フェミニズムとは何か?その本質と起源

歴史

フェミニズムとは何か?

どんな背景から生まれた思想・運動なのか?

フェミニズムはどんな歴史をもっているのか?

そしてその意味・役割とは何か。つまりフェミニズムによってわたしたちの社会は、制度は、生活はどう変化したのか?

近現代史、そして思想史に興味のある人は、いちどは考えたことのあるテーマでしょう。

ジュウゴもそのひとりで、大学でもジェンダー論の授業を受け、今度また勉強しなおしました。

この連載記事は、フェミニズムの論理に基づくことなく、外側から、その思想と運動を総括するものです。

  • 「フェミニズムってなんとなく嫌いだけど、よくは知らない」
  • 「ジェンダー論とどう関係があるの?」
  • 「賞賛でも非難でもなく、客観的にフェミニズムをみた記事が読みたい」

そんな人にこそ読んでいただきたいと思います。

1回目はフェミニズムとは何か、その本質と起源について解説します。

フェミニズムとは何か?

フェミニズムとは何か?

この定義はフェミニストのあいだでも定まっていません。

また辞書を読んでも、Wikipediaをみても、わかったようでよけいにわからなくなります。

フェミニズム(英: feminism)とは、政治制度、文化慣習、社会動向などのもとに生じる性別による格差を明るみにし、性差別に影響されず万人が平等な権利を行使できる社会の実現を目的とする思想や運動である。
Wikipedia「フェミニズム」より

かといって、エマ・ワトソンの定義だと簡潔すぎて、もうすこし詳しい説明がほしくなります。

フェミニズムの定義とは、男性も女性も平等に権利と機会を与えられるべきであるという信念です。
2014年国連でのスピーチ、ログミーbizサイトより

「フェミニズム」というもののわかりやすい、しかも詳しい説明とは何でしょうか?

 

フェミニズムの本質

結論をいうと、フェミニズムの本質とは以下のとおりです。

「男性が享受しているいろんな利益を、女性にも等しく与えるべきだ」。こういう主張をもった近現代の思想・運動、その総称。

ここでいう「利益」とは、おもに以下4つを指します。

  • 権利(自由、平等、財産権、参政権…)
  • 機会(教育をうける機会、結婚・離婚の機会、子どもをもつかどうか選ぶ機会、雇用の機会…)
  • 権力(家長、役職、専門職、行政…)
  • おカネ(労働賃金…)

 

また、女性が男性と同等の利益を得るうえで、障害が2つあると、フェミニズムは主張します。

それは「女性特有の肉体的条件」「既存の価値観」です。

前者はたとえば、男より筋力が弱い、生理、出産と授乳など。

だからこれら女性特有の条件をちゃんと考慮して、男性とおなじ利益が受けられるように保護・保障すべきという主張もフェミニズムには含まれます。(例:DV禁止法、ストーカー規制法、生理休暇、避妊・中絶の合法化、育児休暇、保育所の充実…)

後者はたとえば、男性中心主義、良妻賢母、女らしさ・男らしさなど。

だからこれら既存の価値観を打破しようという主張もまた、フェミニズムに含まれます。(例:女性解放、女性学、ジェンダー論…)

 

以上の要素のうち、どれかひとつ以上を持っている思想・運動を、まとめて「フェミニズム」と呼ぶのです。

 

 

フェミニズムが起こった時代と場所

「男性が享受しているいろんな利益を、女性にも等しく与えるべきだ」。

この主張は、上で挙げたように、近現代に特有の思想です。

一般的には、そのはじまりを、フランス革命の時代とします。とくにメアリ・ウルストンクラフトの『女性の権利の擁護』(1792年)をもってその嚆矢とします。

メアリ・ウルストンクラフト
(1759-1797)
Wikipediaより

『女性の権利の擁護』という本は、女性の参政権・財産権、雇用の機会・教育をうける機会などを求めるものでした。また「男性にとって都合のよい女性観」を批判し、女性の経済的自立を薦めました。

こうした主張が18世紀末から19世紀初頭にかけて、イギリスとフランスを中心に、同時多発的に起こったのです。

なので、フェミニズムという思想・運動はいつ・どこで起こったのか?

その答えは18世紀末のイギリスとフランスになります。

(ウルストンクラフト自身、イギリス・ロンドン生まれで、フランス・パリなどで活躍した作家・著述家です。ちなみに彼女の娘が『フランケンシュタイン』を書いたメアリ・シェリー。)

 

その後19世紀には、多くの女性組織が誕生します。

またアメリカをはじめとした工業化諸国にも、フェミニズムは広がっていきます。

そして1870年~1928年にかけて、フェミニズム運動は最初の最盛期をむかえ、多くの工業国で女性参政権が確保されました。

それから第二次世界大戦をはさんで、1961年からふたたびフェミニズムは隆盛をむかえ、現在にいたります。

フェミニズムでは前者の最盛期を「第一波フェミニズム」、後者の隆盛を「第二波フェミニズム」と呼びますが、思想・運動の中身という点で2つは継続しています。なぜならウルストンクラフトとボーヴォワールとフリーダンには多くの共通点が認められるからですが、このあたり、くわしい歴史は次回以降の記事、とくに4回目で解説します。

 

フェミニズムという名前の由来

つぎに、「フェミニズム」「フェミニスト」という用語が生まれた経緯を紹介します。

 

つくったのはフランス人

「フェミニズム」「フェミニスト」という用語は、19世紀のフランスで生まれました。

上述のように、女性の利益を求める組織がたくさんでき、その運動が世の中に知られるにつれて、フランス人はそういう活動をする女性を「feministe」と呼ぶようになったのです。

直訳すると「女性主義者」でしょうか。

「エゴイスト」とおなじような感じで、どちらかといえば軽蔑の意味が込められていました。

(ちなみに「femina」とは「女性」というラテン語)

ユベルティーヌ・オークレール
(1848-1914)
Wikipediaより

この「フェミニスト」「フェミニズム」という言葉を、1882年、フランスの活動家ユベルティーヌ・オークレールが初めて、前向きな意味に捉えて使いだします。

彼女は新聞紙上で「フェミニスト」の権利を認めるよう要求したり、「フェミニズム」と題する連載で人口妊娠中絶を擁護したりしました。

こうして、「フェミニスト」「フェミニズム」という用語はだんだん現在とおなじ意味になっていったのです。

 

20世紀になって定着した用語

1890年代になると、これらの用語がイギリスで英語化されて、

  • feminisme → feminism
  • feministe → feminist

となりました。

1910年代にはアメリカに輸入され、女性運動=フェミニズムとひろく捉えられるようになりました。

こうして、20世紀には「フェミニズム」「フェミニスト」という用語が他の工業国にも導入され、世界的な思想・運動を表すコトバとして定着していったのです。

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ところで、反体制派というものは、自分たちの思想・運動が普遍的であることを示すため、歴史上の先輩を求めます。

20世紀のフェミニストたちも同様でした。

彼女たちはやがて、ウルストンクラフトとかいろんな先達がいたことを知ります。

そこで20世紀のフェミニストたちはこうした先輩も「フェミニスト」と名付けました。

つまりフェミニズムという概念は、20世紀になって初めて定着したものですが、フェミニズムの論理のもと過去の女性たちにもさかのぼって適用されるようになったのです。

たまに古代ギリシア詩人のサッフォーとか、中世の文筆家クリスティーヌ・ド・ピザンとかも「フェミニスト」に入れられるのは、こういうわけです。

 

 

フェミニズムの要因は何か?

最後に、フェミニズムが生まれた理由をみてみましょう。

フェミニズムの論理に基づくことなく歴史を眺めれば、フェミニズムが誕生したのはやはり、フランス革命期あたりです。

つまり18世紀末~19世紀前半が、フェミニズム誕生の時代でもあります。

では、フェミニズムが生まれた要因、つまりフェミニズムの起源もまたフランス革命なんでしょうか?

答えは「No」です。

 

フェミニズムの起源は「工業化」

フェミニズムという思想・運動が生まれた背景。

それは産業革命による社会の工業化です。

つまり人間の生産活動が農耕・牧畜メインから工業・サービスメインへと移ったこと

これがフェミニズム誕生の起源なんです。

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有史以来、人類のほとんどは農耕・牧畜に従事してきました。

ところが産業革命によって、人類の産業別人口割合は劇的に変化しました。

農業の割合はぐっと減少し、代わりに工業・サービス業に就く人が圧倒的多数になったのです。

これは女性にとって何を意味するのか?

単独で稼げるようになったのです。

3つめの影響は、女性の社会進出です。

中世以来ヨーロッパではずっと、一般の女性は経済的には家族経営の一員でした。つまり旦那の農作業を手伝いながら、子育てや家事をおこなってきたのです。

これが産業革命によって、役割が劇的に変わります。旦那とちがう仕事につくようになったのです。パパは港で荷物運びに、わたしは工場で機械操作に、あら、パパよりわたしの稼ぎのほうがいいわ、なんて例もおこってきます。

つまり産業革命によって、女性が単独で賃金を稼げるようになったんですね。

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人類の歴史のターニングポイント

こうして、産業革命以降、経済的に自立する女性がたくさん増えました。

すると彼女たちは気づきます。この社会の仕組みは、制度は、慣習は、すべて男性中心であることに。

「おなじ稼ぎなのに、なんで不平等なの!?」

この不満と怒りが、フェミニズムを生んだのです。

ちなみに、こうしてみると、フェミニズムが社会主義と親和性が高い理由もわかります。なぜならどちらも、産業革命によって生まれた矛盾を解決しようという思想・運動だからです。

 

以上の話に基づいて、次回から、フェミニズムの歴史を概観します。

  • なぜ農耕・牧畜社会では男性中心社会となるのか?
  • フェミニズムの起源が工業化だっていう証拠は?
  • 19世紀の女性たちがぶつかった壁、不満とは具体的に何か?
  • 反動としての「永遠の女性」「良妻賢母」思想
  • 戦後の失業対策としての「専業主婦」プロパガンダ
  • ウーマン・リブが主流にならなかった理由
  • 人口抑制という歴史的役割
  • フェミニズムがもたらした新しい価値観

フェミニズムをとおして、21世紀の現代が人類史上おおきな転換点を迎えていることを、ひとつひとつ論証していきます。

乞うご期待!

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