科学の歴史の流れを超簡単にまとめてみた① 18~20世紀

科学の歴史

こんにちは、ジュウゴです。

科学系の本を読んでいると「研究や人物の紹介ばかりで、つながりがよくわからない」なんてことありませんか?

そこで近代・現代科学の歴史の流れを、わかりやすくまとめてみました。

こまかなことは置いといて、自然科学のたどってきた大きな流れを理解したいという人向けの記事です。

とくに

  • わたしたちが中学・高校で習う科学の知識って、いつ・どんな経緯で出てきたんだろう?
  • 科学史のこまかな議論もいいけど、まず科学全体の歴史を見通したい
  • いまの文明社会を理解するために、19世紀・20世紀科学の流れをつかんでおきたい

なんて人におススメです。

1回目は「18世紀のニュートン力学&近代化学誕生」~「20世紀初頭の原子構造解明」まで。

2回目は「20世紀の量子力学&相対性理論」~「21世紀前半の現在」を予定しています。

近現代科学の歴史の流れを超簡単にまとめてみた② 20世紀~現代

ちなみに、ここではニュートン以前の科学は扱いません。近代科学とそれ以前の科学では特徴がぜんぜん違うからです。(くわしくは上の「近代科学の特徴」記事参照)

また、ジュウゴはド文系なので一般相対性理論も量子化学も分子生物学もじつはよくわかりません。最近やっと数Ⅲが腑に落ちてきたような頭の持ち主なので、各内容については教科書や解説サイトなどをぜひ参考にしてください。(ジュウゴがよく見るのはこちら→EMANの物理学

18~19世紀:近代科学が確立した時代

近現代科学の歴史

いきなりだけど、科学の目標は以下2つを解明すること。

  • この世界はどのように成り立っているのか(仕組み)
  • この世界は何からできているのか(組成)

このうち仕組み解明の先駆者がニュートン、組成解明の先駆者がラヴォアジエです。

 

ニュートン力学のはじまり

1687年、イギリス人のニュートンというおっさんがいきなり次のことを言いだす。
「(モノの動かしにくさ)×(速度の変化)を『力』ってことにしようや。そんであと2つ原理を追加させて。そしたらいろんな物体の運動を数学的に説明しちゃるけん」。
で、じっさいニュートンはりんごや天体の運動をちゃんと説明。

ニュートンの運動3法則

ニュートンの運動3法則

これにはみんなびっくり。
「あんたの定義と説明すごいわ」ってんで、物体の運動の仕組みを「力」という概念を使って数学的に説明する学問(=力学)がいっきに科学の主流となる。

とくにニュートン(とライプニッツ)が考案した「微分・積分」という手法を使うと、瞬間速度や楕円軌道まで計算できちゃう。
だから18世紀の学者は微積分を習って、さらに発展させて、それを使っていろんな運動を説明していく。
これが「解析力学」。

 

近代化学のはじまり

いっぽう、組成解明はそれまでずっと錬金術の仕事だった。
けど18世紀半ばに水上置換法が考案されて、はじめて純粋な気体を取り出せるようになる。
すると酸素・水素・窒素とかが見つかる。
「空気にも種類があるぞ。おいおい、4元素説ってまちがってないか?」という雰囲気に。

アリストテレスの4元素説

アリストテレスの4元素説

とくに酸素は燃焼のほかにもいろんな役割を担ってることがわかる。
ここでフランス人のラヴォアジエ登場。
「フロギストン(燃素)なんて仮定しなくてもいいやん。燃焼・金属がさびること・呼吸・炭酸ガス、ぜんぶ酸素で説明できるぜ」。
そしてラヴォアジエは酸素などの単体と、二酸化炭素などの化合物を分類する。

さらにラヴォアジエは単体のもととなる物質を、それ以上分割できないものとして「元素」と呼んだ。
こうして近代化学がはじまる。
つまりこの世界のもととなるのは土・水・空気・火でなく元素であり、元素の化学反応を調べればいろんな物質がわかるという考え方が主流となる。

 

熱力学と原子・分子モデル

この頃、ヨーロッパでは産業革命が進む。
とくに1769年にワットが蒸気機関を改良すると、蒸気機関が社会の重要な動力となる。
ワットたちは経験をたよりに蒸気機関を作ってたので、ここから科学の出番。
「どんくらい熱したら、蒸気がどんだけ出て、どれだけ仕事してくれるんやろ。いっちょ計算しよか!」となって、19世紀に熱力学が誕生する。

熱力学の3法則

熱力学の3法則

同時に、ボイル・シャルル・ドルトン・アヴォガドロといったおっさんたちが気体の性質を調べていく。
すると「原子や分子っていうモデルで考えたら便利やん」ってなる。
こうして原子・分子モデルをもとにいろんな物質を取り出す(単離)ことが可能に。

  • ベンゼン
  • 合成染料
  • 炭酸飲料
  • プラスチックやナイロン
  • ダイナマイト

などの化学の成果が社会に還元されて、19世紀は「化学の世紀」と呼ばれる。

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19世紀:科学が変わっていく時代

近現代科学の歴史

ここまでみれば、ニュートンとラヴォアジエの方法、とくにニュートン力学は大成功です。

しかし19世紀は、ニュートン力学とは相容れない理論が出てきた時代でもありました。

 

分子運動論から統計力学へ

熱力学と原子分子モデルからわかったことは、熱とは分子の運動ってこと。
「じゃ、分子ひとつひとつの位置と初速度を測れば、未来も予測できるな!」
でも、何億とある分子でそんなんムリ。
どーすんの?

ここでマクスウェル・ボルツマンたちが立ち上がる。
使ったのは、当時急速に発展してた「統計」という数学分野。
たとえば水素分子の平均速度を測って、あるいは確率分布を出して、全体のふるまいを理解しようとした。

マクスウェル=ボルツマン分布

マクスウェル=ボルツマン分布
(25℃における希ガス中での分子の速さの分布をプロットした図)
Wikipediaより

しあげにボルちゃんが「エントロピーって、ようするに、分子がとりうる場合の数のこと」と定義したことで、熱力学と分子運動論が結びつく。
こうして「統計力学」が誕生。

ニュートン力学でいう物質とは、確固としてそこにあるものだった。
でも統計力学がはじまると、物質とは単に、分子の存在確率が高い場所に過ぎなくなる。
だから前者の場合、壁を手で押せば反作用が必ずあるけど、後者の場合は、手が壁をすりぬける確率も0じゃない。
こうしてニュートン力学的世界観から統計的世界観へ、すこしずつ変わっていく。

 

電磁気学の登場

それでも、「世界の仕組みは物質メインで考える」って姿勢はまだ健在だった。
ところが19世紀半ば、この姿勢も崩れだす。
崩したのは「電磁気学」。
「物質よりも場がメイン」って言い出した。

言い出したのはさっきも登場したマクスウェル。
それまでの研究成果を集大成して、4つの方程式にまとめあげた。
この方程式を使うと、電場・磁場にはたらく力がうまく説明できる。
こうして物理学は場の理論が主流となり、ついでに社会は電気の世の中になっていく。

マクスウェル方程式

マクスウェル方程式

ところで、電力や磁力さらには引力がはたらくには、その場に何か媒体がなければおかしい。
音だって空気という媒体があるから伝わるんだし。
そこで19世紀後半から「エーテル」という概念が脚光を浴びはじめる。
しかし、1887年にマイケルソンとモーリーという2人が実験しても、エーテルは検出されなかった。

また、マクスウェルは電磁波という存在を予言し、光も電磁波のひとつだと言った。
そこで光学や流体力学の知識も使って、波としての光の性質がいろいろ調べられる。
しかし、1887年に「光電効果」という現象が発見されて、光が波だとおかしいぞってなる。

この2つの問題をともに解決するのがアインシュタイン。
前者の解決法が「特殊相対性理論」。
後者の解決法が「光量子仮説」。
ただこれはともに1905年で、もうちょっと先のおはなし。

 

放射線と電子の発見

以上のように、19世紀、物理学の主流はニュートン力学から統計力学&電磁気学になってきた。
たいして化学の主流は、原子・分子モデルのままでうまくいっていた。
ところが19世紀末に、こっちもうまくいかない事態が起こる。

それは3つとも真空管(クルックス管)の実験から見つかった。
つまりX線、放射線、電子の発見がそれ。
とくに電子は原子より1000倍も軽い。
「え?原子って基本の単位じゃないの?壊れたりしないんじゃないの?じゃX線も放射線も電子も、どこから来たんだ?」となって大論争。

クルックス管

クルックス管
Wikipediaより

こうして20世紀初頭、科学者たちは原子内部の構造を解明しようとする。
そこから

  • 原子物理学
  • 量子論
  • 電子のふるまいをもとにした20世紀化学

の3つが生まれていく。

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20世紀初頭:原子構造解明の時代

近現代科学の歴史

20世紀初頭の科学の難問を整理すると、以下のとおりです。

  1. X線や放射線の正体って何?
  2. 電子ってどこから来たの?
  3. 黒体放射をうまく表す数式がない
  4. 光=波じゃ光電効果を説明できない
  5. エーテル見つからないんだけど

このうち1と2から原子物理学が、2と3と4から量子論が、1~4から20世紀化学が、そして5から相対性理論が生まれていきます。

*黒体放射、光電効果についてはググってね。

 

原子物理学のすすみ

まず、X線や放射線の正体ってなに問題。
X線は1912年に「波長のものすごく短い電磁波」ってわかる。

X線撮影

X線撮影
Wikipediaより

放射線は何種類も見つかって、エネルギー順にアルファ線(α)・ベータ線(β)・ガンマ線(γ)って名付けられたけど、いろいろ実験したら

  • α線→ヘリウムイオン
  • β線→電子
  • γ線→X線よりさらに強い電磁波

ってわかる。

同時に、α線を出したトリウムがラジウムになり、さらにα線を出したラジウムがラドンになるって現象も発見(放射性崩壊)。
つまり元素は不変じゃないとわかる。
これを見つけたラザフォードっておっさん、ほかにもいろいろ実験して、「原子核のまわりを、惑星みたいに電子が取り巻いてる」という原子モデルを提唱。
こうして、電子はどこから来たんだ問題も片付く。

ラザちゃん、さらにふみこんで、原子核=陽子+中性子ってことも予言。
1930年代にこれが確認されて、原子内部の構造がめでたく判明する。

ラザフォードの原子モデル

ラザフォードの原子モデル

 

前期量子論

ところがひとつ問題が発生。
原子核のまわりをまわる電子は電磁波を出しつづける。すると最終的には力尽きて原子核に落っこちてしまう。と理論上はなってしまう。
「ん?じっさいは落ちないよ。誰か説明してよ」
ここで登場するのがニールス・ボーア。

ボーアよりちょっと前、プランクというはげが「光のエネルギーは連続じゃない、飛び飛びの値をとる」と提案してた(黒体放射問題を解くため)。
そのほんのちょっと後、アインシュタインというもじゃもじゃが「光は波の性質だけじゃない、粒の性質を持つ」と言っていた(光電効果を説明するため)。
1911年、ボーアはこの2人の説を電子に応用する。
つまり電子のエネルギーも不連続で、その飛び飛びの値に応じた軌道を動いてる、その間は電磁波を出さないんだ、と。
ようするに、なぜ電子は落ちないのか問題を棚上げして、電子は落ちない前提で理論を作っちゃった形。

前期量子論の科学者たち

前期量子論の科学者たち
(左からマックス・プランク、アルベルト・アインシュタイン、ニールス・ボーア)

「説明になってないぞ!」
「軌道も飛び飛びって、そんな物質あるわけない!」
いろんな突っ込みどころはあったけど、なぜかボーアの原子モデルは観測結果をうまく説明できた。

そしてこのころから、ミクロの世界はどうもマクロの世界と法則が違うらしいとなってくる。
マクロの世界では、波=状態、粒=物質。2つは違う概念。
でもミクロの世界では、状態と物質は区別できないらしい。んじゃそれ「波」とも「粒子」とも呼べないじゃん。
そこで「量子」と呼ばれるようになる。

なんだかよくわからない量子という概念をもとに、ミクロ世界のふるまいが研究されていく。
そして1925年以降、合理的な理論がつぎつぎに登場し、「量子力学」となっていく。

 

電子をもとにした20世紀化学

いっぽう化学の世界では、原子内部での電子の役割がわかったんで、それまで抽象的だった化学現象も電子にもとづいて説明できるようになる。たとえば、

  • 化学結合ってなんなの?
    →2つ以上の原子が電子を共有してる状態
  • 「イオン」って結局なんなの?
    →電子をもらった原子(陰イオン)や、電子に逃げられた原子(陽イオン)のこと

また、化学結合を電子の殻で表現したり、酸と塩基をpH(水素イオン濃度)で表現したりと、知識の体系化が進む。
さらに、原子は不変じゃないとわかったんで、加速器で陽子や中性子をぶっつけて新たな原子を生む技術も出てくる。つまり周期表の完成へ向かっていく。
加えて、有機化合物や高分子化合物の分析も進む。
このあたりまでが、高校の教科書で学ぶ内容。

応用分野では、同位体の放射性崩壊を調べることで、恐竜化石や地質の年代測定ができるようになる。
またATPや光合成や代謝の仕組みが分子レベルでわかるようになる。
そして1931年には電子顕微鏡が開発される。
こうした原子・分子レベルでの技術革新が、20世紀後半に生物学へと流れこみ、「分子生物学」を大発展させていく。

ちなみにそれまでの生物学は、リンネの分類とダーウィンの進化論とメンデルの遺伝があるくらい。
分子生物学にくらべたらそれ以前なんて屁のつっぱり。

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…1回目はここまで!

量子力学と相対性理論以降の歴史は、次回の記事で!

近現代科学の歴史の流れを超簡単にまとめてみた② 20世紀~現代

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