つづいて5位~1位の発表です。
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5位:松本零士『銀河鉄道999』
この宇宙は孤独で満ちている。
絶対的に隔絶された世界で、人はそれぞれに産まれ、生きて、死んでゆく。
『銀河鉄道999』という漫画のテーマはこの人間哀歌に尽きます。
銀河鉄道がそれぞれの世界をつなぐ唯一の手段だからこそ、それぞれの世界の孤独と隔絶がよりいっそう際立って、かれらの来し方と行く末を思うとき寂寞とした気持ちにさせられる。
物語の形式が旅である、というのもまた寂寞の念をつのらせます。
つかのまの出会いと、必ずおとずれる別れ。
ジュウゴは『銀河鉄道999』を読むたび切なくなります。
アニメしか観たことがないという人はぜひ漫画も読んでほしい。
ところで松本零士の作品は浅野いにおとちがって、おもいっきり女性を理想化してます。
メーテルも、鉄郎のお母さんも、みんなどんだけマツゲ長いんだ!
そんでどんだけ母性とめどもないんだ!
だから『銀河鉄道999』はだんぜん男におすすめです。
とくに4巻の「賽の河原の開拓者」「白骨の歌」なんかおススメ。
松本零士の九州男児っぷりに抵抗はないという女性もどうぞ。
漫画『銀河鉄道999』は
- アンドロメダ編
- エターナル編
に分かれていて、「エターナル編」は1999年以来、未完のままです。
なので、初めて読むという場合はまず「アンドロメダ編」だけを一気読みするのをおすすめします。あの、鉄郎が機械の身体をタダでもらいにいくというストーリーが「アンドロメダ編」です。
もちろん続きが気になったら「エターナル編」もどうぞ。
文庫版でいうと、1~12巻が「アンドロメダ編」、13~18巻が「エターナル編」です。
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4位:高橋しん『最終兵器彼女』
セカイ系の代表的漫画として挙げられることも多い『最終兵器彼女』。
この漫画はとくに全編、切なさであふれています。
なぜならこの世界にあるものすべて、終わりが来ることがはじめからわかっているから。
いつまでも続くと思っていた日常と平和…。
友人やクラスメイト、家族や同僚の命…。
高校生の男女の、ありふれた付き合い方…。
ふたりだけの逃避行…。
ちせの人間の部分…。
幾億の人々を乗せたこの世界…。
すべてに終わりが来ることが、はじめからそれとなく提示されている。
それでいてこの漫画は
このセリフではじまり、そしてこのセリフで終わるんです。
だから『サイカノ』はSF漫画じゃない。
不器用でまっすぐなふたりの恋愛漫画。
ものすごく切ない恋愛漫画です。
舞台が小樽市なので、登場人物たちのリアルな北海道弁もいい。
えろい描写もアリ。だってそれが恋愛の一部でしょう。
そして登場人物の死にざま。特にアケミやナカムラが死ぬシーンではボロボロ泣いた。
性と死を、きちんと描いているからこそ、ちせの「生きたい」という言葉に重みが増す。
恋してるんだ。
ごめんね。
生きて、いたいんだ。
個人的にもリアルタイムでハマった思い入れのあるおすすめ漫画です。
まだ読んでないという人はぜひ。
(全7巻)
3位:弐瓶勉『BLAME!』
『最終兵器彼女』がSF要素をくわえた恋愛漫画だとすれば、『BLAME!』は恋愛要素皆無のSF漫画。
そしてまちがいなく日本のSF漫画の金字塔です。
弐瓶勉はこの『BLAME!』でデビュー後、『BIOMEGA』『ABARA』『シドニアの騎士』などを描き、現在(2019年)は『人形の国』を連載中ですが、すべての作品の萌芽が『BLAME!』にはすでにある。
弐瓶勉作品の特徴のひとつは、説明過多になりがちなSFにおいて説明がすくないこと。
特に『BLAME!』は主人公キリイが極端に無口なので、必要最小限の情報しか読者に提供されません。
代わりに『BLAME!』という漫画には、巨大建造物の描写がこれでもかとある。
その垂直につらなる巨大都市のなかを、キリイがたったひとりで(時にふたりで)昇ってゆく。
ときおり敵と遭遇しても、対話はほどんどなく、即バトルシーン(たとえ無抵抗の珪素生物でも無言で頭部切断)。
この構成と演出が
- 『タイタンの妖女』や『星を継ぐもの』に通じる孤独
- 『グラン・ヴァカンス』に通じる残酷さ
- 『渚にて』に通じるディストピア的郷愁
これらすべてを内包する傑作に『BLAME!』という漫画を仕立てています。
だから『BLAME!』もまた、SF名作に通底する切なさをもっているんです。
全10巻(新装版は全6巻)の物語のなかで、キリイは感染のおそれがない都市の果てをめざしますが、どこまで昇っても昇っても都市は続きます。出口?と思って広い場所に出ても、
ここは球状の空間で
直径は平均14万3千キロメートル。
構造体は続いている。
と観測者に言われます(言った直後に頭部チョン)。
そして最終話が「都市の果て」。
この終わり方がまた最高!
どこまでも報われない話が好き…。
数字や科学用語の羅列になんかゾクゾクする…。
巨大建造物や工場に萌える…。
こんな人にはぜひ読んでほしいおすすめ漫画です。
(気になった方はこちらの記事もどうぞ↓)
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2位:夢枕獏/野口賢『KUROZUKA -黒塚-』
愛する二人の、時を超えた逃避行。
この設定だけで切なくて一気読みしてしまった作品です。
『KUROZUKA -黒塚-』は手塚治虫『安達が原』とおなじく鬼婆伝説をもとにした漫画ですが、雰囲気はかなり違う。
夢枕獏にしか出せないあのおどろおどろしさと、耽美な世界観。
野口賢のかすれた線がそれによく合っている。
ちょっとだけネタバレすると、この漫画は吸血鬼伝説も下敷きにしています。
クロウを自分と同じ体にした黒蜜は、時のいやはてまで、ふたり添い遂げることを願う。
しかしクロウも黒蜜も、完全に不死ではない。
いつかその体が朽ちて、いやはて(最後)を迎えるその日まで、いくつもの時代をふたりは超えてゆく。
時間とは、無常とはなんと残酷で切ないものなのか。
かりそめの永遠性をもつふたりの物語だからこそ、それがいっそう感じられる。
とくに2巻途中までと最終巻は胸に残ります。
グロテスクで、切なくて、えろい漫画が好きな人に、絶対おすすめの漫画です。
(全10巻)
1位:吉田基已『夏の前日』
ダントツのランキング1位。
切なくなる漫画といえばまちがいなくこれ!と言えるほどおすすめの作品。
『夏の前日』は吉田基已のデビュー作『水と銀』の前日譚にあたります。
そして『水と銀』に藍沢晶は出てきません。
もうこれだけで、哲生との恋の行方がわかってしまう…。
他にも終わりを暗示させる事柄が『夏の前日』には散りばめられている。
晶が社会人で、哲生は学生であること。
晶も哲生も素直じゃないこと。
はじめから体を重ねてしまったこと。
哲生がすこしずつ華海(ハナミ)を気にしていくこと。
淡く、どこか陰鬱な風景描写。
ときおり挟み込まれる、晶のモノローグ。
そして、『夏の前日』というタイトル。
この物語が夏の前日だとすれば、いずれ夏の終わりもやってくるんだ。
読者はそう思いながらふたりの恋を見守っていくんです。
なんて切ない…。
ちなみにこの漫画からたまの曲を知ったという人も多いはず。ジュウゴもそうでした。
主人公 藍沢晶は、わたしの読んだ漫画のなかで最高の女性。
なぜかかつての恋人やいまの恋人のセリフがそっくりそのまま投影されている場面もあって、「こんなこと言われたな」「こんなふうに思っていたのかな」と、他人事として読めなかった。おれ、藍沢晶みたいな女にずっと惚れてたのかもしれない。
だからこそラストは、そうなるとわかっていたのに、悲しくて悔しかった。
もう二度と、哲生みたいにはならない。
キリキリと胸を締め付けられながら、誓えた漫画。
なに言ってんだ。
これ以上は感情移入しすぎて書けません。
どうぞ自分の目で確かめてください。
まとめ
10位:冬目景『イエスタデイをうたって』
9位:手塚治虫『安達が原』
8位:施川ユウキ『オンノジ』
7位:浅野いにお『うみべの女の子』
6位:ながべ『とつくにの少女』
5位:松本零士『銀河鉄道999』
4位:高橋しん『最終兵器彼女』
3位:弐瓶勉『BLAME!』
2位:夢枕獏/野口賢『KUROZUKA -黒塚-』
1位:吉田基已『夏の前日』
以上、男が切なくなる漫画ランキング トップ10。
ここで紹介した10冊はすべて、電子書籍でも読めます。
たとえば以下のサイトなら試し読みが全巻できるので、気になった漫画があればネットでスマホで読んでみてください↓
イーブックイニシアティブジャパン eBookJapan
ちなみに『銀河鉄道999』『BLAME!』『夏の前日』の3作品は全ページ無料です(1巻のみ)。2019/1/10までの期間限定らしいので、お早めに。
というか『夏の前日』だけでもぜひ読んでほしい!
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