2020年度から新指導要領が実施されます。
移行措置は2018年度からはじまるので、地域や学校によっては来年度からあたらしい指導要領による授業がはじまります。
今回の新指導要領の目玉はなんといっても英語。
小学校、中学校、高校とそれぞれで英語の授業がかなり変更となります。
とくに小学校での変更はたくさんあります。
そこで現在(2017年4月)文部科学省から発表されている資料をもとに、学校における英語教育がどう変わるのか、具体的にまとめてみました。
*2019年7月時点での最新情報を追記しました。
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小学校での変更点
まずは小学校における変更点です。
小3から「外国語活動」が必修化
2020年度より、小学3年生から英語(正確には外国語活動)の授業が導入されます。
現行では小5から英語がはじまるので、2学年ほど前倒しとなるかっこうですね。
内容は「聞く」「話す」などのコミュニケーションが中心です。
読み書きの学習は小3、小4のうちはまだおこなわれません。
必修化といっても英語が教科になるわけではないので、成績はつけられません。
また全国一律の教科書もないので、各自治体や学校、教師の工夫によっていろんな教材が使われていくでしょう。
ただ文部科学省は現在、「Hi, friends」という英語ノートを「参考」として全国の学校に配布しています。
おそらくこの英語ノートの改訂版が、おおくの学校で使われるようになると思います。
*改訂版は「Let’s Try!」というタイトルで、2018年度から使われています。
「Let’s Try!」は2020年度以降もそのまま使われていく見込みです。
小5から「外国語活動」が教科化
小学5年生からは英語(正確には外国語活動)が「教科」となります。
つまり、全国一律の教科書がくばられて、成績もつけられるようになります。
内容は「聞く」「話す」に加えて、「読む」「書く」という学習も入ってきます。
最初はアルファベットの読み書きからはじまって、身近な単語や国の名前、最終的にはかんたんな英文まで読んで書くようになります。
なぜ小5から読み書きをさせるかというと、中学以降の学習にスムーズにつなげるためです。
現行の指導要領では、小学校で読み書きがありません。せっかく小学校から英語を学んでいるのに、中学校で急に読み書きがはじまってとまどう生徒も多いんですね。
また文部科学省によると、「小学生のうちに読み書きも一緒に学びたかった」と回答する生徒も多いそうです。それで小5から読み書きの学習もあわせて開始されることになりました。
こうした小学校英語での「読み」「書き」の導入は、おそらく英語入試における4技能改革とも連動しているのでしょう。
*2019年現在、小5・小6の教科書は「We Can!」というものが使われています。
過去形の不規則変化動詞や、He,Sheが主語の文も登場して、以前より盛りだくさんの内容。
子どもたちは抵抗なく、スムーズに学習している子が多いようです。
2020年度の新指導要領本格実施からは、「We Can!」ではなく、教科書検定に通った新たな教科書が複数流通していくでしょう。
英語のぶんだけ授業時間が増える
こうした変更によって、小3~小6では授業時間が年間35単位時間ほど増えます(1単位時間=45分)。
つまり小3と小4では外国語活動のために、35単位時間がまるまる追加されます。
また小5と小6では、外国語活動は現在35単位時間ですが、これに35単位時間をくわえて合計70単位時間となります。
「どこかほかの教科の時間をけずって英語にまわす」ではないんですね。
ほかの教科はそのままで、英語のためだけに年間35時間増えることになるんです。
これは1週間に1コマ増える計算になります。
え?どうすんの?
「半ドン」が復活するかも?
文部科学省は現在、「時間割はこうしなさい」とは一言も言いません。
「アドバイスはするから、学校ごとに工夫してね」というスタンスです。
文部科学省のアドバイスによると、以下のような工夫から選んでくれとのことです。
- 15分授業を週3回する(朝とか放課後とか空き時間に)
- 単純にコマ数を増やす
- 英語の授業だけ60分授業にする(でもこれだけじゃカバーしきれないけど…)
- 夏休みなどの長期休みを利用する
- 土曜日を活用する
こうした工夫のうち、1つか2つ以上をくみあわせて時間割が組まれることになります。
おそらく自治体や学校によって変わってくるでしょう。
どれが採用されるとしても、子どもたちにとっては、帰宅する時間が遅くなるか、休みが減ることになりそうです。
*案の定、2018年・2019年と半ドンの復活した自治体が多くみられました。
あと今年(2019年)はGWが長かったので、「夏休みの開始を遅らせる」小学校も多いみたいですね。
2020年度以降、半ドン復活はさらに多くなるのではないでしょうか。
中学・高校での変更点
つぎに中学・高校における英語教育の変更点をみていきます。
授業はぜんぶ英語でおこなわれる
「授業を英語で行うことを基本とする」というのが文部科学省の発表です。
よって2020年度からは、先生の指示も、生徒の発表も、先生と生徒との会話も、ぜんぶ英語でおこなわることになります。
「鈴木先生、ジュウゴ君がいねむりしています」
「ジュウゴ、授業中にいねむりすんな!」
なんてもう言えません。
「Mr.Suzuki, Jugo is sleeping.」
「Jugo! Do not nod off in class!」
と言わなきゃいけません。先生も生徒もたいへんそう…。
*2018年・2019年とすでに、いわゆる「オールイングリッシュ」の授業をする学校が増えてきました。
そのせいかどうなのか、ここ2年、「文法がわからなくて」と言ってやって来る中学生がけっこういます。
文法をていねいに積み上げれば数か月で30点台→70,80点台とみんな伸びますが、中学生全体の実態はどうなんでしょう?
学校の先生に訪ねてみたいところです……。
「聞く」「話す」学習が増える
小学校とは逆ですね。
とくに中学・高校では「やりとり」や「発表」といった、英語をつかって考えを伝えるという学習が増える予定です。
となりどうしで比較級をつかって会話したり、「学校に自販機を設置することについてどう思うか」を英語でディベートしたり、などの授業が増えてくるでしょう。
さきほどの「授業はぜんぶ英語」とも関係してきますが、いままでの日本の英語教育は「文法ばかりで聞けない・話せない」と批判されてきました。
そこで「聞く」「話す」分野の学習を増やすことで、「読む」「書く」とあわせた4分野の技能をバランスよく高めていこうというのが、今回の改訂のおおきな特徴です。
センター試験に代わる「大学入学共通テスト」で、4技能外部試験が併用されるのも、やはりそうした狙いでしょう。
→英語改革で受験はこう変わる③ 大学入学共通テストとは何か?
*2019年現在、ALT導入の学校が増えた印象を受けます。
生徒の反応は2つに分かれてます。
おもしろい!という子と、なんかあのノリについていけないという子。
どっちもわかるぞー。
到達目標はおおきくレベルアップ
そして今回の改訂では、生徒が身につけるべき英語力もより高くなりました。
高校卒業時の到達レベルと、おぼえるべき単語数の2点について、指導要領の改訂前と後とでくらべてみましょう。
文部科学省が発表している到達目標を表にすると、上のようになります。
とくに単語数は1000~2000語も増えることになります。
ちなみに授業時間数は変わりません。
ということは、1日当たりの学習量が増えるということです。
復習に時間がかかりそう…。
*2018年・2019年になって、進学校ほど、毎週の英単語テストが増えた気がします。
とくに偏差値60以上の高校で顕著。
一週間におぼえるべき単語数が「12」→「16」と増えたので、生徒たちはそれぞれ工夫してがんばっています。
英語学習のウェイトがますます大きくなる
以上、新指導要領で小・中・高の英語はどう変わるのかをみてきました。
結論を一言でいえば、英語の学習がますますおおきなウェイトを占めてくることはまちがいありません。
学校での授業はもちろん、家庭学習においても英語をよりたくさん勉強しないといけなくなるでしょう。そうしないと授業についていけないですからね。
では、こうした変化によって受験はどう変わるのか?
そして、どんな英語教育を子どもに受けさせたらいいのか?
これらの点について、次回以降解説していきます。
コメント
[…] そして、2020年度からの新指導要領実施にともない、生徒のおぼえるべき英単語数は3000語から4000~5000語に増加します。 […]