果的に読解力向上にもつながります。
ちなみに与える辞書としては、子ども用のかんたんなものよりも、語彙の豊富な分厚いものがいい。
なぜなら「辞書を引いても載っていない」となると、子どもは辞書の有用性を疑うからです。
読書と辞書引きによって、小学生のわが子の読解力を育ててあげてください。
タイムアタックで計算力を養う
2つめは「タイムアタックで計算」です。
つまり時間を計って、よーいドンで、できるだけ速く計算問題を解いていかせるんです。
時間を計るのは、計算のスピードを養うためです。
これは計算スピードが速くないと、中学・高校の数学テストで太刀打ちできないからです。
何度も例を出してすみませんが、2017年度の東京都公立高校入試で、数学問題の最初の6問は以下のとおりでした。
これ、あとの問題のことも考えると、2分前後で解かないと間に合いません。
いかに計算スピードが大切か、わかると思います。
では実際にどんな計算問題をさせるかですが、その子にとって難しすぎず、易しすぎず、ちょうどいいレベルのものを選ぶといいでしょう。
子どもが100%集中したときにはじめてスラスラ解ける問題、といってもいいかもしれません。
そしてそのような問題であれば、ドリルでも、問題集でも、通信教育の教材でも、なんでもいいです。
教科書の巻末問題や、親が自作した手作りプリントでもかまいません。
大切なのは「100%集中してはじめてスラスラ解けるレベル」の問題であることです。
そうした問題を、時間を計って、毎日すこしずつ解かせてみてください。
もちろん正確さも身につけるために、採点をして、まちがえた問題はやりなおしさせます。
このようにして、小学生のわが子の計算力を養っていきましょう。
英単語の暗記で語彙力と記憶力を養う
最後の3つめは「英単語の暗記」です。
暗記の具体的な方法については次の記事で解説しますが、とにかく小学生のうちから英単語をすこしずつおぼえる練習をすることが肝心です。
なぜなら、英単語をたくさん知って使いこなせることが、長文読解にも、英作文にも、リスニングにも、スピーキングにもつながるからです。
また、2020年度からの新学習指導要領によって、覚えるべき英単語数が約1.5倍に増えるというのも理由のひとつです。
いま小学生は3年生から「Let’s Try!」という冊子を学校でもらいます。
この「Let’s Try!」に出てくる英単語を、毎日2つ、3つからでかまいません、暗記する練習をしましょう。
そしてできれば小学生のうちに、通う予定の中学校の教科書を入手して、おなじように英単語をおぼえておくといいでしょう。
これが先取り学習となり、中学以降の授業理解や定期テストの点数につながります。
各地域で教科書を購入するには、こちらのサイト↓の情報を活用してください。
ただ、英語に興味のない子がいきなり英単語をおぼえろと言われても、かならずイヤがります。
そこでまずは英語に興味をもってもらうことが先決。
どう興味をもたせるかは以下の記事でくわしく書きました。ご参考ください。
英語のできる子の親は「7つの方法」で興味を持たせていた。ぜんぶ話そうと思う。
英単語をすすんでおぼえることで、語彙力をすこしずつ養ってください。
まとめ
主要5科目においていちばん大事な力は以下のとおり。
- 国語:読解力
- 数学:計算力
- 英語:語彙力
- 理科:読解力と計算力
- 社会:読解力と記憶力
これらの力をつけるために、小学生のうちから家庭学習でおこなうべき内容は以下の3つ。
- 読書と辞書引き
- タイムアタックで計算
- 英単語の暗記
「わが子に何をさせていいかわからない」
「あれこれさせすぎたから、家庭学習の内容をしぼろうと思っている」
そんな親御さんはぜひ以上の記事を参考にしてください。
次回では、最後のほうで触れた「暗記の具体的な方法」について解説します。
それにつづいて、今度は「集中力を養う方法」「作業力を養う方法」も解説する予定です。
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