男が切なくなる漫画ランキング。女性にもおすすめの10選

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最近またBUMP OF CHICKENを聴きまくってムダに切なくなってるジュウゴです。

あの、失って二度と取り戻せないものにたいする追憶とこの幸せもいつかは無くなって終わってしまうという感情を「切ない」と言うのなら、藤原基央はまさに「切なさ」の名手。

そんでいっそ、とことん切なくなりたくて、切ない漫画も読み漁ってます。

むかし心打たれた漫画を読み返したり、新刊に手を出したり。

切なさを感じるのは女だけじゃない。

男も感じて、胸が苦しくなるんだ。

 

ってことで男性が切なくなるおすすめ漫画トップ10を紹介します。

ランキングは勝手な独断・偏見ですがどれを読んでもまちがいなし!

特に卒業シーズンや夏の終わりに読むと、いっそう心がぎゅーっとなってノスタルジックな切なさに満たされていきます。

女性にもおすすめしたい10冊。

ぜひどうぞ。

10位:冬目景『イエスタデイをうたって』

大学卒業後、コンビニでバイトをする魚住。そんな彼の前に、ある日カラスを連れた少女・ハルが現れた…。「49%後ろ向きで、51%前向きで…」へそ曲がりだけれども正直な彼らの心は、舞い落ちる桜のようにゆらゆら揺れて…。

日常を淡々と描くだけなのに、心をわしづかみにされた初めての漫画。

ジュウゴは大学のとき友人に薦められて読んで、冬目景の世界観にいいなーと耽溺しつつ、刊行ペースがあまりに遅いんでいつのまにか放ったらかしにしてました。

知らぬ間に完結してたよ!
(2015年完結、全11巻)

んで最近また読み通したら、あらためて、いい。

たとえばヒロイン晴(ハル)のこんなセリフ。

テキトーにちょうしこいて 人と話合わせて
のらくらといい加減に生きてきたよ あたしは

傷つくのも傷つけんのも シリアスな事は何もなくって
それでくだらない奴になって いつも一人で…
でもそれで良かった

だって自分のコトなんてそんなに考えたくないし
それにあたし自分が好きじゃないもん

(『イエスタデイをうたって』1巻より)

 

登場人物みんな、器用そうに見えてじつは生きることに不器用で…。

自分ってなんだろう、人生ってなんだろうと自問自答しつつ、世界は自分を置いて動いていく…。

でも自分にまっすぐに生きたい、生きていくしかないんだと少しずつわかってゆく…。

大人になって読むとまたいろんな発見がある漫画です。

ついでにハルの、リクオにたいする一途さも見どころ。

冬目景『イエスタデイをうたって』

 

生きることに不器用な人はまちがいなくハマる。

「不器用なままでもいいんだよ」と背中を押してくれる漫画でもあります。

 

 

9位:手塚治虫『安達が原』

宇宙調査官のユーケイは冷酷なハンターだ。地球から逃亡した反乱分子たちを探し出し、追いつめ、粛正する。おまけに今度の仕事は大統領からの勅命だ。宇宙の果てに棲む魔女の犯罪の証拠を探し出し、始末する。だが、ユーケイの前に現れたのはただの老婆にすぎない、その上彼女はユーケイの過去に妙にこだわるのだった……。

漫画の神様・手塚治虫の短編集『ライオンブックス』から。

『安達が原』はこのライオンブックス1の表題作で、60ページたらずの読切り作品です。

名前のとおり、安達ヶ原の鬼婆伝説(黒塚ともいう)を題材にしたもの。

ちなみに2位に挙げた『KUROZUKA-黒塚-』も同じ題材。

安達ヶ原の鬼婆伝説とは…wikipedia読んでね。

能や浄瑠璃、歌舞伎や神楽などでも演じられる伝説です。

安達原(月岡耕漁『能楽図絵』)wikipediaより

 

手塚治虫はこの伝説を下敷きにして、SF要素を取り入れた傑作に仕立て上げました。

もうね、初めて読んだときの切なさたるや、悲しさたるや…。

ネタバレになるのであまり語れませんが、なぜ人が鬼婆にならねばならなかったのか、どんな想いで彼女はたったひとり果てしなく長い時間を待ったのか。

そのことに思い至らされたとき、人の業と世の無常が切々と胸にせまる。

切なさって、恋愛だけじゃない。

きわめて日本的な、仏教的な感情なんだと改めて気づかされた作品。

だから英語に「切ない」という単語が無いんだね。

手塚治虫『安達が原』

 

ちなみにジュウゴは、よぼよぼのおじいちゃん・おばあちゃんがたったひとり、生きるために何かを黙々としている様をみるだけで切なくなります。

深夜のコンビニでゆっくりと買い物をする腰の曲がったおばあちゃんとか、売れないリンゴ飴の屋台に立って目深な瞳の奥からじーっと通りを眺めているおじいちゃんとか。

『安達が原』という漫画にはそれに通ずるところもあって、よけいに切なく、居たたまれなくなった。

それをわずかなコマで演出して、なおかつ物語としても一級のものに仕上げる技量。

手塚治虫の天才ぶりがあらためて確認できる短編です。

 

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8位:施川ユウキ『オンノジ』

突然、人がいなくなった世界で、少女・ミヤコと元少年のフラミンゴ・オンノジが暮らしていく、笑えて、驚いて、切なくもなる日常とは…。鳥と少女と無人街。非日常系ギャグ4コマ!!

一人だけ、あるいは二人だけで生きていく。

その閉じた世界の寂しさ・切なさを4コマギャグ漫画で描いた傑作がこちらの『オンノジ』です。

作者の施川ユウキはこの『オンノジ』と『鬱ごはん』『バーナード嬢曰く。』の3作で2014年に手塚治虫文化賞を受賞しています。

 

『オンノジ』の魅力はなんといっても、笑いのなかにすっと挿し込まれる切なさ。

世界に自分たちしかいなかったら…。

もしオンノジがいなくなってしまったら…。

『オンノジ』は4コマギャグ漫画なので、世界観の押しつけがなく、すっと入り込める読みやすさがあります。ただそれに油断しておもしろおかしく読み進めていると、とつぜん切ないコマが挟まっていてドキッとさせられる。これがたまらなくて、一気に読んでしまいました。

施川ユウキ『オンノジ』

 

フラミンゴ・オンノジとのやりとりも魅力のひとつ。

なんだかんだでミヤコにたいしてオンノジが優しい。

オンノジは元中学生なんだけど、どこか父親のような包容力でミヤコと関わる。

ミヤコも世界にふたりきりなのに、いろいろと遊びをみつけて楽しみます。

そしてラスト。

いやー、最高のラストじゃないか。

おもわず泣きそうになった。

結末の内容はぜひ自身で確認してください。
(全1巻)

 

 

7位:浅野いにお『うみべの女の子』

恋というには強(したた)かで打算というにはあまりに脆い……。浅野いにおが描く、身勝手で切実な十四歳の青春。海の近くの小さな町に暮らす平凡な中学生・小梅。小梅に思いを寄せる、内向的な同級生・磯辺。思いよりも先に身体を重ねてしまった二人。秘密の時間を過ごせば過ごすほど、心の距離は遠ざかっていく――。

注意。

この漫画はえろいです。

山本直樹ばりのエロさ。

しかし同時に、山本直樹に通じる切なさもある。

そして、浅野いにおだから描ける思春期の生々しさがある。

(そういえばこの2人、対談してたな↓)
対談 マンガって、めんどくさい 山本直樹×浅野いにお

思春期って、人の欲望がいちばんストレートに出る。

いらつく奴をいじめたい…。

好きな人と付き合いたい…。

気持ちいいことをしたい…。

自分をわかってもらいたい…。

大人になるとはそういう「自分の身勝手さ」を自覚して他人との距離感を身につけることだけど、こと恋愛になるとなかなかうまくいかなくて、お互いの身勝手さから大人どうしでも傷つけたり傷つけられたりする。

そういう自分自身の醜悪さ。

思春期からずっと引きずってきた欲深さ。

『うみべの女の子』を読むと、そうした内面に気づかされてハッとする。

あー、自分って本質はこうだよなって。

浅野いにお『うみべの女の子』

 

あと、浅野いにおの漫画には、キャラクターの理想化が少ない(ような気がする)。

男性漫画家の描く女性キャラ、女性漫画家の描く男性キャラはとかく理想化されてて、「実際いねーよ、こんな人」ってつっこみたくなるけど、『うみべの女の子』の人物はみんな実際にいそうで、妙にリアル。

『ソラニン』よりも『おやすみプンプン』よりも、心をつかまれた。

主要人物がみんな片思いってのも、心をつかまれた理由。

切実でむきだしの欲望がずーっと叶わない。

切ないよ…。

全2巻でサクッと読めますが、胸に残るものがある漫画。

エロも大丈夫という人にのみ、おすすめします。

 

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6位:ながべ『とつくにの少女』

昔々、遠く遥けき地に二つの国ありて――。触れると呪われるという異形の者棲まう『外』と、人間が住まう『内』で分かたれた世界。本来であれば、交わらぬはずのふたりが出会った時、小さな物語が密やかに動き出す。これは朝と夜――その深い断絶の宵に佇む、ふたりの御伽話……。

大人が読むおとぎばなし。

童話の世界観を漫画で表現した傑作です。

まずなんといっても絵がいい。

黒を多用した幻想的で神秘的な背景。

その黒にとけこむように描かれる異形の者。

絵本のように、ページをめくる手をとめて、しばしその世界に没入したくなります。

ながべ『とつくにの少女』

 

物語の最初、幼い女の子「シーヴァ」と異形の形をした「先生」はふたりだけで暮らしています。

先生はシーヴァを大切にし、シーヴァもそんな先生が大好きです。

でも呪いをうつしてしまうから、先生はシーヴァに触れることができません。

また普通の人間にとって、先生は恐ろしい異形の化物、呪われた身をもつ悪者です。

守るべき愛しい対象に触れられない切なさ。

すべての人間から蔑まれ疎まれる孤独。

そもそも善とは、悪とはなんだろう。

神話や童話がもつ普遍的で根源的なテーマを、『とつくにの少女』もまた持っています。

なんか、子どもの頃に読んだ『おにたのぼうし』を思い出した。

 

『とつくにの少女』は現在も連載中で、2019年1月時点で6巻まで刊行されています。

そして2019年3月には最新刊の7巻が発売予定。初回限定版には「描き下ろしミニ絵本」と「オリジナルデザインキープレート」も付くみたい。

呪いとはいったい何なのか?

魂をおかあさんに返すとは?

人間だったころの先生は何者?

そしてシーヴァだけが呪われない理由は?もしくはシーヴァも呪われてしまうのか?

謎が謎をよび考察したくなるのもまた魅力。

新刊が待ちきれない、おすすめの漫画です。

(2019/5追記:発売されてます!シーヴァもついに…ますます切ない展開…)

 

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