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中学数学「等式の変形」でつまずく原因と、効果的な教え方

投稿日:2019年7月29日 更新日:

中学数学の教え方について、具体的に解説するこの連載。

今回は中2数学「等式の変形」です。

やり方を示しても、自力ではできない…。

分数まじりの難問になると、解き方の順番がめちゃくちゃ…。

なぜこうなるの?わからないと言ってくる…。

こういう中学生はどこでつまずいているのか、そしてどんな指導が効果的なのか。千人以上の指導経験をもとに解説していきます。

[前の記事]「式による説明」のコツと練習問題

[次の記事]「連立方程式」の導入と注意点

(数学指導法の記事一覧はまとめページへ)

「等式の変形」でつまずく3つの原因

まずは「等式の変形」で中学生がつまずく原因から。

生徒たちの誤答でいちばん多いのは、この図のようなミスです↑。

なぜこんなミスをしてしまうのか?

「移項」と「係数を1にする」が頭のなかでごっちゃになっているからです。

1.「移項」と「係数を1にする」がごっちゃ

\begin{eqnarray} xy &=& 7 \quad \mbox{[y]} \\ y &=& \frac{7}{x} \end{eqnarray}

\begin{eqnarray} x+y &=& 7 \quad \mbox{[y]} \\ y &=& 7-x \end{eqnarray}

この2つを区別できない。

これが「等式の変形」で中学2年生がつまずく原因のひとつです。

なぜ中2にもなって「移項」と「係数を1にする」という操作が区別できないんだ!? 大人はそう思うかもしれませんが、ちゃんと理由があります。

1次方程式の導入の指導案でも書きましたが、そもそも学校の指導の順番が「移項」と「係数を1にする」をごっちゃにしているからです。なので、中1のときに1次方程式の計算をなんとなーくで乗り切った子は、中2「等式の変形」になって弱点を露呈するんですね。

 

したがって、こういう中学生に対しては、

  • 両辺に項が1つずつ→項が2つ以上 という順番で問題に習熟させる
  • そのときどきで1次方程式の解き方を示し、比較しながら進める

という指導が効果的です。

具体的な教え方は後でくわしく解説します。

[関連記事]
中1「1次方程式」でつまずく原因と解決法① 導入

中1「1次方程式」でつまずく原因と解決法② 移項と基本の計算

 

2.「逆数をかける」で統一されてない

つまずく原因はあと2つあります。

そのうちひとつは、係数を1にする方法が「両辺に逆数をかける」と頭のなかで統一されていないこと。

つまり \(xy=7 \ \mbox{[y]} \) の係数 \(x\) をなくす方法は、

両辺に \( \frac{1}{x} \) をかける、じゃなくて

両辺を \(x\) で割る で覚えてしまっていること。

これが等式の変形でつまずく2番目の原因なんです。

えーどっちでもいいじゃん、些細なことだろ、と思われるかもしれませんが、「両辺を割る」で覚えている生徒は以下のようなミスをよくします。

\begin{eqnarray} ab &=& \frac{4}{3} \quad \mbox{[b]} \\ b &=& \frac{4a}{3} \end{eqnarray}

これ、「両辺に \( \frac{1}{a} \) をかける」で覚えていれば、防げるミスです。

よって指導においては、

  • 係数をなくすには両辺に逆数をかける、で統一する
  • 「割る」「割り算」という言葉は使わない

という注意をすると効果的です。

実際の教え方はこれも後でくわしく解説します。

 

3.文字だらけの答えでいいのか不安

つまずく原因の最後は、出た答えが文字だらけで、これで本当に解答としていいのか不安というやつです。

正答が出たのに、その答えをじーっと見て固まっている…。

難しい顔をしたあと、その正答を消してまたやり直す…。

やり直しの計算も途中で止まって、結局「わからない」と言ってくる…。

こんな中学生がこれに当たります。

よって、こういう生徒には、

  • 「これでいいのだ!」とハッキリ伝える
  • 等式変形がこのあと数学でどのように活きるのか、ちょっと見せる

という指導が効果的です。

とくに2つめについては記事の最後にいくつか例を載せるので、参考にしてください。

 

  1. 「移項」と「係数を1にする」がごっちゃ
  2. 係数をなくす方法が「逆数をかける」で統一されていない
  3. 文字だらけの答えでいいのか不安

以上3つの原因をすべて解消する指導案を、これから紹介します。

「等式の変形」を指導するすべての方に、参考にしていただければと思います。

 

指導案①:項が1コずつ

まずは、項が左辺と右辺に1コずつの問題から指導します。

ちなみに「○について解け」とは「○=~」の形に変形すること、と最初に伝えるのは忘れずに。

基本問題

例1)次の等式を、[ ]内の文字について解け。

$$ \mbox{(1)} \ 3x=y \quad \mbox{[x]} \qquad \mbox{(2)} \ 2a=5b \quad \mbox{[b]} $$

まず中1の1次方程式を復習しよう。

たとえば

$$ 3x=7 $$

という1次方程式を解くには、両辺に \( \frac{1}{3} \) をかけて

$$ x= \frac{7}{3} $$

としたね。

同じように(1)も、\(3x=y\) の左辺から \(3\) という係数を取っぱらって \(x=\)~ の形にするんだから、両辺に \( \frac{1}{3} \) をかければいい。

\begin{eqnarray} \mbox{(1)} \ 3x &=& y \quad \mbox{[x]} \\ x &=& \frac{y}{3} \end{eqnarray}

 

(2)はどうだろう。

たとえば \(2=5x\) という1次方程式はこう解いたよね↓

$$ 2=5x $$

左辺と右辺を入れかえて

$$ 5x=2 $$

両辺に \( \frac{1}{5}\) をかけて

$$ x= \frac{2}{5}$$

だから、やりかたは同じだ。

\begin{eqnarray} \mbox{(2)} \ 2a &=& 5b \quad \mbox{[b]} \\ 5b &=& 2a \\ b &=& \frac{2a}{5} \end{eqnarray}

わかったら、自分でもういちど解いてごらん。

 

応用問題

例2)次の等式を、[ ]内の文字について解け。

$$ \mbox{(1)} \ cd=4 \quad \mbox{[d]} \qquad \mbox{(2)} \ cd=\frac{4}{3} \quad \mbox{[d]} $$

(1)の等式を「\(d=\)~」の形にしたい。

両辺に、何をかければいい?

そう、\(\frac{1}{c}\) だ。

\begin{eqnarray} \mbox{(1)} \ cd &=& 4 \quad \mbox{[d]} \\ d &=& \frac{4}{c} \end{eqnarray}

 

(2)はわかる?

わからないなら、以下の1次方程式の解き方を見て。

$$7x=\frac{4}{3}$$

両辺に \(\frac{1}{7}\) をかけて

$$x=\frac{4}{21}$$

…もう、できるね?

\begin{eqnarray} \mbox{(2)} \ cd &=& \frac{4}{3} \quad \mbox{[d]} \\ d &=& \frac{4}{3c} \end{eqnarray}

わかったら、自分でもういちど解いてごらん。

 

発展問題

例3)次の等式を、[ ]内の文字について解け。

$$ \mbox{(1)} \ \frac{x}{6}=yz \quad \mbox{[x]} \qquad \mbox{(2)} \ a=\frac{c}{b} \quad \mbox{[c]} $$

たとえば、以下の1次方程式はこう解いた。

$$ \frac{x}{6}=8$$

両辺に \(6\) をかけて

$$x=48$$

(1)も同じようにやればいい。

\begin{eqnarray} \mbox{(1)} \ \frac{x}{6} &=& yz\quad \mbox{[x]} \\ x &=& 6yz \end{eqnarray}

 

(2)はもう自力でわかるかな。

\begin{eqnarray} \mbox{(2)} \ a &=& \frac{c}{b} \quad \mbox{[c]} \\ \frac{c}{b} &=& a \\ c &=& ab \end{eqnarray}

最後、両辺に \(b\) をかければいいね。

わかったら、自分でもういちど解いてごらん。

 

難問

例4)次の等式を、[ ]内の文字について解け。

$$ \mbox{(1)} \ S=\frac{1}{2}ah \quad \mbox{[h]} \qquad \mbox{(2)} \ V=\frac{4}{3}\pi r^3 \quad [\pi] $$

いままでの知識を使って、等式の変形でよく出る難問にチャレンジしよう。

(1)から、ていねいに行くよ。

$$S=\frac{1}{2}ah \quad \mbox{[h]}$$

左辺と右辺を入れかえて

$$\frac{1}{2}ah=S$$

両辺に \(2\) をかけて

$$ah=2S$$

両辺に \(\frac{1}{a}\) をかけて

$$h=\frac{2S}{a}$$

つづいて(2)。「\(\pi =\) ~」の形に変形するよ。

$$V=\frac{4}{3}\pi r^3 \quad [\pi] $$

左辺と右辺を入れかえて

$$\frac{4}{3}\pi r^3=V$$

両辺に \( \frac{3}{4}\) をかけて

$$ \pi r^3=\frac{3V}{4}$$

両辺に \( \frac{1}{r^3}\) をかけて

$$ \pi= \frac{3V}{4r^3}$$

\(\frac{4}{3}\) という係数を取っぱらうには、逆数である \(\frac{3}{4}\) を両辺にかければよかったね。

では、再度自分でやったら、類題をたくさん解いて「わかる」を「できる」にしていくこと。

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管理人の重悟(ジュウゴ)です。
30代、ライター兼ブロガー兼講師。

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