いまの子どもたちに人気の部活動って何だろう?
どんな部活の種類が人気を集めて、どんな部活が人気を下げているんだろう。
ふと疑問に思ったので、調べてみました。
データの豊富な高校の運動部を元に、最新の人気ランキングと過去15年にわたる推移を紹介します。
高校生はもちろん、小学生や中学生で部活に迷う子、またそんな子の保護者さんも参考にしてください。
結果は、かなり意外なものでした。
最新の部活動人気ランキング
まずは最新のデータから、
- 高校生のうち運動部に所属している人数と割合
- 男子高校生に人気の部活動ランキング
- 女子高校生に人気の部活動ランキング
の3つを紹介します。
なお、この記事の表やグラフは以下のデータに基づいて作成しました。
運動部に所属する人が増えている
高校生のうち、運動系の部活動に所属する人はどれくらいいるのでしょうか。
以下の表が、その答えです。
2018年度時点で、男子高校生の58%、女子高校生の約27%、全体の約43%がなんらかの運動部に所属しています。
つまり男子は2人に1人以上が、女子は4人に1人以上が運動部に入っているということですね。
また2003年度からの推移をみると、人数自体は減少しています。
これは日本の人口そのものが減少しているためですが、注目してほしいのは割合。
男女とも、運動部に所属する人の割合は年々増えているんです。
2016年をピークに過去2年間はゆるやかな減少傾向にありますが、15年前よりは依然として高い。
つまり、ここ15年で運動系部の活動の人気は高まってきているといえます。
男子に人気の部活ランキングTOP10
それでは、いま人気の部活の種類は何か?
男子のランキングは以下のとおりです。
1位:サッカー
2位:野球
3位:テニスという結果。
ちなみに11位以下は「11位:剣道」「12位:水泳」「13位:ラグビー」「14位:柔道」「15位:登山」でした。
なお、野球とテニスの人数はそれぞれ硬式・軟式を合計しています。
それぞれ分けた場合、
≪野球≫
- 硬式:153,184人(9.4%)
- 軟式:8,755人(0.5%)
≪テニス≫
- 硬式:59,696人(3.7%)
- 軟式:47,698人(2.9%)
となり、バスケ・陸上・バドミントンの人数が硬式テニスを上回ります。
また、運動部所属の男子がどの部活に所属しているか、割合を円グラフにすると、こんなかんじ↓
上位4種類(サッカー・野球・テニス・バスケ)だけで過半数超え。
いかにこの4種類のスポーツが男子に人気か、うかがえます。
ちなみにこのグラフも上の表にも、サッカークラブユース所属の選手数はカウントしていません。
日本サッカー連盟(JFA)によると、高校生年代の選手数は「174,177人」。
よって差し引き8,826人が、U-18のクラブユース所属ということになります。
2011年からは「高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ」という、高校の部活とクラブユースぜんぶが総当たりするリーグ戦も始まっています。
野球経験者としては歯がゆいですが、近年はサッカーが一番人気だという結果になりました。
女子に人気の部活ランキングTOP10
つづいて、女子に人気の部活ランキングをみてみましょう。
こちらは
1位:テニス
2位:バレーボール
3位:バスケという結果。
バドミントンは僅差で4位でした。
ちなみに11位以下は「11位:水泳」「12位:体操・新体操」「13位:柔道」「14位:空手」「15位:登山」です。
なお、女子の場合も硬式テニスとソフトテニスを合計しています。
女子高校生の部活種類別割合は、以下のとおりです。
やはり上位4種類(テニス・バレーボール・バスケ・バドミントン)だけで過半数超え。
高校で運動部に入る女子が約4人に1人なので、およそ7人に1人はテニスかバレーかバスケかバドをやる、ということになります。
そして男子とちがうのは、男子の場合サッカーと野球がとびぬけて人気なのに対し、女子はこの4種類の部活の人数にそれほど差がないこと。
つまり、いまの女子には
- テニス
- バレーボール
- バスケ
- バドミントン
という部活動が人気を4分している。
こういう結果になりました。
各部活動の人気の推移
では、こうした各部活の人気はどのように推移してきたのか。
つまり過去15年間で、人気が高まってきた部活は何で、人気の落ちてきた部活は何なのか?
これが意外な結果でした。
以下の各グラフをごらんください。
いまどき男子は「スマート」を求める?
まず男子の部活人数の推移から↓
野球人口が2015年度からガクッと減って、2018年度にサッカーが逆転しています。
また、錦織圭の活躍もあってテニスの人数は増えていると思っていましたが、逆に減っていました。
そしてバスケの人数は2009年に下げ止まり、2012~2015年にかけて増加し、近年は減少しています。これは『黒子のバスケ』連載期間が2009~2014年、アニメ放映期間が2012~2015年なので、おそらく漫画・アニメの影響ですね。
上位4部活をのぞいた、より詳細なグラフは以下のとおりです。
陸上とバドミントンが急上昇していて、卓球とバレーボールも一時期の減少からもちなおしています。
弓道・ハンドボール・水泳はゆるやかに増えていましたが、ここ2,3年、ちょっと人気が落ちぎみです。
そして剣道・ラグビー・柔道の人数はここ15年、ずっと減少しています。
3部活の競技人口の推移は2003年→2018年で
- 剣道:37,386人→25,466人
- ラグビー:30,419人→21,702人
- 柔道:28,690人→15,116人
といずれも落ち込んでいます。
そういえば女子でも剣道部の子が「新入生ぜんぜん来ない」と嘆いてたな。
ということで、2019年現在、男子の部活で人気が高まっているのは
- サッカー
- 陸上
- バドミントン
- 卓球
- バレーボール
などでした。
いまどき男子は「汗臭く・泥臭く」よりも「スマートさ」を求めるのかもしれません。
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いまどき女子は「脚やせ」を意識?
つづいて女子の部活人数の推移です↓
テニス・バレーボール・バスケといずれの部活も部員が減少しています。
上位4種類のうちでは、バドミントンだけがゆるやかに増加してますね。
これは日本代表の継続的な活躍が大きいでしょう。
2004年のオグシオを皮切りに、2008年北京五輪のスエマエ、2012年ロンドン五輪のフジカキ、2016年リオ五輪のタカマツと、女子ダブルスがつねに好成績をおさめてきました。男子でも近年は桃田賢斗が世界ランク1位を獲得しています。(朴コーチ偉大!)
くわえてバドミントン協会もオグシオブームにのってジュニア大会を強化。底辺を広げる活動が息の長いバドミントン人気を支えています。
女子の上位4部活をのぞいた、より詳細なグラフは以下のとおりです。
のきなみ人気が下落か横ばいの中、増加傾向にあるのが陸上と卓球。
卓球もバドミントンとおなじく、オリンピックでの日本選手の活躍が大きいでしょう。
2012年は女子団体で銀、2016年には男子個人・男子団体・女子団体の3種目でメダルを獲得しました。(愛ちゃん偉大!)
くわえて近年の卓球人気には、2002年に公開の映画『ピンポン』の影響もあるかもしれません。
そういえば陸上のドラマ・映画も、2007年から2009年にかけてイケメン俳優主演でたてつづけに公開されてましたね。
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ということで、2019年現在、女子の部活で人気が高まっているのは
- バドミントン
- 陸上
- 卓球
などでした。
総じて、パワーが求められるスポーツよりも、瞬発的な動きをするスポーツのほうに人気が集まっています。
中高生の女子はどうしても、筋肉がつきすぎること、とくに足が太くなることに敏感です。
もしかして、脚やせを意識した結果なのかもしれません。
人気が高まってる部活、その理由
まとめると、運動系部活動においては男女ともに
「バドミントン」「卓球」「陸上」
という3種類が、近年人気を集めています。
これはなぜか?
上で挙げたように、
- ブームに後押しされた底辺人口の広がり
- 世界大会での日本人選手の活躍
- 漫画・アニメ・映画・ドラマ等のコンテンツ
という3つがおもな理由でしょう。
男子バレーボールの人口が2013年に底をうって、そこから急激にもちなおしているのも、2012年から連載中の『ハイキュー!!』の影響だと思われます。
くわえて、陸上が人気なのは、
4.高校から始める部活としておすすめ
という理由もあります。
球技や水泳などはどうしても幼いころからの練習量がものをいうので、高校デビューはむずかしい。
その点、陸上なら、スタートはほぼ横一線。
高校から始めて専門的技術を身につけていっても、けっして遅くありません。
あの朝原宣治選手も高校から陸上を始めていて、中学まではハンドボール部だったそうです。
こうした「始めやすさ」が、いまの高校生たちをさらに陸上に惹きつけているんでしょう。
そして、男子高校生にサッカーがダントツ人気の理由。
それはいまの子どもたちが、アメリカの覇権の終焉を敏感に感じとっているからではないでしょうか。
野球・バスケ・アメフトといったアメリカ発祥のスポーツ…。
またテニス・ゴルフ・ボクシングなどのアメリカが本場のスポーツ…。
こうしたアメリカ的価値を背負ったスポーツに、もはや日本の子どもたちは魅力を感じなくなってきている。
ではこうしたスポーツ以外で、魅力的で、世界中で愛好されて、しかも将来大金を稼げるかもしれないスポーツは何か?
サッカーしかないんですね。
つまりアメリカ文化は日本の若者にとって「普遍」じゃなくなってきた、ってことです。
子どもたちは、そういう流行とか世相とかに敏感。
だから音楽はテイラー・スウィフトよりも防弾少年団のほうが好きだし、映画は『アベンジャーズ』よりも『劇場版コード・ブルー』が好き、という小中高生が増えているような気がします。
「アメリカ的文化=普遍」というパラダイムが、日本ではもう終了した。
それがサッカーに人が流れているいちばんの理由かもしれません。
>Amazonプライム・ビデオ「劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」
まとめ
○運動部に入る高校生の割合はここ15年、増えている。
○部活の人気ランキング(2018年度)は男女で以下のとおり。
≪男子≫
- サッカー
- 野球
- テニス
- バスケットボール
- 陸上
- バドミントン
- 卓球
- バレーボール
- 弓道
- ハンドボール
≪女子≫
- テニス
- バレーボール
- バスケットボール
- バドミントン
- 陸上
- 弓道
- 卓球
- ソフトボール
- ハンドボール
- 剣道
*男女とも、上位4種類の部活で運動部員数の半分以上を占める。
*男子のサッカークラブユース人数をあわせると、実に全男子高校生の20%以上。
○ここ15年間で男女ともに人気が高まっている部活は
- バドミントン
- 卓球
- 陸上
男子はこれに加えて
- サッカー
- バレーボール
○なぜこれらの部活動は人気が高まってきているのか?
考えられる理由は以下の5つ。
- ブームに後押しされた底辺人口の広がり
- 世界大会での日本人選手の活躍
- 漫画・アニメ・映画・ドラマ等のコンテンツ
- 高校から始める部活としておすすめ
- アメリカの覇権の終焉
これに加えて、男子は「泥臭く汗臭くつらい」より「スマート」を求める傾向。
また女子は「筋肉がつきすぎる」ことへの抵抗があるのかも。
以上、部活人気のランキングと推移をデータで検証でした。
今回いちばん意外だったのは、弓道部の人数がそれほど増えていないこと。
割合としてはたしかに増加してるけど、もっと人気かと思ってた。
陸上とおなじく、高校から始める部活としておすすめできるし、何より女子で弓道に憧れる中学生がけっこういたので。
あれかな、そもそも弓道部のある高校が少なかったり、道着や弓矢をそろえるのがけっこう大変だったり、あるいは見た目よりかなりきつい部活なのかも。
弓道部だったよーって人いたら教えてください。
コメント
男子の部活人数の推移のグラフの出典を教えていただけませんか?
記事内にあるとおり、
・文部科学省 学校基本調査
・全国高等学校体育連盟 加盟登録状況
・日本高等学校野球連盟 部員数統計
・日本サッカー連盟(JFA) サッカー選手登録数
の4つを元に作成しました。
サッカーのクラブユースって、そんなにいましたっけ?
調べなおしたところ「174,177人」という数字は高校の部活も含めた人数でした。
該当箇所を修正しました。
ご指摘、ありがとうございます。
すみません、助かりました。