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日記

『あまちゃん』から考察する田舎④ 現代日本人の帰属意識その2

投稿日:

前回につづき、『あまちゃん』からうかがえる現代日本人の帰属意識について。

いちおう前回の内容をまとめると、

1回目2回目の記事で書いた計10コの理由によって、地域コミュニティは消滅。その結果、いま田舎に残るコミュニティは職場の仲良しとか(海女クラブ)、同窓生とか(大吉と菅原)、スナックの常連仲間とか(勉さん)っていう「腐れ縁」がメインになった。
人は長い付き合いによって多少の我慢もできる。そしてこの我慢がコミュニティを存続させる。地方活性化を目的とするNPOも、いろんな趣味サークルも、PTAも、この「我慢」の理由がないから難しい。結果として、帰属意識をもてるほど安定した田舎のコミュニティは、この腐れ縁コミュニティ=喫茶リアスだけ。

 

職場コミュニティも、もう帰属意識の対象じゃなくなった。なぜなら「会社は不安定」という近代日本の常態に、バブル崩壊以降もどったから。そもそも帰属意識とは自己愛+教育・経験で生まれるけど、前提として安定してないと生じない。だからいくら社員教育しても、帰属意識っていう点ではムダ。
例外なのは大吉。彼はバブル崩壊前に就職し、就職先が第3セクターで、しかも春子への愛を北鉄への使命感に昇華してる。そんな50代の人間なら、職場に強い帰属意識をまだ持ってるかも。
でもそうじゃない人間にとって、強く帰属できるコミュニティは家族だけ。それだと不安だから、みんな「帰属できる新たなコミュニティ探し」をするようになった。

 

今回はこの「新たなコミュニティ探し」がどんな社会現象として表れているか、具体的にみていきます。

『あまちゃん』コラム最終回、どうぞ最後までお付き合いください。


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『あまちゃん』とは帰属先を探す話

『あまちゃん』は新たな帰属先コミュニティを探す話とも読み取れます

主人公のアキは、東京でうまくいってませんでした。

でも北三陸で夏ばっぱと出会い、祖母の家で暮らしはじめます。

北三陸では海女クラブや喫茶リアスの大人たちとつながります。

ユイちゃんという親友もでき、好きな男もできます。

自信をつけたアキは、東京に戻って、今度はGMTのメンバーともつながります。

いろんなコミュニティと新しいつながりをつくる…。

これ、現代人の多くが望んでいることでもあります。

 

「趣味を持たなきゃ」という強迫観念

そうした例のひとつに、「趣味さがし」「趣味仲間さがし」があります。

本来、趣味とは「どうしようもなく打ちこんでしまうもの」であり、だから趣味に熱中しすぎる人は「道楽者」などといわれて、その希少価値をちょっと尊敬されつつ大概はバカにされ呆れられてきたのです。

金にも時間にも糸目をつけない、やりたくてしょうがない。そんな趣味をもっている人は今も昔も1~2割ていどでしょう。

 

ところが現代の日本では、逆に、趣味を持っていないと損をするような雰囲気があります。

これには3つ理由があり、うち2つは現代人のメンタルから来ています。つまり、

  1. 人生を楽しむことがいちばん大事という価値観
  2. 目的を同じくする仲間とつながりたいという欲求
  3. 趣味に金を使ってほしい企業の広告戦略

1.はようするに、非物質的な豊かさを求める態度です。

平和と物質的な豊かさが実現し、個人の自由度が拡大した社会では、だいたいこうなります。

平安期の貴族とか、古代ギリシア・ローマの市民とかね。

 

そんで、2.が現代人の「新たなコミュニティ探し」の表れなんです。

つまり、趣味仲間というコミュニティをみつけて、帰属したいんです。

各種スポーツ仲間、スポーツの応援団やサポーター、釣り仲間、ツーリング仲間、アニメオタ、アイドルオタ、鉄道マニア、好きなアーティストのファンクラブ仲間、コスプレ仲間、サーファー、車好き、ゴルフ好き、陶芸教室、生け花教室、ダンス教室、料理教室、各種講座、ボランティアメンバー、清掃活動メンバー、地域活性化メンバー、歴史オタ…。

だからいま、趣味や習い事が多様化してるんです。

みんなどこかにつながりたいから、「どうやったら趣味をつくれるの?」と聞くわけです。

何かに帰属して、より人生を豊かにしたいから、「おれ無趣味なんだけど…」って人もあえて趣味サークルに入ってみたりしてるわけです。

 

ちなみに村上龍は「無趣味でいい」と言ってますが、そんなふうに達観できないよねー。

なんか不安になるんだよー、どっかに属してたいの。

 

非現実でつながる

帰属できる新たなコミュニティ探し、その2つめの例は、インターネットを介したつながりです。

LINE、Twitter、Facebook、Instagramといったソーシャルネットワークサービス(SNS)…。

オンライン上で行動をともにするゲーム(MMORPG)…。

2000年代以降、インターネットを介したこうしたコミュニティづくりが急激に増えました。

主なSNSの日本初登場年をならべると、次のとおり。

  • GREE 2004年
  • mixi 2004年
  • アメーバブログ 2004年
  • FC2ブログ 2004年
  • Skype 2004年
  • Mobage 2006年
  • Twitter 2008年
  • Facebook 2008年
  • LINE 2011年
  • Google+ 2011年
  • Instagram 2014年

ゲームは多すぎて書ききれん!

とにかくみんなどれかひとつ以上はやった(今もやってる)ことあるのでは?



こうしたSNSやMMORPGの利点は、めんどくさい人間関係がないところです。

嫌だと感じたら、すぐコミュニティを抜けたり解散したりできます。

よって、コミュニティの安定や継続は期待できません。

 

結果、帰属意識をもてるほどのコミュニティはオンライン上にはつくりにくい。

今後も、いろんなコミュニティが立ち上がっては消え去り、ぼくらはネット上で離合集散をくりかえすでしょう。

そして「やっぱり現実がいいや」となって、オフ会を開いたりコンサートに出向いたりVRアトラクションに出かけたりして、現実の仲間を求めるでしょう。

そこでふたたび、コミュニティの継続には我慢が必要であることを思い知らされて、ひとりの時間をほしがるでしょう。

そんでまた、ひとりだとさびしくなって、誰かとつながりたくなって、ネットの海を探し回るのです。

 

あぁ、おれはなんて勝手な人間なんだ!

でもこうなんだもの!

しかたないもの!

だれかジュウゴに安らぎを!

疑似でもいいから安定を!

家元、おらぁやっぱり達観できねぇよ!

 

中高生の結婚願望

そんなどうしようもないジュウゴのような人間のために、「家族」ってやつがあるんでしょう。

地域が消えても、職場が消えても、新たな帰属先が見つかんなくても、大丈夫。

たとえ犯罪者になっても、かれらだけは最後まで味方してくれるであろう、唯一のよりどころ。

それが「家族」というコミュニティです。

 

だから現代の中高生は結婚願望が高いのか。

日本史上かつてないほど帰属先のすくないこの社会で、「家族」だけしか本当の頼りはないというこの現代で、時代の雰囲気をいちばん敏感に感じとる若者世代が新たな家族をつくって早く安定したいと願っても、不思議じゃありません。

実際、いま女子中高生の7割は「結婚したい」とのこと。

そして9割以上が「20代までに」結婚を望んでいるとのこと。
ふみコミュニケーションズ 2014年調査より)

 

同年にすららネットがおこなった調査でも、おなじような結果が出ています。

小中高生の「結婚観」に関する意識調査結果(すららネット)より一部抜粋

(くわしくはこちら→すららネット プレスリリース

 

実際のところ、昔にくらべて結婚願望が高くなってるのか、正確にはわかりません。

でも、晩婚化のすすむ現代において、まだこれだけ子どもたちが結婚に憧れてるってことは、新たな家族をつくりたい、帰属先を増やしたいと本能的に願っている表れなんじゃないでしょうか。

 

ナショナリズムの高まり

帰属先探し、その最後の例は、現代日本のナショナリズム。

ようするに「国家への帰属意識」の高まりです。

 

そもそも不景気のとき、先行き不安のとき、そして長期政権のときにナショナリズムが高まるのは近現代史の常です。

ナショナリズムは政治家にとって、国民の不満のはけぐちとして、また連帯感をもたせるエサとして格好の道具だからです。

くわえて現代日本の場合、戦後の国家主義嫌悪にたいする反省もあって、そして高齢者が過去最高に多いこともあって、いまナショナリズムが高まりをみせています。

 

ここに、「新たな帰属先さがし」という要素も一枚かんでいる。

ジュウゴにはそう思えます。

つまり、帰属先をもたない不安な心が政治方面にむかった場合、「おれたちには日本という国があるじゃないか」と安心したくなる、そういう帰属意識の表れだと思えるんです。

 

ま、単純に、敵をつくって差別するのは愉快だからってのもあるけどね。

もちろんジュウゴも含めてです。

最近知った「大本営八俵」という芸人さんがいますが、爆笑してしまったw

ブラックな笑いも大丈夫という人はどうぞ↓

 

 

 

まとめに代えて

最後はヘンな方向にいってしまいましたが、帰属意識という観点から現代日本を考察してきました。

今回の記事を一言でまとめると、

現代日本人は新たな帰属先を求めて、趣味やSNSや結婚やナショナリズムに走る

ってことです。

 

『あまちゃん』からずいぶん離れた話になった(-_-;)

以上、4回の連載おしまいです。

なぜぼくらは近所付き合いをしなくなったのか?

地元ってそもそもなんなのか?

ぼくらの帰属意識はどこにあるのか?

ちょっとでもそんな観点で『あまちゃん』を観返すと、またちがった田舎像や現代社会が見えてくるでしょう。

 

→1回目:『あまちゃん』から考察する田舎① 近所付き合いが消えた理由

→2回目:『あまちゃん』から考察する田舎② 地元は「集落」から「市」へ

→3回目:『あまちゃん』から考察する田舎③ 現代日本人の帰属意識







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管理人の重悟(ジュウゴ)です。
30代、ライター兼ブロガー。

西洋史専攻の知識と民間教育経験を基に、
歴史と教育について書いていきます。

科学と数学についてはヘタの横好き。
ラーメンも大好き。
彼女いわく「ちょっと変態」。

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