ダイヤモンドを燃やしたら元素がわかった!

科学

こんにちは、重悟(ジュウゴ)です。

今回はダイヤモンドの研究にかんするお話です。

ダイヤモンドの発見と命名、元素は何か、合成する試みなど、ダイヤモンドにまつわる化学系の雑学を紹介します。

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ダイヤモンドとは「硬くてどうしようもない」という意味

宝石としても人気のダイヤモンド。

ジュエリーリングとしても定番です。

婚約指輪にダイヤモンドをプレゼントした、されたという方も多いんじゃないでしょうか。

 

そんなダイヤモンドですが、人間がその価値に気づきはじめたのは意外と古く、紀元前にはすでに発見されていたそうです

なんでも旧約聖書にもダイヤモンドの記述があるとかないとか。

はっきりと文献に登場するのは古代ローマ時代。

博物誌学者のプリニウスという人が西暦77年に書いた本のなかに出てきます。

 

当時の名称はラテン語で「adamantos」。

意味は「硬くてどうしようもない石」

もともとの語源はギリシア語の「adamazein(何にも征服できない)」からきているとも言われます。

時代がくだると「a」がとれて、「diamond」となっていきました。

つまり「硬くってどうやっても征服できないほどの石」がダイヤモンドってことですね。


最初の原産地はインド

古代ローマ時代には、インド南部のゴルコンダ(いまのハイデラバード)周辺でダイヤモンドが採掘されていました。

それがユダヤ商人をとおして地中海世界に運ばれ、高貴な人々に宝石として親しまれました。

いまから2000年も前なのに、物流はすでに世界規模だったんですね。

ちなみにこのころの日本は弥生時代まっさかりです。

 

時代がくだって大航海時代になると、ブラジルでもダイヤモンドの鉱床が発見されました。

そして19世紀になるとアメリカ、オーストラリアなどでもつぎつぎと発見されていきます。

なかでもアフリカとシベリアでは、たくさんの鉱床が発見されました。

いまでもアフリカとロシアはダイヤモンドの2大産地となっています。

*アフリカのダイヤモンド鉱山については以下の記事も参照
ジェントルマン資本主義によってイギリスが「世界の銀行」になった

 

ダイヤモンドの元素は燃やしてわかった!

そんなダイヤモンドですが、何からできているかご存知ですか?

そう、「炭素」です。

木炭とか石炭とかのあの「炭」からできてるんですね。

ダイヤモンドは炭素というただ1種類の元素からできています。

 

では、炭素からできていることをどうやって確かめたのか。

なんとダイヤを燃やして確かめたそうなんです。もったいない!



最初にダイヤモンドを燃やしてみたのは18世紀のフランスの化学者、ラヴォアジエ

質量保存の法則を発見したりして「近代化学の父」と呼ばれた人です。

ラヴォアジエは「燃える」という現象が「酸素との結合」だと唱えたことでも有名です。

それまで燃焼とは、フロギストンというなんだかよくわからない物質がとびだすことだと信じられていました。

しかしラヴォアジエの発見によって、燃焼とは物質と空気中のなにかが結びつくことだとわかり、それで空気中のなにかを「酸素」とよぶようになりました。ちなみに動物の呼吸が燃焼の一種であることを発見したのもラヴォアジエです。

 

ラヴォアジエはダイヤモンドを燃やしてみたところ、二酸化炭素が出てきました

それでダイヤの元素は「炭素」だとわかったんですね。化学式にすると
C+O₂→CO₂
ということです。

 

じつはダイヤモンドの元素をたしかめたのは、ラヴォアジエだけではありません。

ラヴォアジエより18歳下のスミソン・テナントというイギリス人もまた、実験によってダイヤの元素が炭素だと証明しました。

ちなみにこのテナントは、イリジウムという希少金属(レアメタル)を発見したことでも知られています。

イリジウムは世界でもっとも希少な金属で、金属アレルギーになりにくいことから、近年は指輪としても重宝されています


現代の錬金術!ダイヤモンド合成の試み

ダイヤモンドの元素が炭素だとわかると、科学者たちはつぎつぎにダイヤを人工的につくろうとしていきます。

だって、炭素なんてありふれてますからね。

木炭からダイヤモンドを作れたらすばらしいじゃないですか。

まさに現代の錬金術のはじまりです。

 

はじめてダイヤモンドの合成に成功したと発表したのは、イギリス人のハネーという人です。1880年のことでした。

ところがその後、X線による解析によって、じつは天然ダイヤモンドであることが判明しました。

ただこのダイヤモンドは記念ってことで、いまでも大英博物館に保管されています。

10年後の1890年には、フランスのモワッサンという人が合成に成功したと発表します。

ただこれもじつは、天然ダイヤモンドでした

なんでもモワッサンの弟子のひとりがこっそり実験装置に入れたみたいなんです。

たぶんこういうことでしょう。

弟子「まいにち実験のくりかえし、いやになると」
モワッサン「今日の出来はどげんね」
弟子「今日もできまっしぇん」
モワ「そーか、ばってん、明日は成功たい」
弟子「(もうなんもしきらん。よし、こっそり本物でも入れとこ)」
~翌日~
モワ「今日はどげんやったと」
弟子「しぇんしぇい!できたとです!ダイヤモンドです!」
モワ「おお、本物んごとみえる!ついに長年ん夢のかないよったぞ!」
弟子「(いっちょんウケるw)」

福岡のみなさん、ごめんなさいm(_ _)m

>Amazonプライム・ビデオ「めんたいぴりり(博多華丸、富田靖子)」

 

そして合成は成功したのか?

こうしてダイヤモンド合成の実験は失敗つづきでした。

人工的なダイヤモンドづくりに成功したのは、ようやく第2次世界大戦後のことになります。

 

1953年、スウェーデンの家電メーカーASEA社が史上はじめて、ダイヤモンドの人工合成に成功します。

ただこの成功は秘密にされました。

理由はよくわかりませんが、商売になるほどの量はつくれなかったのかもしれません。

 

翌年、アメリカの巨大企業ゼネラル・エレクトリック社(GE社)が合成に成功したと発表します。

これが公式には最初の成功例となりました。

ちなみにGE社はあのトーマス・エジソンがつくった会社です。

白熱電球をはじめ、ラジオ、テレビ、電気冷蔵庫などさまざまな発明をうみだし、いまでも世界有数の特許数をほこります。

さすが、発明家のたましいが受け継がれていますね。

 

日本ではじめてダイヤモンドの合成が成功したのは1961年。

石塚研究所(現トーメイダイヤ)によって成し遂げられました。

翌1962年には東京芝浦電気(東芝)も合成に成功しています。

変わったところでは、日本工業大学の広瀬洋一という人がお酒からダイヤモンドをつくったそうです

なんかいいですね。半分ダイヤにして半分はお酒のままでグラスに注ぎたい。


ダイヤモンド合成の方法とは

このように、ダイヤモンドの合成はおおくのばあい個人研究ではなく、企業によって成し遂げられました。

これにはダイヤモンド合成の実験に莫大なお金がかかるという理由があります。

 

ダイヤモンドの合成にはおもに2つの方法があります。
1つは高温高圧法。もう1つは化学気相蒸着法。

高温高圧法とは、かんたんにいうと、実験箱のなかをめっちゃ高温にして、めっちゃ高い圧力をかけて、炭をダイヤモンドに変えちゃおうという方法です。

とくに圧力がめちゃめちゃ高くないといけません。

どれくらいかというと、10ギガパスカルくらい。これはマリアナ海溝の水圧の10倍です。また最新鋭の戦車が重さそのままで人間の女性のかたちになってハイヒールを履いたときのカカトにかかる圧力です。想像しただけで痛い!



化学気相蒸着法とは、かんたんにいうと、炭素を気体にして、なにかうすい膜の上にふきかけて(蒸着)、ダイヤモンドを作っちゃおうという方法です。

方法によっては炭素を気体じゃなくてプラズマにすることもあるようです。

プラズマとはあの第4の形態、固体・液体・気体のつぎにくる状態のことですね。

 

いずれの方法にしろ、お金がたくさんかかりそうなのはわかりますね。

そんなわけで、お金をもってる大企業がダイヤモンド合成に成功できたんです。

ただ日本の場合はすこしちがうように思います。

石塚研究所にしろ、広瀬洋一さんにしろ、巨大企業というよりは、創意工夫で成し遂げたように感じます。

「お金がないならないなりに工夫して勝負する」という気概でしょうか。


結婚前にダイヤモンド合成の話はやめておこう

以上、ダイヤモンドにまつわる化学系の雑学でした。

よかったら友人やご家族に話してみてください。

お酒からダイヤモンドをつくる話なんか、酒の席にはもってこいですね。

ただプロポーズで合成の話をすると「これも合成物なの?」と疑われるのでやめましょう。

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コメント

  1. トライボロジー関係 より:

     最近、CCSCモデルというものを知りました。これは境界潤滑状態(機械のオイルを介した摩擦状態)で面圧が数千MPaの強度のある鉄鋼が数十MPaしか耐えられないのはナノレベルではグラファイト片がダイヤモンドになることを報告したもので
    C.C.yang and S.Li: J. Phys. Chem. C 112, (2008), p.1423-1426.
    などを根拠にラマン分光測定結果などを理由にしているものだ。もしこれが本当だったら、ナノレベルのダイヤモンド生成の抑制方法を緻密に制御すれば、高面圧に耐えられる機械ができる可能性を示唆していることを意味している。