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歴史

フェミニズムは「家族」を解体する道具だった

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フェミニズムの連載、最終回です。

今回は1970年代から今日までの約50年間、フェミニズムが家族を解体する道具として使われてきた歴史を見ていきます。

誰がフェミニズムをそのように利用したのか?

市場です。あるいは資本主義です。

ではなぜ市場・資本主義は家族を解体したかったのか?

女性の家庭内労働を消費に置き換えるためでした。

戦後の資本主義の歴史

ヨーロッパの歴史の流れ2の記事でも書きましたが、近代以降のこの世界の権力者は資本家(金持ち)です。

金持ちが帝国主義を推し進め、金持ちが国連の政策を誘導し、金持ちがアベノミクスをさせています。

よって第二次大戦後の世界の歴史も、金持ちの視点でみるとわかりやすくなります。

まずは、資本主義が家族を解体しはじめた経緯から見ていきましょう。

ブレトン=ウッズ国際経済体制

第二次世界大戦の惨禍によって、金持ちたちは学びます。

戦争は割にあわないと。

だからこれからもっとカネを稼ぐには、安定と平和がなによりも必要でした。

そこで国際通貨基金(IMF)をつくり、まず為替相場を安定させました。

またGATTによって自由貿易を推進し、世界の平和を目指しました。

こうした安定と平和を図る世界体制を「ブレトン=ウッズ国際経済体制(1945~1973)」と呼びます。

 

この時期、世界の金持ちたちにとっては安定と平和がなによりカネ儲けにつながったので、国内での社会保障の充実や労働組合の設立もOKでした。

また各国の経済成長も、購買力がアップしてくれるから大歓迎でした。

こうしてアメリカはじめ西ヨーロッパや日本などが次々と高度経済成長を達成していきます。

しかし、1960年代も後半をむかえると、各国の市場はひととおり飽和してしまいました。

もっとカネを儲けたい、なのに先進国ではもう売れない……。

ここで金持ちは考えます。

ならば、いままで手をつけてこなかった諸々の制度を解体しよう。

そうすることでさらなる利益を生み出そう、と。

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新自由主義

まずドル=ショック(1971年)からオイル=ショック(1973年)の時期に、為替を固定相場制から変動相場制へと移行させました。

これにより、金融をあつかう金持ちたちにとって、為替で儲けるすべが開かれました。

またレーガンやサッチャーや中曽根や小泉らに、国営企業を民営化させました。

これにより、NTTやJRや日本郵政へ投資して儲けるすべも開かれました。

ついでに外国資本の受け入れも規制緩和させて、カネ儲けのチャンスがあれば国境をこえてすぐ行えるようにもしました。

こうした「小さな政府」を推進し、市場原理と個人の自己責任を強調する考え方を「新自由主義」といいます。

 

そして資本家がもうひとつ目をつけたのは、女性という存在でした。

なぜなら女性が家庭内でおこなう家事・育児・介護などは、1970年代でもなお、資本主義に参加していなかったからです。

つまりそれらの家庭内労働はすべて無償で行われ、資本主義のルールから外れた聖域とされていたのです。

ここに資本主義を導入しよう。

そうすればもっと家電が売れる、保育所が儲かる、介護事業が盛んになる……。

金持ちはそう考えました。

しかし、そこに立ちはだかる邪魔者がいました。

家族です。

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資本主義にとって邪魔な「家族」

1970年以前に妻を経験した女性、つまり現在(2019年)75歳以上の女性は、かつて姑や夫にこんなことを言われたでしょう。

「なんでも家電に頼ってばかりじゃいけないよ」
「不必要な贅沢じゃないのかい」
「1歳で保育園に預ける?なんてかわいそう」
「子育てとおまえの仕事、どっちが大切なんだ」
「お父さんの介護はお願いしますよ」
「夫の両親の面倒をみるのは妻の義務だろう」

1970年以降でも、こうした風潮はかなりあったと思います。

これが、資本主義にとって、邪魔でした。

つまり女性の家庭内労働は無償で当たり前、そんな慣習を壊して、女性をも完全に資本主義に組み入れること。これが金持ちがさらにカネ儲けをするために必要なことだったのです。

こうして、1970年代以降、家族は資本家にとって解体されるべき対象となりました。

そして、家族を解体する際に、フェミニズムの論理が使われていくことになります。

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「個人になれ」というフェミニズムの論理

では、資本主義はどのようにフェミニズムを使って家族を解体していったのか?

女性にたいして「あらゆる権利を求める個人になれ」と訴えたのです。

家事からの解放

まいにち食事・洗濯・掃除とタダ働き。

あなたは奴隷じゃないのに。

こんな抑圧された生活でいいの?

あなた個人の尊厳はどこにいったの?

女性だからといって、家事に追われるなんてまちがってる。

性別役割分担の考え方を捨てなさい。

あなたはひとりの女性として、もっと社会で輝くべき。

だから夫にも家事をさせなさい。

最新の家電もどんどん活用しなさい。

なんなら家政婦を雇いなさい。

おカネはかかるけど……。

 

子育てからの解放

母親が子育てをするのは当たり前?

そんな価値観に縛られているから、いまもあなたはひとりで苦しんでいるんじゃない?

子供も大切だけど、あなた自身の人生だって大切。

個人の幸福を求めて、なにがいけないの。

子供がいたって、あなたが幸せになる権利はある。

さあ、社会にふたたび参加しましょう。

子供は保育園に預けなさい、カネはかかるけど。

あるいはベビーシッターを雇いなさい、カネはかかるけど。

待機児童がいるなんてもってのほか。日本死ね。

あなたも男と同じように、いいスーツを買って職場に行きましょう。

すてきな服とバッグを買って、休日を楽しみましょう。

おしゃれなカフェやバーを満喫しましょう。

おカネはかかるけど……。

 

介護からの解放

夫の親は、あなたの本当の親ではない。

なのに、介護があなたを家庭に縛りつけている。

なぜそこまで苦労する必要があるの?

あなたはもっと幸せに生きる権利がある。

他人の面倒をみることで、あなた自身の幸せを奪わないで。

老人ホームに預けなさい、カネはかかるけど。

訪問介護に任せなさい、カネはかかるけど。

できるだけ長く入院させてもらいなさい。

おカネはかかるけど……。

 

こうしてフェミニズムは女性に「個人の幸福」を訴えていきました。

その結果、女性は家事・育児・介護からすこしずつ解放され、かつて女性が無償で担っていた労働は市場によって肩代わりされるようになってきています。

21世紀現在の日本では、家事・育児・介護にたくさんのおカネが必要です。

これこそまさに、資本家の狙いだったのです。

 

家族にかかる費用の増大

ここで実際に、家事・育児・介護といった女性の家庭内労働がどれだけ市場に取って代わられたのか、現代日本社会の一端を見てみましょう。

家電は節約しない現代日本人

以下の表は、家計において「支出が多い」と感じた時に削減する項目のアンケート結果です。

つまり現代日本人が「家計を節約しなきゃ」と感じたときに何を削るのか、そのランキングになります。

家計において支出が多いと感じた時に削減する品目

食費、服飾費、光熱費などが上位にくる一方で、家電は17位と、冠婚葬祭費とほとんど変わりません。

ということは現代日本人は、冠婚葬祭費と同様、家電を買うのも必要経費だとみなしている。

たとえ7万円台の食洗機だろうが、10万円以上もするロボット掃除機だろうが、そこはケチりません。

まして全自動洗濯機や乾燥機、電子レンジや暖房のない生活なんて考えられません。

これが日本人の50年後の姿です。

1970年以前に主婦をしていた人からは想像もつかない贅沢ぶりでしょう。

しかしそれは「贅沢」ではないのです。

だって、資本主義の発信するコマーシャルが「必要な経費だ」と教えるからです。

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1,2歳児の半数が保育所に通う時代

育児においても、女性の家庭内労働は市場に浸食されています。

以下のグラフはここ17年間の日本の保育所利用状況の推移です。

日本の保育所利用状況の推移
(厚生労働省 保育所等関連状況取りまとめをもとに作成)

子どもの数は減りつづけているのに、保育所に通う子どもは増えつづけ、その割合も半分近くまで上昇しています。

特に1,2歳児の利用率は、2008年には27.6%だったのが、2019年には48.1%にまで増加。

いまや「3歳までは家で育てる」は常識でもなんでもなくなりました。

また、このグラフにはありませんが、保育所の数もこの17年で約12000か所増えています。

その分だけ、保育士や経営者の賃金となり、結果として市場に出回るおカネが増えました。

ここで考えてみてください。

保育所の経費を払うのがたとえ国だとしても、その財源はわたしたちの税金です。

しかも大部分は貧しい者から取り立てる消費税です。政府は決して、所得税を増税したり累進課税制度の税率を上げたりはしません。だって金持ちに不利になるから。

だから結局、保育所の費用を負担するのは回り回ってわたしたちなんです。

つまり、保育所に預けることで女性は全体としてさらに貧しくなっています。

しかし政府も大学教授もシンクタンクもフェミニストも、この事実は決して声高に訴えません。

だって金持ちの意向に逆らうことだから。

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介護費用の総額は787万円

2019年4月のある記事によれば、介護費用の総額の平均は「787万円」だそうです。
「シニアガイド」https://seniorguide.jp/article/1180793.html

これもまた、介護という家庭内労働が国家に・そして市場に取って代わられた結果です。

かつて高齢者は家族が面倒をみるものであり、介護とはきわめて私的な領域の仕事でした。

しかし1973年に老人福祉法が改正されたあたりから、介護は社会全体の問題、つまり公的な仕事となっていきます。

「公的」とはつまり、国家と資本主義が担うということ。

こうして、2000年には介護保険法も施行され、妻は義父母のオムツを洗う代わりに介護保険料とデイサービスの費用を払うようになったのです。

 

以上のように、家事・子育て・介護それぞれの分野で、女性の家庭内労働は市場に取って代わられました。

21世紀のいまも、この流れは続き、家族はますます解体されつつあります。

そしてフェミニズムもまた、こうした市場の欲求に乗っかり、女性の家庭内労働を奪う役割を担いつづけています。

それはたとえば、ロックフェラー財団のホームページを見てもわかります。

そこではロックフェラーが「子どもの健康管理」という役割さえも母親から奪いとるために、膨大な健康管理データベースを構築しようとしていること、その推進役に多くの女性が参加していることがすぐに見てとれます。

おそらく今後数十年間、資本主義は「母子の健康」という分野で家庭に入り込み、家族を寸断し、個人となった人々を搾取していくでしょう。

そのための道具として、フェミニズムが今後も使われていくことでしょう。

 

この連載のまとめ

フェミニズムとは何か?

なぜ誕生し、どのように広まってきたのか?

そしてフェミニズムという思想が人類史1万年のなかでここ200年足らずのものならば、その役割はいったい何なのか?

7回にわたる連載で、こうした疑問にわたしなりに答えてきました。

  • フェミニズムとは女性の利益を求める思想・運動
  • 誕生の理由は産業革命(工業化)
  • 産業革命の広まりとともにフェミニズムも世界中に広まる
  • フェミニズムの生物学的役割は「人類の密度効果」である
  • フェミニズムの歴史的役割は資本主義による家族解体の道具

これにて、フェミニズム論考にいったんケリをつけたいと思います。

お付き合いいただきありがとうございました。

なお、この連載で参考にした主な文献は以下のpdfにまとめています。

参考文献一覧

 

さて、ずいぶんフェミニズムに時間を取られましたが、次回からはガラッと内容を変えて「天動説vs.地動説の歴史」を連載するつもりです。

天動説のまちがいを地動説が正したんでしょ?と思っているすべての人に、その誤解を解いていきたいと考えています。(なお現代科学の見解は「どっちも正しい」です。)

もちろん、ジュウゴ自身ド文系なので、理科なんかキライという人にもわかりやすく書いていく予定です。

ただその前に三角関数のフーリエ級数の記事を完成させなきゃ……。







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管理人の重悟(ジュウゴ)です。
30代、ライター兼ブロガー兼講師。

西洋史専攻の知識と民間教育経験を基に、
歴史と教育について書いていきます。

科学と数学についてはヘタの横好き。
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