中2数学「連立方程式」の教え方、3回目です。
今回は代入法の教え方。
ここでつまずいている中学生にどう教えたらいいか、具体的な指導方法を載せるので参考にしてください。
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前回までの記事の復習
いちおう、前回までのかんたんな復習をしておきます。
そのためにはムダな指導をすべて省いて、
- まず解き方をぜんぶ示す
- 何をしたのか、解説する
- 解答を正確に書き写させる
- 類題を一緒に解く
という教え方が効果的。
また、指導上の注意点として、
- ちゃんと書き写せているか手元を見る
- 一緒に解く際には発問して生徒に考えさせる
- 答えの確かめを示す
などがありました。
そして、連立方程式の指導順は
- 復習をする(1次方程式、代入、式の加減)
- 連立方程式とは何かの説明
- 加減法の導入(たし算)
- 加減法の導入(ひき算)
- 加減法つづき(一方だけ係数をそろえる)
- 加減法つづき(両方とも係数をそろえる)
- 加減法まとめ
という7段階が、導入から加減法まででした。
今回はその続きとして、
- 代入法の導入(\(y=\)単項式)
- 代入法の導入(\(x=\)単項式)
- 代入法つづき(多項式の場合)
- 代入法の発展とまとめ
という4段階を、以下、くわしく解説していきます。
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代入法の導入(\(y=\)単項式)
さて、前回まで加減法という解き方を習ってきた。
しかし連立方程式には、もうひとつ解き方がある。
それが「代入法」だ。
解答を示してから、解説
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} y = 2x \ \large{\mbox{…①}} \\ 3x+y = 5 \ \large{\mbox{…②}} \end{array} \right.\end{eqnarray}
この連立方程式の問題、①が \(y=2x\) の形になっている。
つまり \(y\) の正体は \(2x\) と言っている。
じゃ、②式の \(y\) のところ、代わりに \(2x\) にしてもいいよね。
つまり②式に \(y=2x\) を代入できるよね。
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} y = 2x \ \large{\mbox{…①}} \\ 3x+y = 5 \ \large{\mbox{…②}} \end{array} \right.\end{eqnarray}
①を②に代入して
\begin{eqnarray} 3x+2x &=& 5 \\ 5x &=& 5 \\ x &=& 1 \ \large{\mbox{…③}}\end{eqnarray}
③を①に代入して
$$ y=2 $$
答.\(x=1 , y=2\)
何をしたかわかるね。
ようするに、\(y=\)■(または \(x=\)■ )という形がどっちかにあれば、その■をもう一方の式に代入する。
そうしたら文字は1種類だけになるから、それを解く。
あとは加減法のときと同じ。
これが代入法の解き方だ。
書き写させてから、類題
理解したら、書き写そう。
書き写すときの注意点は加減法のときと同じ。
- どんな計算をしたのか、ことばを必ず書く。
- 式どうしの筆算のときや方程式を解くとき、=を縦にそろえるときれい。
- 答えの形は教科書によっては \((x,y)=(1,2)\) などの場合もある。学校に従うこと。
何よりも、人に見せてもわかりやすい解答を書くことが大事やで。
書き写せたら、類題を解いてみよう。
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 5x-y=-2 \\ y=4x \end{array} \right.\end{eqnarray}
(解答は\(x=-2,y=-8\) )
(めんどいので途中式省略。生徒は必ず書くこと)
代入法の導入(\(x=\)単項式)
もちろん、\(y=\)●の形ばかりじゃない。
\(x=\)●の形もあるぞ。
解答を示してから、解説
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 2x-7y=6 \ \large{\mbox{…①}} \\ x=5y \ \large{\mbox{…②}} \end{array} \right.\end{eqnarray}
これはこう解きます。
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 2x-7y=6 \ \large{\mbox{…①}} \\ x=5y \ \large{\mbox{…②}} \end{array} \right.\end{eqnarray}
②を①に代入して
\begin{eqnarray} 10y-7y &=& 6 \\ 3y &=& 6 \\ y &=& 2 \ \large{\mbox{…③}}\end{eqnarray}
③を②に代入して
$$ x=10 $$
答.\(x=10 , y=2\)
つまり、\(2x-7y=6\) の \(x\) を \(5y\) に入れかえたんだ。
ここで注意せなあかんのは、\(2\) と \(x\) ってかけ算でつながってるってこと。
だから代入したら \(2 \times 5y\) で、先頭は \(10y\) になる。
たまに足し算と勘違いする人がいるから、気をつけて。
書き写させてから、類題
もうひとつ、書き写しながら聞いてくれ。
学校によっては、こう書く先生もいる↓
②を①に代入して
\begin{eqnarray} 2 \times 5y -7y &=& 6 \\ 10y-7y &=& 6 \\ 3y &=& 6 \\ y &=& 2 \ \large{\mbox{…③}}\end{eqnarray}
最初の一行目、必要だと思う?
うん、おれもいらないと思う。
暗算でいけるやん。
つまり代入するのが単項式なら、かけ算は暗算でやってしまえばいいんだ。
一行目を書くことでよけいにごちゃごちゃするからね。
…では、類題。
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x=-2y \\ 3x+y=5 \end{array} \right.\end{eqnarray}
(解答は\(x=2,y=-1\) )
>Amazonプライム・ビデオ『奇蹟がくれた数式(字幕版)』
代入法つづき(多項式の場合)
つづいて、多項式を代入する場合。
解答を示してから、解説
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 8x-3y=9 \ \large{\mbox{…①}} \\ y=2x-1 \ \large{\mbox{…②}} \end{array} \right.\end{eqnarray}
こんな問題のように、多項式を代入する場合は、代入したあとの式をちゃんと書いたほうがいい。
このように↓
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 8x-3y=9 \ \large{\mbox{…①}} \\ y=2x-1 \ \large{\mbox{…②}} \end{array} \right.\end{eqnarray}
②を①に代入して
\begin{eqnarray} 8x-3(2x-1) &=& 9 \\ 8x-6x+3 &=& 9 \\ 2x &=& 6 \\ x &=& 3 \ \large{\mbox{…③}}\end{eqnarray}
③を②に代入して
\begin{eqnarray} y &=& 6-1 \\ y &=& 5 \end{eqnarray}
答.\(x=3 , y=5\)
つまり多項式を代入する際には、かっこをつけてあげること。
これがポイント。
書き写させてから、類題
たまーに、10人に1人くらい、多項式を代入するときにも暗算でやろうとする中学生がいる。
つまり \(8x-3(2x-1) = 9\) を書かずに
いきなり \(8x-6x+3 = 9\) と書こうとする人。
そういう生徒はだいたい \(8x-6x-3 = 9\) と間違えます。
だから数学の偏差値が70以下の生徒は、かっこをつけて代入した式を書くべきです。
もしあなたが、あるいは今教えている生徒が、全国模試でトップ層の成績なら、暗算でやってもよしとしましょう。
それ以外の生徒はちゃんとかっこを書きましょう。
…では、類題。
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 2x-3y=5 \\ x=2y+4 \end{array} \right.\end{eqnarray}
(解答は\(x=-2,y=-3\) )
代入法の発展とまとめ
最後に、代入法の発展問題を紹介します。
代入法の発展問題
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 3x+2y=17 \\ 2y=x+5 \end{array} \right.\end{eqnarray}
この連立方程式を代入法で解け、と言われたら、解き方は2つある。
解答1)
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 3x+2y=17 \ \large{\mbox{…①}} \\ 2y=x+5 \ \large{\mbox{…②}} \end{array} \right.\end{eqnarray}
②より
\begin{eqnarray} -x &=& -2y+5 \\ x &=& 2y-5 \ \large{\mbox{…②’}}\end{eqnarray}
②’を①に代入して
\begin{eqnarray} 3(2y-5)+2y &=& 17 \\ 6y-15+2y &=& 17 \\ 8y &=& 32 \\ y &=& 4 \ \large{\mbox{…③}}\end{eqnarray}
③を②’に代入して
\begin{eqnarray} x &=& 8-5 \\ x &=& 3 \end{eqnarray}
答.\(x=3 , y=4\)
この解き方は、②式をムリヤリ \(x=\)~ の形に変形してから代入したものです。
①式②式を見たときに、係数が1の文字が②の \(x\) だけだったので、そうしました。
こんなやり方もある、ということね。
んで、もうひとつの解き方はこう↓
解答2)
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 3x+2y=17 \ \large{\mbox{…①}} \\ 2y=x+5 \ \large{\mbox{…②}} \end{array} \right.\end{eqnarray}
②を①に代入して
\begin{eqnarray} 3x+(x+5) &=& 17 \\ 3x+x+5 &=& 17 \\ 4x &=& 12 \\ x &=& 3 \ \large{\mbox{…③}}\end{eqnarray}
③を②に代入して
\begin{eqnarray} 2y &=& 3+5 \\ 2y &=& 8 \\ y &=& 4 \end{eqnarray}
答.\(x=3 , y=4\)
この解き方は、\(2y\) の代わりに \(x+5\) をそのまま放りこんだものです。
①式に \(+2y\) があって、②式が \(2y=\)~ の形だったから、たまたまうまくいった。
こんな問題のように、たまたまうまくいく場合もある。
連立方程式を解くときは、まず問題の形をよく観察すること。
そしてどの方法で解けばいちばんラクできるかと、悩むこと。
こういう考え方を常にするようになると、連立方程式を解くのが得意になります。
まとめ
以上、代入法の解き方でした。
まとめると、
- \(y=\)~ , \(x=\)~ の形があったら代入して解けばいい。
- ~部分が多項式の場合は、かっこをつけて代入すること。
- \(y=\)~ , \(x=\)~ の形に変形してもっていけば、代入法は使える。
- たまに \(2y=\)~ 等のままでうまく代入できる場合がある。問題をよく見ること。
という4点がコツです。
[連立方程式の記事一覧↓]
さて、ここまでで連立方程式の解き方は「加減法」「代入法」と両方出そろった。
では仕上げに、以下の連立方程式を、加減法と代入法、両方の解き方で解いてみよう。
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 3x+2y=-1 \\ x-3y=-15 \end{array} \right.\end{eqnarray}
加減法)
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 3x+2y=-1 \ \large{\mbox{…①}} \\ x-3y=-15 \ \large{\mbox{…②}} \end{array} \right.\end{eqnarray}
②×3をして
$$ 3x-9y=-45 \ \large{\mbox{…②’}}$$
①-②’をして
\begin{eqnarray} 3x+2y &=& -1 \\ -) \ 3x-9y &=& -45 \\ \hline 11y &=& 44 \\ y &=& 4 \ \large{\mbox{…③}} \end{eqnarray}
③を②に代入して
\begin{eqnarray} x-12 &=& -15 \\ x &=& -3 \end{eqnarray}
答.\(x=-3 , y=4\)
代入法)
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 3x+2y=-1 \ \large{\mbox{…①}} \\ x-3y=-15 \ \large{\mbox{…②}} \end{array} \right.\end{eqnarray}
②より
\begin{eqnarray} x=3y-15 \ \large{\mbox{…②’}}\end{eqnarray}
②’を①に代入して
\begin{eqnarray} 3(3y-15)+2y &=& -1 \\ 9y-45+2y &=& -1 \\ 11y&=&44 \\ y&=&4 \ \large{\mbox{…③}}\end{eqnarray}
③を②’に代入して
\begin{eqnarray} x &=& 12-15 \\ x &=& -3 \end{eqnarray}
答.\(x=-3 , y=4\)
あなたはどっちの解き方がいいと思う?
加減法?それとも代入法?
そう思った理由は?
連立方程式に限らずだけど、つねにこういう思考を頭の中でするといい。
もういちど言う。
連立方程式を解くときは、まず問題の形をよく観察すること。
そしてどの方法で解けばいちばんラクできるかと、悩むこと。
次回の応用問題でも、この心がけを忘れないように。
コメント
最後の一文、
そしてどの方法で解けばいちばんラクできるかと、悩むこと。
大切ですね。
悩むか悩まないかで差がつくように思います。